イザヤ55:1-5 詩編145:8-9,14-21 ロマ9:1-5 マタイ福音書14:13-21
教団讃美歌298、514、291、217
説教題「汝ら之に食物を与えよ」
イエスが弟子たちに命じて、空腹を抱えた群衆に食事を与えた奇蹟の出来事なのですが、なぜ五千
人であったり、15章では、四千人という数が挙げられているのでしょうか。その数が500人でも、いや
50人であっても人里離れた原野でのイエスがなさった空腹を抱えた群衆への思いは十分に示された
のではないでしょうか。イエスの超能力性を示すだけであるならば、一人の生まれながらの盲人の眼を
見えるようになさった奇跡によって、充分に証明されています。
これには12弟子と初期教団にとっては、イエスが荒野における「石ころをパンに変えて、民心を自分
に引き付ける」という誘惑を敢然と退けた立場を知りながらでも、5千人の供食の奇跡には、重要なメ
ッセージ性があるのだと受け止めて、イエスの意図と初期教会の自らの立ち位置を示す意図が意識
的であれ無意識的にしろ、あったのではないでしょうか。
我々は、共観福音書とヨハネ福音書に六ケ所にも記述されているこの供食の出来事から、今を生き
る者として、どんなメッセージ性を受け取れるでしょうか。
今日の聖書カ所の外にも記述されている福音書を見てみましょう。
①
ヨハネ6:1-5 ティベリアス湖の向こう岸に渡られた。
大勢の群衆が後を追った。イエスが病人たちになさったしるしを見たからである。
イエスは山に登り、弟子たちと一緒にそこにお座りになった。
イエスは目を上げ、大勢の群衆が御自分の方へ来るのを見て、フィリポに、「この人たちに食べさせるには、
どこでパンを買えばよいだろうか」と言われた。
②
マタ15:32 イエスは弟子たちを呼び寄せて言われた。「群衆がかわいそうだ。もう三日もわたしと一緒にいるのに、
食べ物がない。空腹のままで解散させたくはない。途中で疲れきってしまうかもしれない。」
③
マル 8:1-3 (6:30-44)そのころ、また群衆が大勢いて、何も食べる物がなかったので、イエスは弟子たちを呼
び寄せて言われた。 「群衆がかわいそうだ。もう三日もわたしと一緒にいるのに、食べ物がない。
空腹のまま家に帰らせると、途中で疲れきってしまうだろう。中には遠くから来ている者もいる。」
④
ルカ9:12-14 日が傾きかけたので、十二人はそばに来てイエスに言った。「群衆を解散させてください。そう
すれば、周りの村や里へ行って宿をとり、食べ物を見つけるでしょう。わたしたちはこんな人里離れた所にいるの
です。」
しかし、イエスは言われた。「あなたがたが彼らに食べ物を与えなさい。」彼らは言った。「わたしたちにはパン五つ
と魚二匹しかありません、このすべての人々のために、わたしたちが食べ物を買いに行かないかぎり。」 というの
は、男が五千人ほどいたからである。
イエスの神の国宣教活動には、生きる希望を抱いて押し寄せてきた大勢の群衆が居たのです。
押し寄せた群衆は5千人+女・子供だったのですが。彼らは日々の食べ物にも事欠く生活困窮階層
の人々であったのではないでしょうか。
この状況の中で、弟子たちは、常識的に考えて、群衆を解散させて、各自で食べ物を買いに行かせる
ようにと進言しました。(自己責任的な対応しかできなかったでしょうが)ところがイエスは終始一貫して言ったので
した。「行かせることはない。あなたがたが彼らに食べる物を与えなさい。」と。
このイエスの言葉は三つの共観福音書においては、5千人の供食の奇跡の記述では、全く同じ言葉が
発せられているのです。原資料が同じだとしても、変えて表現している箇所があるにもかかわらず、こ
の五千人の供食の奇跡においては、全く同じ言葉を繰り返し用いていることは、イエスから受けた重要
なメッセージとして三福音記者と初代教会が受け止めていたからであると考えてよいでしょう。
ここでAIに当時のガリラヤ地方の人口がどれくらいであるかと、尋ねたのでしたが、記録がないからと
いう理由で、1万人から20万人だと幅の広い答えでした。私は、それで中間をとって10万人前後として
考えました。すると5千人という数字はガリラヤの全人口の二十分の1にあたります。そこから、5千人
は、いつも家族は病人を抱えて、飢えている生活貧困層であると推察されます。イエスは日常的に病
を抱えて飢えている彼らの側に立って、社会の仕組みと生活を見ていたと言えましょう。
ここで、余談ですが、最近ロシアは穀物輸出条項の協定から脱退しました。そのために、アフリカ諸国、アラブ部諸国、さらに世
界各国にその影響が及び、飢える人々が増えて行くでしょう。ロシアが穀物を兵器に加えて戦争の戦略にしたからです。
2021年の統計では、世界の人口はおおよそ77億人ですが、そのうち8億人以上が飢えている
とされています。日本の児童生徒のうち7人に一人が満足には日々の食事がとれない子供だと
言われて、久しいのです。長引いたコロナ禍の中で、両親が失業に追い込まれた子供たちは、
夏休みで、給食が無くなってお腹を空かせているとのニュース報道が目立ちます。
こうした子供と家庭の人数は、日本の総人口1億人から換算すれば幾人になるのでしょうか。
AIに計算させましたところ、「仮定した日本の人口1億2600万人の場合、貧困生活者の子どもの人数は約1800万人となります。」
この数字の信憑性は検証できませんが、今の日本には思想的な左右の違いではなく、上下格差の階級社会が自由資本主義構造の
中で大量の貧困層を蓄積したのは事実でありましょう。さらにこのままではその格差は拡大する途上にあると言えます。使徒言行録
2:44-45の記述は、長い教会史から見れば、継続した成功事例だとは思えないが、その精神は教会の中で脈々と受け継がれてきたの
です。
今の時代においても、「あなたがたで彼らに食べ物を与えなさい。」との、イエスの言葉が聞こ
えて参ります。むさしの教会や東京教会、廣島教会等々が週一回とか、月二回とかの活動をし
ております。子ども食堂はささやかな業の美談ではありますが、全国的な視野から言うならば、
武器を購入する何兆円もの財政支出を変更して、子供たちを飢えから救い、学びたい子供には
無料で大学まで勉学が続けられるための財政を予算化することの方が、将来の日本の国を豊
かにすることに繋がるのではないでしょうか。
世界の中で、8億人以上が飢えている主な原因は、
①
働きたくても働く先が確保されていないことから来る経済的格差がります。
②
戦争と紛争があります。紛争地帯では農業や物流がさまたげられて、食糧供給が難
しくなります。
③
自然災害や気候変動により、農作物の収穫が減少し、食料供給に影響を及ぼしてお
ります。
④
技術的な問題や農地の乏しさにより、十分な食料を生産できない地域があります。
⑤
経済的事情から上の学校に進学が出来なくて、就職試験の入り口で不平等や人権侵
害などが飢餓に拍車をかけております。
本来、創造主は、人口に見合う食物を、その時代に合わせて、地球上に確保できるように備えられ
ておられる。と聖書に立つ者としては信じております。今日でも然りと言えましょう。ただ人間の様々な
欲望拡大のゆえに大きくゆがめられ、偏っている事実も明確です。
最近のニュースでは、ロシアが穀物輸出の条約を一方的に破棄して、穀物を戦況を有利に進める兵
器として使用していると非難の声が上がっております。 さらに、国別の富の偏りによって、穀物は高く
買ってくれる国や地域へと流れて行っております。
こうした世界状況から見れば、経済的、地理的な条件によって、穀物が得られにくい地域状況に生
活せざるを得ない人々の自己責任的に処理されしまう問題ではないのです。
これから起こる、大きな気候変動を前にして、お金があっても、穀物を輸出しないのであれば、即ち
人類はお互いに助け合ってゆかないならば、滅亡の危機からの脱出はおぼつかないでしょう。
イエスが地上を歩まれて、宣教なさった時代と地域もまさにそうした状況に置かれていたのでした。
だからイエスは仰ったのです「あなたがたが、彼らに食べる物を与えなさい。」と。
ここで、男性5千人+女子供という数字は、単にイエスの話を聞くために集まった人数のことだけを採
り上げたのではなくて、日々病んで飢えている民衆が日常的に、生活貧困階層として存在したことの間
接的な表現であると読めるのです。
生き残るための最大の秘密について (紹介記事からの援用です)
ドイツで最も有名なパン屋の一つを経営するユダヤ人は言っていました。「私が今日生きている理由を知っていますか?
私はまだ10代の少年だった頃、ドイツのナチスは非情にもユダヤ人を虐殺しました。ナチスによって私たちは貨車でアウシ
ュビッツに連れて行かれました。昨夜、看護所にいるときは極寒でした。私たちは数日間、食べ物もなく、ベッドもなく、つまり
どのような方法で暖を取ることもできない状態で貨車の中にいました。どこも雪が降っていました。
冷たい風が私たちの頬を毎秒冷たくしました。あの寒くて恐ろしい夜には何百人もの人たちがいました。食べ物も水もなく、
隠れる場所もありませんでした。血液は静脈中で凍ってしまいました。私の隣には私の町で非常に愛されていた高齢のユダ
ヤ人がいました。彼は震えてとてもひどく見えました。私は彼を温めるために手で彼を包み込みました。私は彼を温かくする
ために力強く抱きしめました。手や足、顔、首をこすりました。彼に生き残るように懇願しました。私は元気づけました。それが
私がその男性を一晩中暖かく保ち続けた方法でした。私自身も疲れて凍えていましたが、指を組み合わせながらも彼の体を
マッサージし続けました。
数時間が経ちました。ついに朝がやってきて、太陽が輝き始めました。周りを見回して他の人を見ると、私の恐怖に、凍りつ
いた死体しか見えませんでした。聞こえるのは死の静寂だけでした。寒い夜がみんなを殺してしまったのです。彼らは寒さで
死にました。ただ2人だけが生き残りました:その老人と私です。老人は私が彼を凍らせなかったから生き残り、私は彼を暖
めたから生き残りました。
この世で生き残る秘訣をお話ししましょう。他人の心を温めるとき、自分自身も温まるのです。他人を支え、力強く励ますと
、あなたも支えられ、力強さと励ましを受け取るのです。」
祈りましょう。主よ、私どもを憐れんでください。・・・・・・・・・・・・・・・・・・。 アーメン