4GHz簡易スペアナで24GHzを観る


簡易スペアナキットGigaStはパソコンで簡便にスペクトルを観察できるので大変重宝している。トラッキングジェネレータ機能を使って増幅器のゲイン特性や、ひと工夫するとアンテナの反射係数(VSWR)の測定も可能である。

当局が使用中のGigaSt Ver.2は最高測定可能周波数が4GHzである。2.4GHz帯まではこれまでに大いに活用してきたが、何とか5.6GHz帯や10.1GHz帯など、もう少し上の周波数まで観たいという欲がでてきた。その方法としては外部ミキサーと局発を用意して周波数変換すれば可能なはずである。

しかしこれも最初から作るのは結構骨が折れそうである。そこで友人のJA9SNG平間OMに相談したところ、下の写真のようなジャンク組み合わせの5.6GHz帯測定系を構成してくれた。以下の測定系で5.6GHz帯の信号スペクトルを必要十分なレベルで観測することができた。
■5GHz帯測定系
                      LO (4,480MHz)
                         ↓
                       Isolator
                         ↓
   5G-TRV(5,760MHz)+ATT(30dB) → Mixer → (1,280MHz)ATT(10dB)->GigaST
さらに、平間OMは10.1GHz帯観測用に改造BSコンバーターを準備してくれた。これは誘電体発振器(DRO)の位置を移動させて周波数を変更してくれたらしい。1,045MHz付近でヘテロダインされたスペクトルが観察されるはずとのこと。そのとき10.1GHz帯の信号源を用意できなかったので,後日、毎月マキ電機川崎工場で開催されているSHF技術アドバイス講習会に参加して測定してもらうことにした。
当日は,社長の槇岡さん(JH1UGF)に手伝ってもらいながら工場の一画で測定実験をさせてもらった。結果、10,240MHzの信号が変換されて予定通りの周波数でのスペクトルとなって確かに表示されている。これはなかなかいいね〜と,槇岡さんも興味を持たれたようだ。
_/ 無改造BSコンバーターのスペアナ用周波数コンバーター化 _/
そこで槇岡さんはBSパラボラディッシュ(これは商品になったらしい)からはずしてダンボール箱に投げ込んであったたくさんのBSコンバーター(使い道はまだ決まってなかったようだ)のなかからひとつ取り出してきて,これも試してみようということになった。

BSコンバーターは10,680MHzのDROを使用しているので以下の計算式で周波数変換ができるはずである。BSコンバーターはゲインが50dB近くもある高感度であるのでもしかすると10G帯以外にも使えるかもしれないとのこと。さっそくチャレンジ。
■測定系

  信号源(5G,10G,24G) → transducer -> >- BS converter → ATT(-30dB) → GigaSt


(1) |10,240MHz - 10,680MHz(DRO) | = 440MHz
まずは10,240MHzから実験をはじめた。かなり高感度なようだ。440MHzあたりできれいなスペクトルが観測される。図のようにスペクトル両サイドのノイズレベルも極めて低レベルである。これなら無改造のBSコンバーターそのままで10GHz帯のスペクトルが十分観察できる。
(2) |5,760MHzx2 - 10,680MHz(DRO) | = 840MHz
これに味をしめて5,760MHzを試してみる。計算どおり840MHzでばっちり見える。数mはなれた場所から5Gトランスバーターに終端抵抗を接続して送信(2W出力)したときでも送信波のスペクトルがかなりのレベルで確認できた。
(3) |24,020MHz - 10,680MHz(DRO)x2| = 2,660MHz
これならまだいけるかもしれないと、Kバンドの24,020MHzにトライ!次の写真のように24GHzパイロット信号を受信してみる。オッ、見えたぞ!いや〜驚きました。
これはすばらしい!ゴミになりかねないBSコンバーターがここまでおいしく利用できるとは,まさにお宝になってしまった。これを使えば測定可能最高周波数の低いスペアナでもSHF帯のスペクトルが観測できるようになり,マイクロ波帯無線機器の製作・調整に活用できそうだ。


NEXT STEP
以上はスペアナ用アダプタとしての利用であったが、次にはこれとは逆に低い周波数を高い周波数に変換する方法はないものか・・・。スイープ機能をもったGigaStのSG信号を高い周波数に変換できればまたさらに利用の範囲が拡大されるのだが・・・
この実験に際しては,平間先生ならびに槇岡社長には多大なご指導、ご協力をいただきました。ここに記して謝意を表します。
                                  JN1AYV  岡本嗣男
UPDATE:
 2002/11/22