ノイズ・ジェネレータ


AO−40用受信コンバータとして標準改造(IF部のLとCを外す方法)ドレイークコンバーターを利用する場合、2.4GHzのローノイズプリアンプ(LNA)が必須といわれている。そこでこの2.4GHz帯プリアンプのNFを調整するためにノイズジェネレータを試作した。
これまではプリアンプを接続して受信機からきこえるノイズの音が最大になるように調整してすませていたがノイズがふえて必ずしも微弱信号の了解度が上がらないということも少なくなかった。すなわちゲインを最大に調整するパワーマッチではノイズ増幅器と化し、了解度が低下して逆効果となる場合がある。

プリアンプの本来の目的は、そのままではきこえなかった信号や微弱で了解度のよくない信号を浮かび上がらせることであるからNFの良い増幅器によりSN比を改善する必要がある。通常NF値を最適調整するNFマッチとゲイン最大のパワーマッチの調整点はずれている。

ノイズジェネレータの出力をプリアンプに入力し、ノイズ源をON/OFFしたときのSSB受信機AF出力の差が最大になるようにプリアンプを調整することでNFマッチとなる。NF値の絶対値測定は無理としても、SN比最良に調整することができるのでプリアンプ調整には必須のアイテムである。
製作したノイズジェネレータの回路はCQ出版社「アマチュアのV・UHF技術」を参考に上の図のように構成した。NF調整にフリーソフトNFBENCH(JE2EVX作)を利用するため、ノイズ発生の断続はコンピュータのシリアルポートを利用して行った。電源としてPCからのシリアルRTS信号を整流して供給し、ノイズ発生源のON/OFFを行った。さらに、電池を内蔵してスイッチでノイズを断続できるようにしておくと応用範囲が広がる。

ノイズ源にはPN接合に逆電圧をかけたときの漏れ電流により発生する雑音を利用する。そのときの電流の量によりノイズレベルが変化する。ノイズ発生用のダイオードとしては以下のものを試してみた。逆電流Irは1〜10mA程度流す必要がありそうである。インピーダンス整合用抵抗は51Ωのチップ抵抗を使った。

          実験素子               測定結果
■1SS97(ショットキダイオード)   逆電圧Vrが大きく不可
■1SS99(ショットキダイオード)   1.2GHz帯まで可
■RD5(5Vツェナーダイオード)   430MHz帯までは可
■2SC3586(Ft*10GHz RF Tr.)   2.4GHz帯まで可、それ以上は未確認

ノイズレベルは可変抵抗器VRで調整できる。VRを回し切った状態で、ノイズ・ジェネレータの電源をON/OFFしたとき、SSB受信機低周波出力の雑音電圧が3dB 変化する周波数までがノイズ発生用のダイオードとして利用可能な上限と考えてよさそうである。
■ NF調整方法

1 ノイズジェネレータの出力端子とLNAの入力端子をつなぐ
2 LNA出力を受信機のアンテナ端子に接続
3 受信機ヘッドフォン(低周波出力)に電圧計をつなぐ
4 ノイズジェネレータでノイズを発生させる
5 受信機をSSBモードにセットし、Sメーターがわずかに振れる程度に
  ノイズレベルをあわせる
6 電圧計の振れが最大になるようLNAを調整する(パワーマッチ)
7 ノイズ源をON・OFFしたときの電圧計読みの差が最大になるようLNA
  を微調整する(NFマッチ)

以上の調整によりLNAの発生するノイズが最少となり、NF値が最良点に調整されたことになる。
なお、このNFBENCHは数年前にNIFTYアマチュア無線フォーラムのプログラムライブラリーからダウンロードしたものであるが、現在は同ライブラリーから削除されており入手できないようである。
UPDATE:
  2002/09/08,  2005/02/17
プリアンプはこのソフトがなくてもノイズジェネレータで簡単に調整できる。上記回路の電源部に電池006Pを追加し、スイッチでオン・オフできるようにする。プリアンプへの入力としてノイズ源をつなぎ、受信機スピーカー端子出力電圧をテスターで測ってノイズオン・オフ時の差が最大になるようにプリアンプを調整すればよい。
■ 2400MHz帯LNAのゲイン−周波数特性およびNF調整
AO-40用受信コンバータとして標準改造(IF部のLとCを外す方法)ドレークコンバータを利用する場合、2.4GHzのローノイズプリアンプ(LNA)が必須といわれている。そこで写真のようなLNAを製作した。2400MHz帯2段増幅プリアンプキット(マキ電機)の後段トランジスタをはずし初段HEMTのNE3219S01のみを使用した。GigaStのTG機能を使って測定したゲイン周波数特性を図に示す。Sバンド2401MHzのゲインが20dBであることがわかりる。
NF調整用プログラムNFBENCHを使った調整では、ヘッドフォン出力をサウンドカードLine−INに入力することで、パソコンのモニター画面を見ながら矩形波の高さが最大になるように調整すればNFは最小となる。
 広帯域ノイズジェネレータ
このノイズジェネレータが5600MHzでも使用可能かマキ電機トランスバータUTV−5600BUPの受信信号入力としてしらべた。上記と同様にNFBENCHでためしてみたところノイズレベルをいっぱいに上げてもつぎの図のようにノイズ成分が少なくNFの調整には不十分であった。
そこで7L1WQG荒井さんの設計による広帯域ノイズジェネレータを利用してみた。このノイズジェネレータはノイズレベルだけでなく周波数可変のAM変調機能を備えているので音を聞きながら調整することもできる優れものである。ウェブにくわしい説明がある。欲をいえば、1秒程度の周期でノイズ源を自動でON-OFFできる機能があればAMモードが受信できない場合でも有効活用できると思う。

ここでもUTV−5600BUPとIF用親機FT−736MXを使ってNFBENCHによりノイズレベルを確認した。ただし、FT−736MXにはAMモードが装備されていないのでノイズの発生・停止には電源のON−OFFによった。また、トランスバータにより周波数変換するシステムでは受信総合変換利得が大きくなるため親機のAGC機能を停止する必要がある。
測定の結果はつぎの図に示すように、5600MHz帯においてもレベルの高いノイズ成分が得られた。本図はノイズジェネレータの出力ボリュームを最小に設定したときの結果である。このノイズ発生器を利用すれば5GHz帯のプリアンプやトランスバータの受信系統のNF最適調整が可能である。

最近のオールモード機ではFT-817がUHF帯でもAMモードをもっており430MHzをIF周波数に選べば変調音を聞きながら受信部の調整ができるので便利である。
 FT−736MXのAGC回路改造
上述のようにトランスバータやプリアンプを受信機に接続すると総合変換利得が大きくなって受信機のAGC機能が働き精確なNF調整ができなくなる。通常、トランシーバのAGCをOFFにすることはできない。そこでFT−736MXのAGC回路を改造することにした。改造ポイントはつぎのとおりで、JA6SNK平川さんに教えてもらった。

RX UNITのQ38のベース、Q54のコレクタ、D32のカソードがつながっている所をアースに落とす。具体的にはD32のカソードにリード線を半田付けして外部に引き出しスイッチでアースに落とせるようにした。。D32は垂直に取り付けている小さな2枚のサブ基板の間にある。RX UNITは、パネル面から見て、ケースの横に垂直に取り付けられている。