いま24Gがおもしろい!
マキ電機24GHzトランスバーターキット(UTV-24G KIT)の製作


24GHz帯の電波伝搬は非常に面白いということを聞いていたのでなんとかQRVしたいと思い、マキ電機のキット(UTV−24G KIT)を製作した。24GHz帯の伝播は見通しでは10GHz帯となんら変わりなく交信できる。当局から見通しの富士山5合目須走口(距離60km)との交信では当方のトランスバーター出力が6mW程度でも59+60dB、フルスケールの受信レポートをもらった。ただし、天候の影響を受けやすく、霧や降雨のあるときは富士山5合目須走口でも交信不能であった。
毎週金曜日(10G)および日曜日(5G)夜に行われているロールコールの実施局JA1CUY菱木さんが並行して送信している24GHz帯の電波は湿度の高い夏から秋にかけてはFMモードはおろかビートさえ確認できなかった。ところが晩秋から寒い冬の季節にはこのKバンドの信号はよく聴こえるようになった。湿度が低く寒い日には驚くような強度で信号を受信できる。見通しの直接波伝播しか交信はできないものと思っていたら、あにはからんや、丹沢による山岳反射、横浜ランドマークタワーによる反射および回折も利用できることが確認できた。だだし、アンテナのビームパターンがシャープになるのでその方位合わせは入念にやる必要がある。
24GHz帯トランスバータ・キットの製作
このキットは局発部もワンボード・トランスバーター部も調整済みであるのでアンテナ側の送受切り替え同軸スイッチの組込みをすれば24GHz帯トランスバーターの出来上がりである。次の写真はキットの内部である。
まず確認のために基板からの送信出力を測ってみた。IF入力コネクタから1280MHzの信号を入力したときトランスバーターからは24.020GHzに周波数変換された出力が出てくる。親機TH−59を送信したとき24GHzでは6mW弱の出力が得られた。
同軸スイッチは巣鴨フリーマーケットでゲットしたもの(型名 yasuda CX-230SMH-F12
機能 12V駆動、SPDT(1回路2接点)、〜18GHz)を使用した。仕様では18GHzまでとなっているがアマチュア的には問題はなさそうである。
トランスバーターを防水ボックスに収納
ケースはプラスチック防水ボックスTAKACHI GA-19-27-10を利用した。アンテナへの接続部はエアコン配管用パテを用いて防水処理した。
このパラボラアンテナはプロフェッショナルユースのものらしく周波数も24GHz帯ではないようだ。一次放射器は円錐形ホーンである。導波管はWR−34であったが給電側のWR−42に合うようヤスリで削った。副反射鏡はレドーム中心部にありプラスチック整形した反射面に電磁波反射塗料が塗布してある。
レドーム型パラボラアンテナ
このアンテナの性能を調べるためJH1UGF槇岡さんにお願いしてアドバイス講習会のときにビームパターンとゲインを測定していただいた。ローターの回転速度とスペアナの掃引速度を同期させてビームパターンを求めるという素晴らしいアイディアである。JF1TPR熊野谿さんにもお手伝いいただいた。
つぎの図は槇岡さんがスペアナ表示をプロッタで描画したものから計算してくださった。この線図よりビームパターンとともに−3dB半値角を求めることでパラボラアンテナの利得を求めることができる。直径30cmのパラボラで36dBのゲインとは驚きである。
パワーアンプユニット
移動運用にはキットのままで十分であるが固定設備としてはいまひとつものたりないのでパワーアンプユニットを組み込んでみた。これもマキ電機からキットとして発売されているもので、最終段のトランジスタには手持ちの富士通GaAsFET、FHX35LGを半田付けした。しかしこの周波数帯になるとスタブの調整はなかなか一筋縄ではうまくいかず、川崎のマキ電機で毎月開催されているSHF技術アドバイス講習会に持ち込み、槇岡社長の”神の手”で調整していただいた結果、パワー計はなんと60mWもの出力を示した
同軸スイッチは26.5GHzまで使えるというラッチタイプの12V用DowKey Microwave 401-420832Aを組み込んだ。
反射や回折による伝播は思わぬ方向からやってくる。また微弱な電波を探し当てたとしてもビーム方向合わせが真に微妙でスリリングである。さらに仰角・俯角の影響も効いてくる。ビーム合わせにもテクニックが必要なようだ。交信チャレンジ局は相互で連絡を取りあいながら調整することになる。連絡方法としては別の周波数帯、最近ではインターネットのYahooチャット(各局ともIDはコールサインを登録している場合が多い)が便利である。こちらの経路で自局発射電波のビート音を戻してもらい、これを聞きながら自分のアンテナビーム方向をビート音が強く聴こえるよう微調整することで思いのほか信号強度を上げられることがある。これまではこのようなテクニックを使ったことがないというよりも必要がなかったので24Gをはじめてからは新鮮な発見が多く、真に楽しい周波数帯だ。1エリアのOM各局には夜な夜なお相手とご指導をいただきました。稚拙なオペレーションにもかかわらず粘り強くアドバイスしてくださった先達各位に感謝いたします。
UPDATE:
 2005/02/03, 2005/03/29
早速、移動運用へ
24GHz帯初交信は横浜ランドマークタワー展望レストランへ移動中のJH1UGF槇岡さんとの交信であった。当局はベランダに三脚を立て、24GHzトランスバーターセットとスリット放射器を付けた25cmパラボラを載せた移動スタイルである。1200MHzで連絡を取りながらお互いにビーム合わせをおこなった。見通し24kmのためかあっけなくビームは合い、双方向フルスケールの信号強度であった。

つぎに、第3回全国マイクロ波帯大移動運用会 [2003年10月4日08:00〜5日16:00] に参加するため7N1JVW藤田さんと丹沢大山の中腹にある見晴台(標高770m)へのぼった。当局は24GHzトランスバーターセットのほか5600MHz帯トランスバーターUTV-5600BUPをもっていった。

まずは5GでCQ呼出をして、24GにQRVできる局に相手をお願いするという方法で24GHz帯の交信をすすめた。まず横浜JA1CYC下村さんに呼んでいただいた。つづいて栃木県那須郡移動中のJA1JBF/1と交信を試みたが信号を捕らえることができなかった。習志野市のJA1CUY菱木さんとはFSで交信できた。同じビーム方向の松戸市へ移動しておられたJA8GY/1川村さんとも5Gで連絡を取りながらビームを探ったが信号が見つからなかった。座間市のJS1UVH大矢さんは急遽ベランダに24Gをセットしてくださり恐縮した。距離も近いためかアンテナの向きに関係なくFSであった。なお5600MHzのアンテナは写真のようにデュアルモードホーンのみで多数の局と交信できた。ただ、ホーンだけではビームがブロードで24Gビーム合わせの道標にできなかったのは反省点であった。
最近は毎週のロールコール時に並行して行われている24GHzの交信電波を受信できる機会が増えてきている。10GHzならびに5GHzのセンター局であるJA1CUY局の信号は横浜ランドマークタワーの方向から強く入感しており、FMモードで55〜59である。横浜ランドマークタワーはJA1CUY局と当局との中間、直線上にあるがカシミールの図からわかるように見通しではない。幸いこの両局からランドマークタワーが見通せることから電波の回折現象により伝播しているものと思われる。2400MHzロールコール、センター局JI1CBS局からもロールコール時には24.020GHzのビーコン電波が発射されているので受信にチャレンジしてみたい。ランドマークタワーの反射ルートが期待できそうだ。さらにJH1UGF槇岡さんも24.019GHzでビーコン電波を送信しておられるのでこれについてもルートを探してみよう。
伝播経路
BSオフセットパラボラを24GHzで使う!