男色地獄
月刊「サムソン」に1986年頃に連載(全11回)
不倒翁甚平初の長編小説
画 五島 玄
物語
 呉服屋の主人・卓也(58)は、八年間、相思相愛の関係を続けてきた元警察署長の副島伝三(65)から、山師の源助の女になれと突然切り出される。伝三を死ぬほど愛していた卓也は、伝三から捨てられる不安と余りのショックから逃れる為、杖立温泉に傷心の旅に出る。
 そこで喜之助(61)という童顔の大入道と、佑元(56)という稚児のカップルと出会った卓也は、二人のSM的な男色行為に魅了され、自分の中に燻っていた奥深い欲望に気づく。
読書感想文・・・不倒翁甚平・読書会より
DATE: 10月 2日(木)15時17分36秒
TITLE: 「男色地獄」を読んで NAME: 菊浪(63歳)

 読書会を待っておりました。皆さんのアンケ−トで「男色地獄」に決定したんですね。
一気に読破しました。不倒翁先生の作品に共通してますが、心理描写や状況描写が長文で、その上会話、せりふが少ないので読んでいて途中でちょっと疲れます。少しくどいなあと思う時もあります。これは文体のせいでもありますが先生の重厚な、拡張高い表現のなせるわざでしょうね。
 途中で一息いれてフウッ-とため息がでます。マラの表現なんか読む人の想像力を高める描写で勃起もおです。その反面肛門の疼く様子が少ないような気がします。それとしくしく泣くというそのよがり声をもっとリアルに書いてくれればもう最高です。
 卓也が喜之助と源助のどちらを選択するのかわかっていてもドキドキしますよ。
 私も卓也になって選びたいです。それと私が九州ですので九州なまりの言葉や地名・・杖立,別府など身近に感じられてよかったです。

DATE: 10月 5日(日)20時22分19秒
TITLE: さわりしか読めてませんが・・・ NAME: 熊越(42歳)

「男色地獄」まださわりしか読めてないのですが、
小説の始まりも10月と言う事で、現実とリンクしていて良いなぁと思います。温泉の恋しい季節でも有りますし。

やはり「越中ふんどし」と言う表記が私は好きですね。
とてもエロティックに感じますし、「ふんどし」とひらがなで表記する事によってふんどしの柔らかな質感まで表現されているような気がします。
不倒翁先生が、ふんどしの愛好者、もしそうでなくてもふんどしファンで有る事は文章を読んでいると想像に難く無い気がしますね。

「紐を縫いつけた尻にあたる部分の布がアイロンでもかけたように皺がよってないのに、股間のものを包んでいた前垂れの部分がその形で盛りあがり、その両端は縦に無数の小皺を作って全体の幅を細くしていた」

ふんどしの描写が良いですね。
ふんどしを魅力的に描写できるのはやはりふんどし好きで無いと難しいと思われます。
確かにこんなふんどしが脱衣籠の上にふわりと乗っていると、どんな持ち主なんだろうとか、色々想像してしまいますね。
実際にこんな情景に出くわしたことはありませんが、思わずふんどしの手を伸ばしてしまいそうな欲求を押さえるのに苦労しそうです。

DATE: 10月 6日(月)19時59分08秒
TITLE: 読書感想文その2  熊越 

昨日秋祭りが終わったら一気に秋が深まり、寒くなった気がします。
今暖かいコーヒーを飲みながら書きこみしています。

「男色地獄」第二回の半ばまで読み進みました。
以前から「稚児」と言う言葉は好きだったのですが、字面が子供の様であまり気に入らなかったんですが、今回「男色地獄」を読みましたら、「チゴ」とカタカナ表記してあり、これなら良いなと思いました。

主人公の卓也が、伝三の誘いで温泉に行った時に、伝三のチゴも同行しており、卓也は来なければ良かったと思いますが、私も同じ立場であれば、同じように来なければ良かったと思うだろうなと考えました。
主人公に感情移入できた唯一の個所でした。
私は伝三が一番好みに合ってます。

DATE: 10月 7日(火)18時25分12秒
TITLE: 読書感想文その3 NAME: 熊越

ようやく「男色地獄」二回目読了しました。

読んでいて思ったことですが、不倒翁先生は、登場人物をいかに魅力的に描写できるかこだわっておられように感じました。
これでもかこれでもかと個人を詳細に描写して、読者に登場人物の魅力をアピールしておられるなと思いました。
それゆえに、読者は登場人物のルックスに惹かれ、心情に感情移入して物語に惹きこまれて行きますね。
もうひとつうまいな〜と思うのは、主人公と共に読者も焦らされるんですよね。
口伝えで、新しい登場人物の複線が張られて、どんな人物なんだろうと、主人公と共に精神的に焦らされて期待を高めてまたされます。

DATE: 10月10日(金)20時51分01秒
TITLE: 読書感想文その4 NAME: 熊越 

「男色地獄」を読んでいて思ったのですが、この作品のテーマは人間の業とか性(さが)だなって。
好きな男に抱かれながらも他の男を思うなんて・・・
誰でも個人差はあれど多少なりとも有りそうですね。
思い出した歌がありました、その歌を聴いた当時はそんな事ないと思いましたが、今になると理解できますね。

ジュディ・オングの「魅せられて」
♪好きな男の腕の中でも
 違う男の夢を見る♪
DATE: 10月 6日(月)15時38分53秒
TITLE: キンモクセイのかほり NAME: 2ndo4 (69歳)

 万吉さん、そして読書会の皆さん こんにちは。
我が家の庭では、馥郁としたキンモクセイの香りが秋たけなわの風情を演出しています。それでは、読書会の一報をお届けします。伝三の、太鼓腹に組みひしがれながら主人公としての卓也(ウケ)の流転人生が始まりましたね。孝吉の僻みに、耐えながらも主人である伝三に仕える卓也のけなげなサガを感じます。その間、喜之助の無造作に脱ぎすてられた越中にウケの心を時めかされ、剛毛逆巻く源助の巨根に幻惑されながらも伝三を捨てきれずに恋い慕う、卓也の心情が痛いほど伝わってきます。男色の真髄は、単に二人の肛門性交にとどまらず他の要素としてSMの交情を避けて通れないことを、調教される行に新たな展開が待たれます。その交情は、源助によって開かれる予感がありますがそれでもまだ喜之助に心をよせる卓也の心情がこれから、どんな行で進展するのか楽しみこれに尽きぬものを感じます。と同時に、今後は伝三さんとの交わりが消滅の一途を辿るのか? 
はたまた、フィットした良質な肉感にそぞろ寄るような帰趨となるのかも、楽しみなところです。

 ※ これまでの男色図は右のような関係ですかね。
 
       佑元←(喜之助)⇒⇒↓

       孝吉←(伝 三)⇒『卓也』

       老人←(源 助)⇒↑?

   矢印の方向はタチからウケを指す(挿す?)    
   卓也は伝三のウケ&喜之助と交合         
    次回卓也は源助に貫かれるか??(もぅ堪らない)
DATE: 10月 9日(木)20時33分45秒
TITLE: 悲しい男の・・性 NAME: haru (55歳)

 私も時々浮気心が起きます。
今の彼が好きでたまらないくせに、素敵な老人を見ると心がおどってしまいます。
彼とは遠距離恋愛の為、月1度逢うのがやっとです。彼と逢った時は激しく燃え上がりますが、期間が空くと体が疼きます。そんな時には浮気心が頭を持ち上げてきますが我慢我慢です。
でも卓也の様に自分に正直にいきられたら幸せだろうな?何て思ってしまいます。
小説の中の卓也になりきって読んでいます。
DATE: 10月 9日(木)20時54分54秒
TITLE: 読書感想 NAME: 鬼瓦 (63歳)

今後の展開によっては変わるかもしれませんが今のところは、登場人物の中では伝三さんが一番気に入ってます。

 卓也は、そんな奥さんを見て、こんな小さな指で伝三さんの性器を握るのだと思った。また、こんな小さな奥さんを抱いて、もこもこと腰を動かして射精する伝三さんの体を想像すると、手もふれないのに股間のものが勃起した。こんな年になって珍しいことだった。

この表現には特に引かれるものがあります。男だけでなく、両刀の伝三さんが頼もしく、良識があり好ましく思えるのです。
最も、以下の源助さんの陰茎にも気を引かれます。
不倒翁さんの、亀頭への思い入れが感じれられますね。

 その時、老人の両手は源助の股間のものを大切そうに握っていた。両手の先に黒紫色に輝いている亀頭が見えた。それは伝三さんや喜之助のものとは較べようもない程のボリュームがあった。


ところで、小生のプロフィールで書き忘れました。
越中褌常用です。太った腰をゴムで締め付けると、窮屈なだけでなく、体調も悪くなるような気がします。その点、ゆるふんにした越中褌は、股間を締め付けすぎず快適です。
DATE: 10月11日(土)14時40分40秒
TITLE: 感想文?NAME: 白褌(42歳) 

 男色地獄の感想ですが、「伝三の優しさの仲にも十分な厳しさを秘めた表情」、「柔和な顔をほころばして妻をじっと見つめるだけだった」男の器、男の年輪を感じさせます。伝三と卓也の関係、伝三さんが卓也の情念の深さを感じ取って自分より強いタチあてがったのか、男も妻も満足させてやらねばならい両刀の辛さかな。伝三の気持ちと、卓也の伝三への情の双方が交差します。 
「男色の真髄はタチとウケによる肛門性向に尽きる。」
そこにS.M加味された時、どうしても普通の男色が陰になり薄れてしまう。
自分もそのとおりだと思う。
昨日から、マラが褌を激しく持ち上げてます。正直、自分が伝三と卓也の双方どちらにも置き換えられる。また、喜之助、源助のS、佑元、老人のMの全ても可能だが、伝三のような男が自分の憧れです。

DATE: 10月11日(土)19時24分01秒
TITLE: 男色 NAME: 白褌

 自分は、男色という表現を好みます。勝手な思いこみでしょうが、男と男の神聖な交わりなような気がしてね。
昨日からせんずり連発です。早めに親爺探さないといけませんね。
DATE: 10月14日(火)19時41分52秒
TITLE: 一気に NAME: 雅 (42歳)

「男色地獄」一気に読みました。
 最近のほんの小説に較べると、はるかに表現がきめ細やかで、目の前に浮かぶようです。
 表現が綺麗な日本語で綴られているからこそなのでしょうか。掲示板で正統派と言われる所以ですね。普通の小説でさえ、最近は、横文字が羅列してあり、いやになってきます。こういう機会が与えられたことを嬉しく思います。続きの小説を楽しみにしてます。
DATE: 10月19日(日)14時43分25秒
TITLE: 2回センズリ!! NAME: コウスケ (49歳)

 早速、男色地獄2回読ませて頂いてとても感激しております。
卓也の(男×男)の肉体の交わり中で伝三さんへの愛を貫きたい思い。
また、伝三さんから卓也への潜在能力への思いやりが見事に表現され、なんとも言えぬ性を感じます。つい私も作品を思い浮かべ2回ほど精液を飛ばしました。
早く続きを読ませてください。
DATE: 10月19日(日)23時55分12秒
TITLE: 待ち遠しい更新 NAME: 黒パパ(46歳)

「禿げ上がり・熟年紳士」、「太鼓腹・固太り」、「越中褌・ステテコ」、私の本理想像です。
男色地獄はこれら全てを満たす男達が惜しげもなく登場して、興奮なくしては読めません。
この世界の経験の浅い者としては、SMが入ると少しビビッテしまいますが、何故かのめり込んでしまいそうな不安もあります。
これから卓也がどうなるのか、わくわくしながら続きを待っています。
DATE: 10月20日(月)22時23分15秒
TITLE: 男色地獄、拝見しました NAME: 高山 (54歳)

濃いですね、圧倒されてしまいます。性器の描写も、細かくて執拗で、これ以上書きようがないって所まで書かれているんですね。それと、心理描写。男への複雑な心情が、よく考えるとあり得ないんですが、読んでる時は、ああこれは、自分もこう思ったことがあった、あったって思いながら読んでしまいました。
10/31(金) 14:06
勃ちます  菊浪(63歳)

 「男色地獄」3話ありがとうございます。
「ああ、おとうさんの女にして・・・」と先走りを垂らしながら,卓也が言う科白がいいですね。直腸にどくどく注がれて・・・もうこのチンポさえあればすべてを捨てて、巨根でえぐってさえくれれば何も要らない・・
 私もきっとそうなると思います。後半のサンドイッチもいいです。入れて入れられ男色の究極の快感でしょう。
あらすじ
 熊本市で五代続く呉服店の主人である山本卓也は、十年前の四十八歳の春、店の前をバイクで通勤する当時五十五歳で警察署長の副島伝三に一目惚れした。でっぷりと肥え男臭い伝三に片思いのまま二年近くが過ぎた晩秋のある日、卓也は当の伝三から和服の注文を請けた。
 伝三の身体の寸法を測りながら、卓也は「もしや?」と思う。そして自分の気持ちを抑えることが出来なくなった卓也は無我夢中で伝三の身体にむしゃぶりつく。

 その数日後、卓也は伝三から別府温泉に誘われた。その日伝三は十年来の愛人、孝吉と一緒だった。
 夜になり、伝三は卓也の前で孝吉にその巨根を散々愛撫させた。当然二人の交合を見せつけられるのだと思っていた卓也を、伝三は鋭い目で見て「卓也、おまえのバックを掘ってやる。ここに寝ろ……」とせっぱ詰まった声を出した。
 仰向きになり両足を両手で抱えた卓也の肛門を孝吉が指で拡げ、舌を入れ、唾を送りこんでくる。その間に伝三は、卓也の口にその巨根を咥えさせ、先走り液を滲ませたもので喉を突く。
 卓也の尻がすっかり開いて、伝三の巨根を欲しがり始めると、伝三は卓也を俯せにして、尻をきゅっと上げさせると、潤滑油を充分塗った巨大なモノをゆっくりと埋め込んだ。
 痛さと嬉しさにさめざめと泣きつづける卓也の尻をかかえて抽送を続ける伝三は、卓也にこう語りかけた。
 「卓也、おまえの尻は極上じゃ。孝吉よりずっとようしまる。今日から俺の女じゃ。もうすぐよくなるから、うんとよがれ」

 以来、八年間、タチとウケとして、相思相愛の関係が続き、伝三は六十五歳、卓也は五十八歳になっている。
 伝三には、初めから卓也の他に愛人がいたし、二人とも浮気は適当にしていたが、卓也にとって、伝三は最愛の旦那様であり、いつまでもこのままの関係が続くことを望んでいた。

 いつもの旅館で伝三は卓也を抱きながら、行為の最中に覗き穴から隣の部屋を卓也に覗かせた。隣室では、大男が老人を組み敷いていた。そしてその大男の「女になれ」と、突然切り出した。
 伝三を死ぬ程愛していた卓也は伝三にそのまま捨てられてしまうような気持ちになり、その命令に服従することが出来ず、心が破れる程悩んだ末に杖立温泉に逃避行した。

 温泉旅館での滞在が一週間を過ぎ、卓也はようやく健康を取り戻していた。 
 卓也は午前五時に起きて、湯に浸かりに温泉場に行った。 湯船の中には年輩肥満体同士のカップルが先に入っていた。二人は卓也の前で、仲睦まじいところを見せつけた。そしてその晩、部屋に来るよう卓也は誘われた。
 二人は喜之助と佑元という名前で、寺の住職とその寺の番僧という間柄であった。そして性的には喜之助は、佑元にとって絶対的な支配者であり、佑元はご主人様に完全に飼育された奴隷という関係である。
 二人の究極のセックスを見せつけられた、卓也は、自分の中でずっと燻っていたものの正体に気づく。

 卓也の性情をいち早く見抜いた喜之助は卓也に裸になるように命じ、いたぶるように卓也を抱き、責め立てた。そして卓也の中に楔のように完全に男根を埋め込んだ後、「あんたが伝三さんのチゴさんということは前から知っとった」 と熱い息を吹きかけながらぽつりと言った。
 驚く卓也に喜之助は、「この世界はとても狭かと。横にも縦にも連絡がついとるけん、あんたが源助に見染められたこともよう知っとるばい……」 と言い、更に卓也の後ろを責めながら、「そんなに気持ちがよかとか。卓也、このまま俺の女にならんか、気持のよかろうが……。ばってんおまえは、どうせ源助の奴隷になるにきまっとる」とも言った。

 卓也は喜之助にすっぽり抱かれ、その巨根を根元まで埋めこまれ、体中が融けるような良質の快感にもだえ乍ら、「喜之助さん、あんたがよか。あんたの奴隷にして下さい、何でもしますけん…」ととぎれとぎれに訴えた。

 ・・・・・と、ここまでが全11話の内の第二話の三分の一までのお話しです。 この先、卓也はどうなってしまうのでしょう?
 仕事も家も妻子もプライドも、総てを捨てて、男色地獄に堕ちていく・・・・のでしょうか?

登場人物

●山本卓也
五十八歳、162cm、82kgの肥満体で九州・熊本市で五代も続いた呉服店の主人。年輩肥満体の男にのみ魅力を感じるウケである。そんな性癖がありながら、普通に結婚し、二人の子供をもうけ、ひたすら秘めて暮らしていたが、五十歳になる頃から、男色の道に入り、僅か八年間のうちに二、三十人の男達と交わり、今では男同士の遊びにどっぷり漬かる生活から抜けられなくなっている。娘は嫁に行き、末っ子の長男は大学四年生。

●副島伝三

六十五歳になるでっぷり肥った、元警察署長あがりの人、168cm、92kg。
年の離れた美人の奥さんが後妻で、十三歳と十一歳の二人の女の子供がおり、病死した先妻との間に五人の子供がいる。八年前、卓也と関係が出来る。他に、須藤孝吉という六十七歳の男とは十八年間続いている。
●須藤孝吉
67歳、卓也よりも十年早くから伝三の愛人

●尾立喜之助

六十一歳の寺の住職、168cm、90kg。童顔で頭には一本の毛もない。
●佑元
喜之助の稚児。五十六歳の番僧。

●轟木源助

五十九歳の山師。165cm、95kgで、厚い胸や両太ももには剛毛が密生しているのに、太鼓腹だけには一本の毛もなくつるつるで艶があり、全体から受ける感じは達磨そっくり。

●老人(源助の稚児)
六十九歳、150cm、80kg。昔サーカス団に入って全国を廻っていた。その頃は少年愛で若い子のバックばかり犯していたが、四十歳の頃からウケにドンデン返りして年配の肥満体に抱かれるようになった。現在は源助一人に奴隷のような愛を捧げている。

●東郷さん

六十八歳、170cm、102kg。鹿児島でマンションを3棟持っている。若い時から男色一筋で妻子はいない。
白岩医師・・・卓也より二歳若い五十七歳で、頭を坊主刈りにしていてどう見ても医者らしくない。百六十センチしかないけれど、体重は九十キロを軽く越えている。

●中村さん
五十二歳。和歌山のやくざの大親分。徹底したタチでS。
男色地獄  第一話

(三) 老人を可愛がる源助

 副島伝三との二回目の出会いは、意外に早く実現された。卓也はその連絡を、小肥りの男が直接店まで持ってきた手紙に依って知らされた。その手紙には翌日の土曜と日曜を利用して別府温泉に行く旨を簡単に書いてあった。

 小肥りの男は、卓也が手紙を読んでしまうと、むっとした顔をしてこう言った。

「私が署長さんと知り合うたのは、もう十年も前たい。署長さんはほんによか男で、私はあん人から離るるこつの出来まっせん。ばってん、あんたが署長さんにちょっかいば出しなさるけん、今は署長さんの心があんたになびいとる……」

 卓也は、その須藤孝吉と名のる六十七歳の男も又、我々と同じ男好きの性癖を内に秘めて、ひっそりと伝三さんとの愛を守っているのだと思った。

 孝吉は、卓也の迷惑にならないように言いふくめられているらしく、それだけ言うとそそくさと呉服店を出ていった。電話で連絡すれば随分と手間が省けるのに、電話をかけて卓也が迷惑することを心配して、わざわざ孝吉に手紙をことづけてくれた、伝三さんの優しい心くばりが嬉しかった。けれども伝三さんが、十年も前から孝吉と男の愛で結ばれていた事実は卓也を驚かせた。

 指定地のMデパート前にいる卓也の前に止まった車の中では、伝三さんがハンドルを握り、その助手席に須藤孝吉が乗っていた。卓也は後部座席に乗りこんだ。この街から別府温泉までは丁度三時間かかった。卓也はその三時間の間に伝三さんと孝吉の深い関係をいやという程知らされたのだ。別府迄の途中、やまなみハイウエイが山の尾根や盆地、高原等を走り抜けた。

 車窓から見るこれら自然の風景は、どれをとっても思わず溜息が出る程美しかった。だから三人のうち一人位はその景観をほめてもよかろうと思うのに、三人はひたすら無口だった。それは車に乗りその街を出発して三十分も走らないうち、孝吉の顔が伝三さんの股間に伏せられた故だった。

 後部座席にいる卓也からは、伝三さんの股間の上で孝吉がどのようなことをしているのかはっきり分らなかったが、少し立ちあがって前の席を覗くと、伝三さんの出っ張った太鼓腹の為、孝吉の頭は、ハンドルと太鼓腹の僅かな隙間にやっと入っているのが見えた。そして、その頭がかすかに上下に動いていた。

 時々、運転している伝三さんの呻き声がきこえた。そんな時ハンドルさばきがいくらか雑になったが、余程気持がいいらしく、その行為を止めさせようとはしなかった。特に舗装状況の悪い道の上では、車が複雑に揺れるので孝吉の口にくわえられた伝三さんの性器が微妙な刺激を受けるらしく、僅かに顔を歪めた。

 別府の旅館に着いてから、三人はすぐ温泉に入った。その間も孝吉は伝三さんの体にまとわりついて、ひとときも離れなかった。卓也は大島紬の寸法どりの時、肌着の上から一度だけ見た肥満体の総てを、何とかしてもう一度見ようと努力したが、肝心な部分、特に股間のものは必要以上に隠したので、その全貌を見ることが出来なかった。そんな時、伝三さんは少しにがい表情をして卓也を見たが、粗野なまでに男性的だった。

 卓也は、二人を見ながらどうして自分を誘ったのだろうと思った。たぶん今夜は自分だけが別室で寝るか、さもなければ二人の睦みあいを傍で見るだけになるかもしれないと思った。来なければよかった、今すぐにでも帰ろうかとも思う。然し、卓也がそんな悲しい行動を止めたのは、孝吉から様々な愛撫を受けながらも、伝三さんの優しい目が何時でも卓也に注がれていた故だった。

 やや暫く遅れて温泉からあがった卓也は、部屋のふすまを開けて思わず棒立ちになった。周囲が鏡張りになった部屋の真中で仁王立ちした伝三さんの股間に、孝吉の口が吸いついていた。両手を伝三さんの尻に廻して顔がぺたりと股間にかぶさっている。

 裸のまま二人の傍に近寄った卓也は、孝吉の口が伝三さんの双玉をくわえてねろねろと舐めているのを見た。右手で巨根を隠しているつもりだが、その根元も亀頭も右手からとび出してぴくぴく震えている。孝吉は卓也の視線を意識すると、両手でその根元を握り口を大きく開けて亀頭を頬張った。

 孝吉の頭がリズミカルに上下し、水平に廻り始めると伝三さんが小さな声でよがり始め、両足を小刻みに動かしたが、立っていることが出来なくなり、ゆっくり畳の上にころがった。幸吉は素早く伝三さんの股間に入った。巨根はくわえたままだった。それから十分程が経ち、幸吉の頭がゆっくりローリングし、伝三さんが切ない声でよがり乍ら、その太い腰をつき上げてぶるぶるとふるわせた。

 そして伝三さんは、傍にいる卓也の方を鋭い目で見て、せっぱつまった声を出した。

「卓也、おまえのバックを掘ってやる。ここに寝ろ……」

 当然、孝吉の尻を責めるものと思っていた卓也はめんくらって孝吉を見た。孝吉は伝三さんの意図を察し兼ねてその巨根を口から離し伝三さんをじっと見た。そんな孝吉に伝三さんがきっぱりと云った。

「今日は卓也の尻に入れる」

 卓也は少しだけ驚いたが、伝三さんが自分を抱いてくれるのだと悟ると、素早くあお向けに寝て両手で両足を頭の方にひきつけた。すると総てをのみこんだ孝吉が、卓也の尻をかかえてバックをひろげ始めた。

 孝吉は右手の指を一本又一本と卓也の尻に挿入し、舌でその入口をひろげ次々と出てくる唾をその中に送りこんだ。その間、伝三さんは卓也が死ぬ程恋こがれたその巨根を、あます所なくさらけ出して卓也にくわえさせた。それまで散々孝吉の口で愛撫された伝三さんのものは、過去卓也が一度も見たことのない程ふてぶてしいものだった。

 それはもじゃもじゃの毛にかこまれて力強く勃起し、どんなに努力しても卓也の片手で握ることが出来なかった。根元からすぐ反りが入り、先にいくにつれ一旦くびれてそこから段差をつけた亀頭冠につづいていた。余程射精をくり返したらしく、精液に焼けて黒紫色に光って見えた。卓也は孝吉に尻を吸われ乍ら、伝三さんの巨根を飲みこんだ。先走液を少しづつにじませている伝三さんのものは、これ以上大きくならない程強大に勃起して、卓也の喉をぺたぺたと突いた。

 卓也のバックがすっかり開いて伝三さんの巨根をほしがり始めると、伝三さんは卓也をうつむかせて尻をかかえた。卓也の尻がきゅんと上を向いている。孝吉が伝三さんの巨根に手を添えて卓也の中心にあてがうと、伝三さんが下からすくいあげるようにして腰を前に送った。滑りをよくする為、十分な油を塗りこんではいたが、あまりの巨大さの為卓也は歯をくいしばって耐えた。それでも根元まで埋めこまれた時殆ど虫の息だった。

 痛さと嬉しさにさめざめと泣きつづける卓也の尻をかかえて抽送を続ける伝三さんは、卓也にこう語りかけた。

「卓也、おまえの尻は極上じゃ。孝吉よりずっとようしまる。今日から俺の女じゃ。もうすぐよくなるから、うんとよがれ」

 その言葉を卓也は、遙か遠い所からきいている気がした。あれ程好きな伝三さんのものにうしろから貫かれて、死ぬ程うれしかった。その日から、卓也は伝三さんの女として過した。

   ◇ ◇ ◇

 一日、又一日と伝三さんとの交渉を重ねるうち、卓也の体はこの世界の受身として急速な進歩を示し、四、五日間も彼と接しない日があるといらいらして落着かぬような体になってやがて二年目になっていた。

 そんな日々のなまあたたかい春の夕方だった。伝三さんの命令で、市内の旅館に行った卓也に伝三さんが部屋の壁を指さしてこう言った。

「あそこに穴のあいとる。穴から隣の部屋が見ゆる。覗いてみろ」

 その頃、警察署長を定年で退職した伝三さんは、そんな風変わりな遊びをたのしむようになっていた。卓也は急いで壁ぎわの穴に近づき、腹這いになって隣室を覗いた。やっと夜になったばかりの室内には煌々と灯りがともされて、覗いている穴に近い部屋の隅で、大男が老人の体を海老のように折り曲げてその上から乗りかかり、大きなストロークで抽送しているのが見えた。

 よく見ると大男は六十歳前後ででっぷり肥っており、組み敷いた老人の両足を顔にくっつける程折りまげて、右手の五本の指を根元まで老人にくわえさせていた。抽送するストロークが長いので、腰を入れる時もひく時も大男のものがぼんやり見えた。先端の亀頭の部分は完全に老人の中に入って見えなかったが、胴体の部分が電灯に照らされて真黒に見えた。

 卓也は大男の顔と、老人の体に入った反り返ったものの太さをまばたきもせず見つめ乍ら、股間のものをかちかちに勃起させていた。それを知った伝三さんが、うしろからゆっくり巨根を挿入して卓也の尻を犯した。卓也はそんな恰好のまま壁の隙間から、隣室の男達の情交を盗み見た。

 隣室の男達の射精が終ると、伝三さんは卓也のうしろに入れたまま、尻をかかえて部屋の中央に移動してから訊ねた。

「隣室の大男のタチは山師で源助という名じゃ。あんな男を卓也はどがん思うね……」

「突然、そんなことを訊ねられても、おいそれとは答えられません」

 卓也は、うしろを犯されている快感にあえぎながら、やっと答えた。

「実は、源助がお前をゆずってくれんかと、強い要求があってなあ」

 卓也は何も答えなかった。すると伝三さんは更にこう云った。

「卓也、一度だけ源助に抱かれてみる気になれよ。きっとこの俺よりよかと思うぞ。ええ?どうなんだ」

 それでも、卓也は何も云わなかった。言わなかったというよりも、うしろを犯されている伝三さんの巨根が、次々に快感を送りこんでくれるので、死ぬ程気持がよくて何も答えられなかった。

 卓也はその快感に泣き乍ら、こんなにいいのに何故源助に抱かれなければならないのだろうと思った。それに、山師の源助に抱かれれば自分の生活がひどく乱れるような気がした。彼は現在のまま呉服店を盛りたてながら、一週間に一回だけ伝三さんに抱いて貰えればこれにこしたことはないと思った。

「山師の源助は、この俺よりひと廻りも大きかし、マラも俺よかずっと太か。けど完全なタチじゃけえ、初めての男に入れても絶対怪我なんかさせりゃせん」

 伝三さんのそんな言葉を卓也は夢うつつでききながら、伝三さんのものをくわえた尻を高くあげて、二、三度尻をゆすり、両手を畳に拝むようにおいてその中に顔を入れ、涎をたらたらと流した。伝三さんの巨根で貫かれていることも、たった今見た源助の交合も卓也の神経中枢を激しく刺激して、もう二、三度伝三さんに抽送されたら、ところてんで射精しそうで不安だった。

 そのようないきさつがあり、卓也は精神的にも肉体的にも追いつめられ、悩んだ末この山深い杖立温泉に逃げて来たのだ。逃げて来てもいい考えが浮ぶ筈もなかった。

 彼にとって、山師の源助は捨てるに惜しい男だった。もしも首を横にふれば、再び源助に抱かれることはあり得ない筈だった。

 欲深い卓也は、今のまま家業の呉服店で働き乍ら、出会おうと思えば何時でも抱いてくれる夫婦のような伝三さんとの甘い交際を死ぬまで続けたいと思った。二年間近くも抱かれ続けた伝三さんの体は卓也によく馴染み、又とない宝のような存在だった。けれども、その上で一ケ月に一度位の割で、源助のような男とも寝て見たいと思うのだった。

   ◇ ◇ ◇

 杖立温泉に来て一週間が過ぎても決して、心がすっきりすることはなかった。そんな時、早朝の温泉で年配の男とそのチゴさんに出会ったのだ。後から男は尾立喜之助という六十一歳の住職で、チゴさんは五十六歳になる番僧佑元だということを知らされた。

 その夜更け、卓也は二階の二人の部屋にそっと忍び入った。それは早朝の温泉場を出る時、喜之助が卓也の耳に口を寄せて、命令でもするように喋った言葉の故だった。

「今夜、十時頃二階の私達の部屋に来い」

 そっとふすまを開けると、暗闇の中でうごめいている気配がして、更に二人の激しい息使いがきこえた。卓也の体が急に昂奮して眼がぎらぎらした。想えば彼はもう一週間も男の体に接していなかった。すっかり理性をなくした彼はぼんやりと伝三さんのことや源助のことを思い出したが、早朝見た喜之助の裸体がそれらを急速に消した。

 卓也は急いで裸になると、ある目的に向かって敢然とつきすすんでいった。

                                   (つづく)