2024年  6月 16日  聖霊降臨後第4主日(緑)

      聖書 :  エゼキエル書         17章 22節~24節
            詩篇               92編 2節~16節
            コリントの信徒への手紙Ⅱ  5章 6節~17節
            マルコによる福音書      4章 26節~17節

      説教 : 『 異次元の成長を見よ 』
                       木下海龍牧師

      教団讃美歌 :  23、 500、 504、 370

 東教区が月一回開催しているビジョンセンターでは、今年は「私の一冊を紹介する」と題して進めら
れております。立山忠浩牧師二回、長岡立一郎牧師二回、木下海龍牧師一回 に続いて、6月17日
には、鷲見達也牧師の担当で「問われる宗教とカルト」NHK出版新書を取り上げます。

 私も読んでいるところであります。その書籍で取り上げられている内容自体は、おおざっぱではある
が、自分自身も知っている事柄であるはずでした。もともとは、NHKで徹底討論として放送された内容
を文書に起こして新書版にしたものです。読みやすい短い文章になっていて、改めて自分の中で纏ま
って理解して受容出来ました。本日はその一部分を紹介する形式で進めたいと思っております。

 討論・発題者の一人である小原克彦同志社大学教授の発言に「ヨーロッパは、かってキリスト教世界
の中心を担い、何百人もが礼拝できるような立派な教会がたくさんあります。ところが、礼拝のある日
曜にその立派な教会に行って見ると、前列の方にご高齢の方が20~30人だけ座っているというよう
なことも珍しくありません。教会が求心力を失い、その社会的影響力が小さくなっていくことを、学術的
には「世俗化」と言います。ヨーロッパではキリスト教の世俗化が進んで、その力が落ちてきていると言
うことができます。ただ、ヨーロッパに限って言えば停滞気味なのですが、他の地域を見ると実はそうで
もないことがわかります。私はこれを、宗教の「成長点」が移動していっているのだと思っています。
」と紹介しながら、世界人口の三分の一強をしめるキリスト教徒のうちの半数以上の人が西洋には住
んでいません。人口の面だけで言うと、キリスト教はもはや西洋の宗教ではないのです。宗教の中心
点、成長点が移動してきている
からです。」と紹介しながら、成長している地域として、アジア、アフリ
カ、ラテンアメリカを挙げておりました。
一方では衰えているように見えても、視点を変えると、他方
ではまだまだのびている側面があるのですね。」

「では、そのような地域では、なぜ成長しているのか。キリスト教の場合には、地域社会のニーズに応
えて地域に根を張っていくことで成長しています。」P94-96

 そして中国の宗教団体は「宗教事務条例」によってガチガチに管理されています。しかしその中に
あってキリスト教の伸長率にはめざましいものがあります。おそらくアジアの中でキリスト教人口は
、韓国を抜いて中国が一番多くなるのではないかという予想もあるくらいです。」p98

 本日のエゼキエル書を読んでいて、くしくも、小原先生、櫻井義秀(北海道大学大学院教授)の発言
と深いところでリンクしているのではないか!! と思いました。

エゼキエル17:24 そのとき、野のすべての木々は、主であるわたしが、高い木を低くし、低い木
を高くし、また生き生きとした木を枯らし、枯れた木を茂らせることを知るようになる。」主である
わたしがこれを語り、実行する。」

キリスト教の宣教活動は遣わされた人間によって始められるのだけれども、前回私は、長い歴史的な
スパーンのなかで起る時代の潮目が変わる時があると言いましたが、エゼキエル書の隠喩は紀元前
592年に預言者として使命を委託されたエゼキエルが、新バビロニアのネブカドネザルによって、ヨヤ
キン王たちとともにバビロニアに捕囚として連れて行かれて5年目のことでした。

 宗教集団の盛衰は、その国の政治と市民のニーズとか、宣教師・牧師の資質によるところが少なくな
いのですが、もっと根本のところでは、歴史と時代の背後で、「主であるわたしがこれを語り、実行す
る。」
とあるように、主のご意志と実行する力が大きく作用するのだ、と、信じてもいいのではないか。

以前に紹介したR.スターク著「キリスト教とローマ帝国」によれば、キリスト教会が当面した最大の危機
は、起原60年代であったと記述しています。すなわち 時代の潮目は「人の子が大いなる力と栄光
を帯びて雲に乗ってくるのを」マルコ13:26 
見ることなく第一世代が没し始めた紀元60年代にその潮
目は起こったのでした。

「60年代までに一世代全員が消滅してしまった」ATロビンソン 

この時期、再臨問題は60年代が「もっとも先鋭的だったと考える」。このことは、主の再臨が間地かに
迫っているとした確信に揺らぎが生ずる危機がありました。主イエスに従って神の国運動を起こして、
勧誘に努力した30年から40年の結果を振り返り、わずか2~3千人しか入会者がいなかったとわか
ると、希望と帰依を再燃させる何かが起こらない限り、彼らは意気消沈しがちなのだ。もしも彼らが疑
い、絶望したなら、それをどう解決したのだろうか。  取るに足らない成長ペースを脱する域まで進み
続けられた精神力を彼らはどのように得たのだろう。P233234

 そのためには60年代の10年間に起きた三件の尋常でない事件に目に泊めるのがきわめて大切だ
と思う。

 まず、62年頃、イエスの兄弟で、エルサレム教会の指導者だったヤコブが、彼の弟子とともに大祭
司アンナスに捕らえられた。アンナスはヤコブらを最高法院に呼び出し、ユダヤの律法を破った罪をき
せ、野外で石打にしてころした。P234

次には、使徒パウロが、ローマで64年~65年にかけて殺された。

三つめは、65年の終わり頃から翌年にかけて、ネロ帝がキリスト教徒の迫害を行ったとき、闘技場で
野犬の餌食としてずたずたにころされたものや、皇帝の庭で十字架につけられたものがいた。その中
には「日が落ちてから夜の明かりをとるために」火あぶりにされたものもいた。

ローマが最初に公式なキリスト教徒迫害をした際に、命を落とした人のなかには使徒ペテロも含まれて
いた。

 その当時最も崇拝された高潔な三人が、再臨の遅れにも、信徒の数の少なさにもひるまず、信仰の
ために命を捨てた。しかもパウロにせよペテロにせよ、運命を避けることがーーーパウロが棄教したら
、ペテロが逃げたらーーーできたはずなのにそうしなかった。「ペテロ行伝」によると・・・引用紹介

ペテロが喜んで救い主に従って十字架についたことは、終末の遅延が事実でも、そこまでの犠牲を求
められないふつうのキリスト教徒の信仰をしっかりと教化するのに役立ったはずだ。著者の考えでは、
「予言がはずれ、信徒数が伸びないという危機を和らげたのは、イエスと同じ苦難をこうむり和
解の真正さを示した60年代の殉教者である。拷問と死をその身に負ってまで信仰の価値を示
した人々ほど信じられる証人はいないと断言してよいだろう。」
P236

「キリスト教とローマ帝国」の著者は第十章に於いて、曰く

「キリスト教の中心教義は、人を惹きつけ、自由にし、効果的な社会関係と組織を生み出し、また支え
る。」

「キリスト教が史上最も拡大し成功した宗教の一つとなったのは、この宗教がもつ特定の教義によると
わたしが信じる。キリスト教が興隆したのは、そうした教義を具体化し、組織的行動と個人の態度を導
いた方法にあったと考える。p265

日本福音ルーテル富士教会は宣教70年代に入っております。初代宣教師オルソン先生を知る私は9
0歳になりました。わたしが二年間ヘルパーとして共に働いたH.アーズランド先生は今年11月11日に
は満100歳を迎えます。奥様は10年ほど前に亡くなられました。

われわれは今、一世代全員が亡くなっておられる時の流れの中にあります。

 そうし潮目の中で、私たちは、その時その時、真面目に、それが自分の使命であり、自分の役割だと
して担ってゆくほかはないのだと思うのです。

つい、自己本位的な考えや行動をする傾向のあることを懺悔しつつ、己の役割を放棄せずに、一日一
日を生きなおして、歩み続けて行く、限られた寿命と僅かな収入の中で生活せざるを得ない私共にとっ
ては、人間の側として、それ以外にはないのではないかと受け止めております。

ただ一つのお願いがございます。一日一回、10秒間で構いません。富士教会の事を祈りに覚えましょ
う。教会に連なる具体的なお名前とお顔を思い浮かべましょう。その時に思いつく一人の方でよろしい
です。思い浮かぶままに、短く祈りましょう!!

 そうした中で、時には、思いかけず、なぜそうなったのかは分からないままに、神様を信じたい人、洗
礼を受けたいと願い出る人が眼前に現れるのです。見たところあやふやさを感じるのだけれど、本人
が信仰告白をし、熱望する姿から、背後に働く神(グレイト・サムシング)の導きと憐れみが、この未熟
で未完の人を招き入れておられる神様の慈しみに、心が燃えるのです。そして私自身も共鳴して、共
感させられ、その人を教会へと招き入れるのです。

われわれの真面目さと行動とは別に、

「主であるわたしがこれを語り、実行する。」

三位の神様 (グレイト・サムシング)の 見えない背後で働かれる神様の存在を信じ信頼して、

従って参りましょう。 気がつけば兄弟姉妹が一緒に!! 主の礼拝に立つのです。

祈りましょう。

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