暁の星

 

 

 

 

          誰も僕のことなんか分かってくれないと

          誰も僕の努力なんか知らないくせにと

          ベッドの柔らかさに埋もれていくときは

          僕を一番分かっていないのはこの僕なんだ。

 

          見えない努力をしていても結果が出なければ僕の居場所は陰の中、

          それがプロというものだった。

 

          始まりと終わりは表裏一体

          始まったら終わるし、終わったら始まる。

          時にこの言葉は有りがちだけど、ネガティブな時はそう言ってもいいよね?

 

 

          君と始めたこの恋は特別だと信じていたい。

          君は僕の一番星さ。お互いをいつも見ていられる。

          努力したか、してないかは僕らが知っていれば良い。

          良く頑張ったと君が笑ってくれるから泣けるのさ。

 

          僕が君に見蕩れるから

          恥ずかしそうに君はより一層輝いてくれる。

          そしてまた僕は歩いて行ける。

 

          君は僕の暁の星だね。

 

 

 

       「理架」

       「なぁに?薫」

       「俺、好きだから。理架のこと」

 

       ちょっと驚いたように目を丸くして俺の顔を覗き込む、そしてケラケラと笑いだす。

 

       「やあだ、なぁに?いきなり」

 

       そんなことわかってるわよ、って顔して俺の腕に細い腕が絡みつく。

       甘えたような仕草がたまらなく愛しい。頼りない俺と手を繋いでいてくれる理架。

       二人並んで歩く道がずっと続けばいいと寄り添うたび強く思う。

 

 

 

       「やめないでね・・・」

       「何を?」

       「あたしも、好きだから。

        演技してる薫が。

        お芝居してるときの薫が

        だから」

       「ばぁか。そこ心配するとこじゃないって言ってるだろ?

        やめたりするかよ。大丈夫、俺のことより理架は今、留学のことだけ考えてろよ」

 

       「うん、ごめんね・・・」

       思い出したように寂しげな笑顔を俺に向けてそうつぶやいた。

 

 

       ダンスの才能を認められて、理架に留学の話が持ち上がったのはもう2ヶ月も前のこと。

       仲間は皆してその留学を喜んでくれた。もちろん俺も嬉しかった。

       理架の才能と努力を目の当たりにして、その結果に文句なんてあるわけない。俺が一番そのことを

       分かってるつもりだ。

       二人過ごしてきた日々が本当なら、信じていられる。

       理架を、俺自身も。だから背中を押して送り出す。

 

       寂しいけれど

 

 

       「たった2年だもんな」

       「うん」

       「帰ってくる頃には俺すげーメジャーになってるから」

       「ふふ・・・負けらんないね」

 

 

       俺と理架。

       出逢ってからもう何度目の秋を迎えるだろう。

       目指す夢はそれぞれ違うけど、努力した者だけが認められる世界っていうのは

       共通していて、お互いをとても理解できた。

       未来はどうなるのかわからないけれど、

 

       「・・・待ってて・・・くれる?」

 

 

 

 

          始まりと終わりは表裏一体

          始まったら終わるし、終わったら始まる。

          だけど君だけは離さないよ

          そう思うときはそう言ってもいいよね。

 

 

 

 

 

       まだ薄暗い朝の駐車場、

       繋いでた手を不意に引き寄せて

       理架の細い肩に顔を埋めるようにして強く抱きしめた。

 

 

       「俺、離さないから。理架のこと」

 

 

 

 

       「・・・そんなに強くしたら・・・薫・・・?

        ねえ・・・イタイってば・・・」

 

 

 

 

 

 

       優しく響く理架の言葉は少しだけかすれてて

       俺の視界を涙でぼやかした。

 

 

 

       旅立ちの日、夜明け前。

       誓うようにまだかすかに光る星を見上げた。










song by MISAKO ODANI




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