放浪歌
「豊漫」創刊記念特別寄稿小説  1986年
 男の愛の心情の不可解さ、そして深さ・・・
 生きること愛することそして性の喜びと哀しみ・・・
 男の心理の深淵に挑んで新境地を展く。
物語 
 山陽路の市民温泉場の浴場係をしている工藤八郎。彼は二十五年前出会い、芯から惚れた一人の男への断ち切れぬ思いを今も引きずって生きていた。

登場人物

工藤八郎
 六十五歳、162cm、86kg。温泉場の浴場係。年配の肥満体好きで、徹底したタチ役。
 頭髪をバリカンで刈り、坊主頭にして鉢巻を額の上で結んでいる。目が小さいのに眉が太く丸顔である。浴場にいる時は一年を通じて六尺褌だけの丸裸である。全体に胸や太鼓腹や尻の肉が厚いのだが、曲線的な丸みがあるのではなく、体が角張って見える。