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闇練にはもってこい?
誰も4階まではなかなか昇ってこないってね。
マミちゃんの頼みは断れない。
私で役に立つかどうかはわからないけれど、
舞台がよりよくなるのであれば、若手の稽古に付き合ってみるのも上級生のお約束。
私、そんなにいじわるでもめんどくさがりでもないしね。
それにタニの成長は見てて面白い。
いつも思いもかけない行動で、私の心を躍らせるタニ。
直接的な接点とかはあまりない。
成長著しい下級生、期待の新人、色んな話をまわりから聞くけれど、
そんなくくりなしに私の中でかなり気になる存在だったりしてる。
未知数の魅力。
そう、
それってすごく刺激的。
こころなしかうきうきしながら
軽い足取りで角を曲がり、指定の教室のドアを開く。
うーん、どうしたもんだろね。
眠り姫がひとり。
壁にもたれて夢の中?
しゃがみこんで顔を覗き込んでみる。
おいおい、安らかな寝息とか幸せそうにたててんじゃないわよ。
口とかちょっと開いてるんですけど。
呼び出しといて居眠りなんていい度胸じゃないの。
それにしても睫長いなあ・・・。
・・・やわらかそうな唇だなあ・・・。
悪戯心か好奇心か、
触れてみたくなった。
うーん、まずいかなあ・・・。
でも、ちょっとだけ
そっと・・・ね・・・。
って、ちょっと、顔、熱くない?
顔寄せてみて気付くなんて、
よく見なくても顔赤いじゃないの。
慌てて額に手をあててみる。やっぱり熱があるみたい。
「ん・・・」
「タニ。」
「ん・・・・っあ、リカさんだぁ・・・」
・・・完っ全に、寝ぼけてる。