通天閣慕情
「豊漫」第5号に掲載  1987年

物語 
 「私」は九州から、二ヶ月に一度ぐらいの割合で大阪の新世界に男遊びの目的で出かけてくる。
 四年前、「私」が六十歳の時、新世界のホモサウナで有馬さん(当時五十五歳)と出会い、その関係は今も続いている。 知り合って四年になり、最初程のぼせてはいないが、有馬さんに対する「私」の愛はいささかも衰えていない。
 けれども有馬さんは最近「私」をよくバーや、男専門のホテルに連れていくようになった。 そして「私」は半年程前から、バー「ミカサ」の従業員の徳さんのことが、気になり始めている。

 二ヶ月ぶりに出会った「私」と有馬さんは先ずホモサウナに直行した。ホモサウナに入ってから、有馬さんは「私」に『今日はここに「ミカサ」のマスターや従業員の二人も来ている』と告げた。

登場人物


 六十四歳。九州に住んでいる。
 年上の肥満体の男が好み。

 「五十歳前にこの種の遊びを覚えるまでは、ごく普通の人間だった。妻子も愛したし、友人との交際も程々にしてたまには女と遊んだこともあったのだ。」
 
 「六十四歳の私の心をこれ程までに燃えさせる男色とは何と素晴らしいものかと思う。私は好んで男に生れたのではなく、希望して男好きになったのでもない。ふと気がつくと六十四歳の自分があり、どうしようもなく年配肥満体の男が好きなのだ。」

有馬さん
 五十九歳、166cm、90kgの肥満体。

大さん
 新世界のふけ専バー「みかさ」のマスター。
 五十六歳のでっぷりした男。

徳さん
 新世界のふけ専バー「みかさ」の従業員。
 マスターを一回り小型にしたような小肥りの六十八歳の精桿な男

ミネさん
 新世界のふけ専バー「みかさ」の従業員。
 骨太の立派な体格で五十二歳のソフトな顔の男