あとを引く男
「豊漫」第6号に掲載  1987年6月

物語 
 「今から丁度四年前、福岡県小倉市の木下医師に糖尿病と診断されて、別府から入るやまなみハイウェイ沿いの温泉にニケ月滞在したことがある。丁度定年で三十六年間も勤めた会社を退職したばかりで五十九歳の真夏だった。私自身自覚症状はないのだが、このまま放っておくと合併症が出る懸念があるので、適当な所を紹介してあげるということで、その温泉に行ったのだ。」

 という文章から、始まります。短いお話しではありますが、最後にどんでん返しが・・・

登場人物


 五十九歳。定年退職したばかり。過去、十二、三人の男を知っている。本格的なウケ。

土谷さん
 六十歳過ぎ。温泉地に開業している糖尿病専門の医師。田舎には珍しくあか抜けた雰囲気を持っていて、「私」の理想のタイプ。奥さんはなく母親と二人暮らし。

吉田さん
 「私」の泊まっている温泉宿の従業員。温泉係をしている。165cm、86kg、六十年配のでっぷり肥った男。

「皆は彼のことを吉田さんと呼んだが、さん付けで呼ばれるにふさわしい人品があった。頭はつるつるに禿げているのだが、目鼻立ちが整っており鼻下に貯えた美しい口髭はどんな時もきちんと刈りこまれており、色白な顔の中で魅力的なポイントとなっていた。」

畑の男
 土谷医院の近くの畑で働いている男。二、三年前まで熊本市で公務員をしていた。160cm、80kgの固太り。