人口の将来推計2005 > 人口推計に関するQ&A
人口推計に関するQ&A
【索引】
- 合計特殊出生率(TFR)
- コーホート(コホート)
- (将来)人口推計
- 人口置き換え水準(人口置換水準)
- 限界自治体
【Q&A】
- 合計特殊出生率(TFR)
女性の年齢別出生率を15〜49歳にわたって合計した数値で、代表的な出生力の指標です。その値は、女性がその年齢別出生率にしたがって子どもを生んだ場合、生涯に生む平均の子ども数に相当します。
通常は、ある年次(たとえば2004年)に観察された年齢別出生率を元にして計算します(2004年は1.29でした)。そうするとその年の女性の子どもの生み方が一つの数値として表せて便利です。しかも、その数値(たとえば1.29)からは、その年の子どもの生み方が、生涯に平均何人の子どもを生むペースなのかがわかってイメージがわきやすいと思います。
ただし、たった1年次のデータからは本当の「生涯」の子ども数はわかりません。その年の15〜49歳の人たちの経験を仮の生涯に見立てているだけです。そしてこの2つは、場合によっては大きく食い違うことがあります。たとえば、もし2004年に子どもを生むはずの人たちが、全員その出生を2005年に延期したとしたら? 15〜49歳の年齢別出生率はすべて 0 となり、合計特殊出生率も 0 に低下したはずです。つまり、仮の生涯の子ども数は 0! しかし実際の生涯の子ども数はこの例ではまったく低下しません(全員、翌年に生んでいるので)。
つまり、子どもを生む年齢に変化が生ずると、仮の生涯と実際の生涯の数値に違いが生じます。とりわけ最近の日本のように、女性の出産年齢が世代ごと遅くなっている場合には、仮の生涯の子ども数すなわち合計特出生率は、実際の生涯の子ども数より少ない値となることが知られています。
それではなぜ、実際の生涯の子ども数を指標としないのでしょうか。それは、今子どもを生んでいる人たちの実際の生涯の子ども数は、最短でも15〜20年待たなければわからないからです。昨年の出生指標が20年後に発表されても、統計としてあまり役に立ちません。合計特殊出生率がその年の子どもの生み方を示しているのは確かですから、上手に使えば年次比較や地域比較にとても役立ちます。ただし、「生涯に生む平均子ども数」という解釈をうのみにすると、実情に対する誤解の元となります。(RK)
- コーホート(コホート)
通常は同じ年に生まれたグループ(出生コーホート)のことを指します。ですから「世代」と言い換えてもよいでしょう。ただし、本来のコーホートの意味は、同一の期間に出生や結婚などのライフコース上の出来事を経験した人たちのグループのことです。たとえば、結婚コーホートは同じ年に結婚した人たちのことです。(RK)
- (将来)人口推計
出生率や死亡率などに対する仮定のもとで、人口のサイズや年齢構成などの推移を数値的に計算して示すことです。仮定として将来の予測値を用いれば人口予測になりますし、特殊な仮定を用いれば人口シミュレーションと呼ばれます(もし〜だったら、人口は〜になる)。
また、仮定として現在の値を固定して用いたり、現在の趨勢を延長して用いれば、その時の出生や死亡の状況を、将来の人口の姿(たとえば人口高齢化の程度など)に翻訳して見ることができます。つまり、現在の出生・死亡レベルの持つ「意味」を理解することに役立ちます。(RK)
- 人口置き換え水準(人口置換水準)
人口を、世代ごとに同じサイズになるよう置き換えるために必要な出生率のレベルのことです。合計特殊出生率について2003年では2.07でした。しかし、過去を見ると戦前の1930年では3.09、戦後1950年では2.43でした。
女性について考えてみましょう。1世代後(子どもの世代)の人口を同じにするためには、親世代の女性は1人当たり平均2人の子どもを生む必要があります。しかし、それだけではちょっと足りません。まず、死亡によって失われる分を補うよう多めに生む必要があります。また、生まれてくる赤ちゃんは男の子が女の子より5〜6%多いですから、次世代に1人の女性を残すためには約2.05人(女の子1人+男の子約1.05人)生む必要があります。これらの死亡状況と出生性比を考慮した必要な子ども数が合計特殊出生率の人口置き換え水準(2003年2.07)になります。
2003年の合計特殊出生率は実際には1.29でしたから、この子どもの生み方では次世代の人口は62%(=100%×1.29/2.07)に縮小するということになります。ただし、これも2003年1年間の状況を「生涯」と見立てての話ですから(上記「合計特殊出生率」の説明参照)、この年の子どもの生み方(と死亡の起こり方)が何十年も続いた場合にそのようになる(世代ごとに62%に縮小する)と理解して下さい。(RK)
出展:http://www.ipss.go.jp/
- 限界自治体
長野大学教授(高知大学名誉教授)である大野晃氏が、高知大学人文学部教授時代の1991年(平成3年)に最初に提唱した概念です。
大野氏は、65歳以上の高齢者が自治体総人口の過半数を占める状態を「限界自治体」と名付け、この定義を集落単位に細分化したものを「限界集落」といいます。
限界集落(げんかいしゅうらく)とは、過疎化などで人口の50%が65歳以上の高齢者になり、冠婚葬祭など社会的共同生活の維持が困難になった集落のことを指し、 中山間地や離島を中心に、過疎化・高齢化の進行で急速に増えて来ており、このような状態となった集落では、集落の自治、生活道路の管理、冠婚葬祭など、共同体としての機能が急速に衰えてしまい、やがて消滅に向かうとされています。
「限界集落」には、もはや就学児童より下の世代が存在せず、独居老人やその予備軍のみが残っている集落が多く、病身者も少なくないということです。
限界集落に次ぐ状態を「準限界集落」と表現し、55歳以上の人口比率が50%を超えている場合とされる。また、限界集落を超えた集落は「超限界集落」から、やがて「消滅集落」へと向かうことになります。
出展:ウィキペディア「限界集落」
- 「存続集落」55歳未満人口比50%以上:跡継ぎが確保されており、共同体の機能を次世代に受け継いで行ける状態
- 「準限界集落」55歳以上人口比50%以上:現在は共同体の機能を維持しているが、跡継ぎの確保が難しくなっており、限界集落の予備軍となっている状態
- 「限界集落」65歳以上人口比50%以上:高齢化が進み、共同体の機能維持が限界に達している状態
- 「消滅集落」人口0:かつて住民が存在したが、完全に無住の地となり、文字通り集落が消滅した状態