シンガポールの涙
「中年倶楽部」B 85年初夏号に掲載の短編小説。軍隊デブ専小説。
 中国人朱さんの巨根に秘肛を貫かれながら、
       石川少佐は最後の生命の灯を燃す・・・・
物語
 昭和十九年の春、日本占領下のシンガポールの海軍病院。
四十八歳の中村兵曹長は、軽い肺結核で一ヶ月ほど前から入院している石川少佐の病室で、栗林大佐が、越中褌を付けただけの石川少佐を膝の上に抱き上げて、口を吸っている場面を見てしまう。
 年配肥満体の男にのみ性的魅力を感じるという自らの性向を極端に抑えて過ごしていた中村兵曹長は、自分が焦がれていた二人のそんな現場を目撃して以来、求愛の目で二人を見るようになる。
 そしてある日、見回りをしていた中村兵曹長は石川少佐によって、彼の病室にひっぱりこまれる。
 
主な登場人物

★中村兵曹長
 四十八歳。でっぷり太り色が白く、愛嬌のある童顔。衛生兵から下士官最高の兵曹長に登り詰め、病院内では、衛生兵や看護婦たちの総監督をしている。
 十六歳のときに弟子入りした当時五十歳の畳職人の末吉に抱かれて以来、海軍に入隊してからも末吉が七十六歳でなくなるまでの二十六年間を、末吉一途に過ごしてきた過去を持つ。

★石川少佐
 背は低いがでっぷり太った五十三歳の海軍少佐。悪気のない童顔。和歌山県の南端の町の出身で、れっきとした兵学校出の少佐。軽い肺結核で入院している。

★栗林大佐
 石川少佐より、背が五、六センチ高くでっぷり太っており、年齢五十五歳。九州帝国大学医学部出身の軍医大佐。中村兵曹長の最上の上司で、石川少佐の主治医。

■朱さん シンガポールきっての財閥で実力者。華僑。頭をつるつるに剃り上げ、太い首、厚い胸、ぐっと突き出た太鼓腹、そして大陸的な風貌の大男。