野戦病院
       月刊「サムソン」1992.1月号〜10月号に連載(全10回)

                        画 石島次郎
物語
 昭和十九年の終わりから、昭和二十年の終戦までの台湾のN野戦病院。
 軍医須藤大尉はじめ、大久保大佐、小泉当番兵、源徳和尚、現地人の李さんなど、数少ない男色者達は、戦況悪化し、明日をも知れぬ日々の中で、モラルも誇りも捨て男色の快楽を貪る。
主な登場人物
須藤大尉
 四十二歳。N野戦病院の内科医。
 大連の野戦病院で、大久保大佐と男色関係になる。その縁で昭和十九年、十一月N野戦病院に軍医として配属になる。
大久保大佐
N野戦病院の院長 五十三歳。
岩井少佐
 N野戦病院の内科部長(副院長格) 四十八歳。
 小太りで、誰にも気さくに声をかけたり、どんなときでも威張ったりしない性格。
小泉看護兵
 大久保大佐の当番兵。四十歳前後。
 洋服屋をしていたが、四十歳前に招集される。家業の洋服屋を業として生計をたてていた。
 色が白くてふっくらと太っており、如何にも大久保大佐が好きになりそうな男。
丸山船長
 五十二歳、162cm、74kg。一万トンの貨物船の船長。
 船が撃沈され、昭和十九年の大晦日にN野戦病院に担ぎ込まれる。
 何処となく野性的でありながら、体中から知性を発散させている男。
李さん
 六十がらみの、でっぷり太った男。
 台湾高地人で、高砂族だが、非常に親日派で片言の日本語ならなんでも話せる。
 須藤大尉が旧制中学三年生のとき初めて男色のなんたるかを教わった近所の八百屋の彦太さんに似た雰囲気をもっている。
布施兵長
 小泉看護兵の後釜の大久保大佐の当番兵。
 補充兵として、四十歳近い年齢になって招集された衛生兵。
 色白でぽっちゃり太っている彼の顔は、招集前まで女学校の国語の教師だったというのが、なるほどと頷けるような童顔で、ひ弱い男。
源徳和尚
 野戦病院のそばの火葬場で、死者を弔い、火葬する仕事をしている。
 筋肉質で体毛が濃く、野生的な雰囲気を持つ男。
中田
 丸山船長に可愛がられている男。四十五、六歳になる海軍の招集兵。
 ぽちゃぽちゃと太ったかわいい男。
●舟木二等兵曹
 大久保大佐の当番兵。