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身体が重い・・・。
やっぱり夕べ薬飲んで寝ればよかったかなあ・・・。
んんーー・・・とベッドの中で鈍く伸びをしてゆっくりと起き上がる。
覚醒しないままの頭、何か目とか回ってるかも?焦点あってないよぉ。
やばいなあ、今日は稽古前稽古をお願いしてるってのに
昨日ちょっと寒気してたのに、油断して薄着のままだったのがいけなかったなあ・・・
もぉ・・・。
洗面台の鏡に映るむくんだ顔。サイアクだ。
外は雨が降っているみたい。何だか気分も重い感じ。
それでも時間は待ってくれない。
簡単に身支度を済ませ、バナナを無理矢理胃に入れて風邪薬を飲んで出掛ける。
「急に仕事が入ったからリカに頼んどいた。しっかり見てもらいなね」と
マミさんに言われたのが昨日の夜の電話でだった。
リカさん・・・。
同じ組になって、舞台での存在のすごさを目の当たりにして、すごい衝撃を受けた人。
カリスマ性があるってきっとリカさんのような人のことを言うんだなと思った。
近くで見ててわかったのは自分にすごく厳しい人だということ。
あと、舞台とオフのギャップにも驚かされた。
そんなの全部ひっくるめて気になる存在。どうしても惹きつけられてしまう。目を離せなくなる。
その厳しい感性であたしを見て何て言われるだろうか・・・。
なんか身構えちゃうよ・・・。
もちろんいつも真剣にあたしの全力を出してるつもりだけど、
が、がんばんないと・・・。
雨音が外の雑踏をかき消して、いつもよりしんとした4階の稽古場。
このフロアにはあまり人が来ない。集中出来る場所を探して見つけた穴場な教室。
ちょっとだけおぼつかない足取りで階段を昇り角を曲がって教室へ入る。
約束の時間までまだ少し時間がある。
壁に背をついて床に座り込む。台本をめくり、セリフを読んではみるけれど
何だが頭ん中がほわほわして目で追う文字は同じ行ばかり繰り返しなぞってる。
変なの、先に進まない。
瞼が、重い・・・。
・・・・・・・・・・・。
ふわふわの感覚の中で、
やさしい匂いが鼻をくすぐり、ひんやりとした何かが額に触れた。