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川棚温泉物語  
(2)神の与えてくれた快楽

「お前は按摩の五郎じゃないか、俺はすぐ分ったよ」

 大将が初めて私にそう言った。
 股の中に入ってじっと大将の顔を見つめる私に、彼は俺はお前のことがちゃんと分っていたのに、お前は俺のことが分らなかったのかとなじるような目である。
 大将が私のことを覚えていてくれたことが嬉しくてならなかった。私は寒いのに頬を染めて大将の顔を見つめ、それから股間のものを見た。

 私の目の前に、あれ程見たかった大将のものがぶらりと垂れさがっている。既に小便を終り大将の指から解放されたものが、僅かに体を動かしただけで文字通りぶらりと揺れる。よく発達した亀頭の下側が二つに割れ、その周囲が小便の為濡れている。私はそれをすぐ口に含もうと思ったが、あまりに勿体なくて口がこわばってしまう。それに大将のものはそれがあまりに大きすぎて、簡単にくわえられる代物ではないのだ。

 私は大将のものが、私の顔全体にぺたりとあたるように顔を近付けた。私の額に陰茎の付け根が、鼻の下に亀頭が貼りつき、口を一杯に突き出すと顎に玉があたった。私は目を閉じて宝物でも戴くように両手の上に双玉を乗せて唇をつけた。それは大将に対する初めてのキスだった。それを大将は拒否しなかった。むしろ私の口付けを催促するように尚更腰をつき出した。

 私の口は大将の双玉でぴたりとふさがれ、次の瞬間、私は口を一杯にあけてそれを含んだ。そして舌をひらたくして玉の周囲にぺたりと貼りつけ、心ゆく迄その感触を味わった。それは唾液や精液や汗等にまぶされた男臭い味である。表面の皮膚が羽二重のようにすべすべしており、袋の中で玉が重そうに垂れている。それは如何にも六十二年の年輪を刻んでふてぶてしいたたずまいだった。

 私の顔に貼りついた大将のものが、最初は小さなノックをし、それが次第にうねり乍ら私の額や鼻の上を這う感触を伝えた。そして亀頭の先端が私の口迄さがって来たのと同時に、まるで呼吸でもするようにぐっぐっと勃ち上り、私の顔から離れた。その中心に固い芯を入れた陰茎の付け根がこつこつと私の額をノックし、それは一層固く盛りあがり表面の皺や凹みをなめらかにし乍ら、私の頭を越えて完全な態勢を整えたのである。

 私の右手にすくった双玉の付け根の瘤のような突起が、野球ボールでも入っているように固く盛りあがっている。この瘤は私を抱いた男の中でも特別精力の強い男だけが持っているものである。
 例えば岡山の先生や博多の人形師はそれとはっきり分る瘤を持っていたが、紅葉荘の卓三やユーサクは射精する寸前、やっとそれと分る程度のものを持っていたが、普通それはなかった。その中でも岡山の先生は勃ち上る前にそれがかちかちに固くなったが、大将のものに較べると半分よりもっと小さかった。

 私は大将の瘤に右手の平をかぶせて、中指と人差指で強く押さえた。するとそれは直ちに陰茎から亀頭に連動されて石のように固くなった。
 あれ程、見たい、触りたい、入れて貰いたいと想い焦れていた大将のものが完全に勃起して、私のすぐ目の前にあった。それは新しい獲物を求めて慄えていた。

 長大な陰茎が上向きに反りをうち、全身の男の血液をその中に一杯に詰めこみ、更に盛り上った冠状突起に続く亀頭が、なめらかなカーブで盛りあがり、その裏側で収斂して鈴口の割目を型成し、亀頭部が太鼓腹の方に反っている。大将は両手を私の頭に乗せて仁王立ちし、腰をぐっと突き出した。大将と巨根が私の口の前で反り返ったまま通り抜けて、太鼓腹にぴたりと貼りついている。

 私は夢中で太鼓腹に貼りついた亀頭を剥がして、すっぽりと口にくわえた。
 瞬間、大きいなと思った。過去の男達のものよりずばぬけて大きく、口の中一杯になり舌が動かせなかった。

「さあ、五郎、部屋に帰るぞ。ここでは風邪をひく。これから部屋に帰って五郎のバックを掘ってやる」

 大将が意外に優しい声でそう云った。
 私は嬉しくて大将の雁のくびれに上下の唇を喰いこませたまま、大将の体にぶらさがるような恰好でうしろ向きに、便所から大将の部屋迄移動したのである。

 電気を煌々とつけた大将の部屋の片隅に長々と延びた人影があった。その人が本田であることがすぐ分った。然し私は、大将のものを決して口から離さなかった。

 大将が布団に大の字に寝転がる動作に合わせて、私も上体を低くして股の中に入り、大将のものを一層深くくわえなおして、顔を上下にゆっくりと動かした。陰茎や亀頭の周囲に舌を巻きつけて、ずるりずるりと動かし乍ら、やはり過去のどんな男のものよりも巨大であると改めて思った。私は少しでも早くこの巨根に馴染まねばならないのだ。

「そこに延びている本田はたった二年で俺のものに飽いたんだ。最初の頃は一日中俺の奴隷として仕えていたが、先月頃から生意気な態度をとることが多くなったので、今日罰として喉と尻を潰してやった。これで二、三ヶ月は使いものにならない筈だ」

 大将の声が別人のように荒れている。
 大将は両足を一杯にひろげ、私の頭を両手で押さえて腰を強引にくいくいと突きあげた。大将の亀頭が、私の喉を抉るように強く突き、死ぬ程の痛みが走った。
 最初の交わりで傷付いたら、その後大将のものを受けられなくなるという心配が頭を持ちあげたが、私は死んでもいいと思った。

 あれ程惚れていた大将故に、どんな痛みにも耐えようと思う。きっと本田は大将の機嫌をそこねて、情容赦なく喉の奥を突き破られ、油もつけずに尻の穴を破られたに違いないと思う。私は、本田に負けられないと思った。

「五郎、バックだ。尻を出せ」

 大将の非情な声がきこえ、私の心がぎりぎり痛んだ。
 あの巨根が無事入るだろうかと強い恐怖感があったが、そんなマゾ的な心理は一足跳びに大いなる快感に変化する。

 大将は私にくわえられたものを性急に抜きとると、素早く私の両足を肩にかけ私のバックに亀頭の先を押しあてて二、三回くるくると廻し、更に五、六回前後に押す動作をしてぐっと腰に体重をかけたのである。

 ああ痛いと思った。それは正に激痛だった。然し私はあらかじめ自分の穴にたっぷりと潤滑油を塗りこんでいた故か、異常に巨大な大将の亀頭部がきしみ乍ら入り込んで来た時、死んだつもりで呼吸を止め全身のカを全部抜いたのである。
 それにしても一回でよくも亀頭が入ったものだと思った。私は一言も痛いとは云わなかったが、私の括約筋が痛さの為ぶるぶるふるえ、目から涙が出た。

 私は死ぬ程痛かったが、痛さの後にはそれに倍する快感が襲う事を信じてひたすら耐えたのである。
 亀頭さえ入ればあとはずるりずるりとあっという間に根元迄挿入され、大将の体が私を抱きしめて暫く静止した。痛みがどんどん消え、かつて味わったことのない快感が私の神経中枢を刺激し始めた。

 それに気付くと大将の体が私の中で動いた。けた外れに大きなものが根元まで埋め込まれ、私の直腸がそれで掻き廻され、あまりに気持がよくて声が出る。大将は、それが当然だという顔で私の表情を見ながらゆっくり突きまくるのである。
 私は大将に抱かれている喜びとバックを犯される快感をかみしめ乍ら、潤んだ目で大将をじっと見ている。

 私の体が大将によってどんどん折り畳まれる。大将は極限まで勃起した巨大なものを、私の体に根元まで埋めこんだまま、大きく股を開いてどんどん前進する。それにつれて私は背中だけを畳につけて、下半身は大将の巨大なもので吊るされた恰好となり、大将は更にもっと奥まで挿入しようと太い腰をゆるゆると揺するのだ。大将の反りかえった巨根が私の直腸の周囲をうねり乍ら右に半周し、更に反対方向にうねらせるのだ。
 私は犯されるよろこびをどのように表現してよいか分らず、吐く息だけでよがり声を出しながら、大将の顔を伏し拝んだ。

「五郎、気持がいいか、お前は最初から受身だからほんとに感度がいい。それに較べると、そこに倒れとる本田はタチ役からどんでんしたので今一つだった。それにしてもお前は俺の太いのがよくも一発で入ったものだ。今日から俺の身の廻りを世話してくれ」

 大将が、くいくいと腰を回転させ乍らそう云った。
 私は、大将から海老のように体を折り曲げられているので動くことが出来ない。大将は更に深く埋めこんで云った。

「五郎よ、今からとっておきの快感を与えてやる。如何にお前が様々の受身の経験があろう共、これだけは初めてと思う。俺のは雁が太いので痛いが我慢せい」

 大将が私の尻の中に埋めこんだものをずるずると半分以上抜いた。自分の体を動かして抜くのではなく、私の体を動かして抜くのだ。一串刺しのダンゴを抜く要領である。私の体がダンゴで串は動かさないのだ。更に私の穴の内側に雁をひっかけて私の尻を吊した恰好にした。少しでもゆるめると私の尻が外れるので、私は括約筋で大将のくびれを強く締めた。

 すると大将が、更に亀頭冠を抜き出す程に私の体を離した。内部の直腸が大将の雁でかき廻された揚句、突出した雁と共に引き出されてしまうような抵抗があり、私のバックに激痛が走った。とがった雁の最も太い部分で私の肛門を掻いているのだ。
 私は肛門が裂けると思った。額からたらたら汗がこぼれた。あまりの痛さに涙が出た。すると大将は、私の痛さの頂天で再び雁を中に入れたのだ。痛みはすぐになくなり、その代り素晴らしい快感が体の中心をかけ廻った。

 大将は最大限に勃起したものの先端だけを私の尻の穴に入れ、亀頭冠で肛門の入口を出たり入ったりさせた。五、六回それをされると痛みがすっかりなくなり、大将の動きの総てが快感となって私の全身をかけ回った。
 私は仰向きにころがされ、背中だけを畳につけ下半身を上に吊られ、尻の入口で大将と繋がっている。大将の巨根は、亀頭冠の最も発達した部分で私の尻の入口を執拗にくるりくるりと責めた。

「五郎、いいのか、どうだ」

「あーあ、いーい」

「そんなにいいのか、おい五郎」

「あーあ、うーう」

 私はあまりに気持よくて答えられない。ただ上半身をくねくねと動かし乍ら、声をあげて泣き始めた。
 私の体の中は真空となり空高く舞い上ったようだった。
 私の頭の中には、岡山の先生も彦太郎も既になかった。仕事も金も一切いらないと思った。巨大な大将のものに繋がれて私は世界一幸福だと思った。神が幸少い私に与えてくれた唯一の贈り物だと思う。
 大将の腰が一際強くバウンドし、又新しい快感が送り出され、私は大声でむせび泣き乍ら次第に失神してゆくようだった。                                           
 (了)  
     
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