犬の男
月刊「サムソン」1983年4月号に掲載。
画 五島 玄
物語
 宗作は地方の名士なので発展場に出入りすることは、極力慎まねばならない。代わりに発展場に行き、宗作好みの男を見つけ、宗作が待つアパートへ連れて帰るのは精二の役目である。
もう五、六年そんな関係が続いていた。
 ある日、精二は映画館で自分の理想でもある肥満体の男を見つける。相手も自分を気に入ってくれている。この男を宗作には渡したくない。
しかし、悩んだ末、泣く泣く精二はその男を宗作の元へ連れて帰る。
登場人物
●精二
 五十六歳、独身。十年前、宗作の会社に事務員として入社。五年前、社内旅行の岩風呂で好きだった宗作と結ばれる。以来宗作の家から三キロ程離れた隣町の繁華街のアパートに囲われるようになった。
●宗作
 五十二歳、168cm、79kg。北九州の一流土建会社の社長。