≪メッセージの要旨≫  2016年  9月 18日   聖霊降臨後第18主日礼拝


       聖書 : ルカによる福音書      16章  1〜13節


       説教 : 『 永遠の命をえるために 』    高塚 郁男 牧師



 1.語句説明と今日の「たとえ」の説明:

  1)今日のテキストに内容には関係ありませんが、
    物を計る単位で聞きなれないものがあるのでまず説明しておきます。 

    @ バトス=液体の容量で、約23リットル。
    A コロス=固体の容量で、約230リットル。

  2)16節に主人の財産を任されていた管理人が、主人の財産を無駄に遣っていると告げ口され、
    管理を辞めさせられるのではないかと思い防衛策を講じます。
    主人から何人かの人が借金をしていたので、その人たちにどのくらい借金があるか聞き、それを少なく書き換えるように勧めます。
    一人は「油百バトス」と答えたので、管理人は証文を半分の50バトスにしなさい、と言います。
    もう一人に聞くと、「小麦百コロス」ですと答えたので「証文を80コロス」と書き直しなさい、と言います。
    そうすれば、主人から管理の仕事を解雇されても、2人のどちらかが自分を雇ってくれるだろうと思ったからです。
    彼は自分の保全のために二重の嘘をついたことになります。

  3)ところが、不思議にも、主人は不正な管理人のやり方を「抜け目のないやり方」と言ってほめます(16章8節)。


2.説教:

  1)今日のテキストには「不正な管理人」と小見出しがついています。
    しかも、この「不正な管理人」が「ほめられて」います。
    不思議です。
    「不正」なことをした人が褒められるとは聖書的ではありません。
    どうして聖書は「不正な」行為をほめるのでしょうか?

  2)その直後に、
    「この世の子ら=神を信じていない人たち=は自分の仲間に対して、光の子ら=神を信じる人たち=よりも賢くふるまっている」
    と「不正な」「抜け目のないやり方」をした管理人を二重に正当化しています。
    何故か?
    その理由が続きます。
    「そこで、わたしは言っておくが、不正にまみれた富で友達を作りなさい。
      そうしておけば、金がなくなったとき、あなた方は永遠の住まいに迎え入れてもらえる。
      ごく小さな事に忠実な者は、大きな事にも忠実である。
      ごく小さなことに不忠実な者は、大きな事にも不忠実である」(16章9節・10節) と書かれています。

  3)これは彼が行った不正な行為をほめたのではなく、
    人は窮地にさらされたとき、また人生の危機にさらされた時には、機敏に対応し、
    窮地を脱する思い切った知恵を発揮したことをほめているのでしょう。

  4)聖書にはその時代の習慣・習わし・やり方等を知らないと、聖書の内容をはっきり理解出来ない話があります。
    今日の「たとえ」も
    当時の借金に対する証文を書き換えるやり方が賢いやり方という風潮があったことを知らないと、
    この不正な管理人はどうして褒められるかわかりません。
    2千年前に書かれた「たとえ」を今読むとき、字だけで理解してしまうとおかしなことになりかねません。
    今日の箇所もその類の「たとえ」に入るでしょう。
    今日のたとえでは「不正な、抜け目のないやり方」が奨励されていますが、当時はそれが当たり前の行為であり賞賛されたことでした。
    今私たちがこの「たとえ」を読むとき、
    聖書がどうして不正な管理人が褒められるのは、これはおかしいじゃないか、ではなく、
    「たとえ」の結論部分、後半の部分に注目しなければなりません。

  5)後半部分は、神と富の両方を大事だと思ってはならない。
    難しい世の中で生きるには、神を信じて生きることが大切であることを知らなければなりません。
    だから、
    「どんな召使も二人の主人に仕えることできない。
      一方を憎んで他方を愛するか、一方を親しんで他方を軽んじるか、どちらかである。
      あなたがたは神と富とに仕えることはできない」(16章13節)
    と言う結論の部分をしっかり理解しましょう。

  6)内村鑑三は 『後世への最大遺物』 の中で、
    一生懸命働き富を得なさい。
    問題はそれをどのように使うかである。
    自分のために使うのではなく、社会の為に使いなさい
    という趣旨のことを青年たちに力説しました。

  7)社会の為に使うとは、「友達を作りなさい」(16章9節) とあるように
    友達の為に、社会の為に私たちは生きることを聖書から学ぶ必要があります。
    今日の第2日課に
    「願いと祈りととりなしと感謝をすべての人々にささげなさい」(テモテへの手紙一2章1節) とありますが、
    「この世の子ら=神を信じない人」のために祈ることです。
    パウロは全ての人の為に願い、祈り、とりなし、感謝をささげなさいと勧めますが、
    本当に自分の周りにいる人のみならず、
    すべての人の為に祈り、感謝をささげることの重要さは今日の私たちに強く教えられている言葉です。

  8)この言葉を実践した人を紹介します。
    前回は モロカイ島のダミヤン神父 の話をしました。
    今日は日本のハンセン病に捧げた 林 文雄 の話をします。

過去の音声メッセージに戻る