彦さんとの同棲日記
月刊「サムソン」1990.1月号〜12月号に連載(全12回)
■物語
 十五、六年前、私は三十五年間勤めた玩具問屋を定年で退職したのをきっかけに、彦さんという目の不自由なマッサージ師と熊本市内の住宅街にある二十坪程の家で同棲を始めた。第二の人生を彦さんの目となって生きようと決心したからである。
 それから歳月が流れて、今、私は六十七歳、彦さんは六十歳になっている。
 お互い浮気もするし、喧嘩もする、それでも離れることなく十五年間続いた二人の関係が、筧さんという超理想の男の出現によって、ガラガラと崩れ始める。