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リカさんだー・・・
至近距離でみてもキレイだなー・・・
・・・あれぇ?
何でリカさんが・・・?
「・・・あっ!! す、すみませんっ・・・」
ばかばかっ、なに寝ぼけてるのあたしっ。
慌てて立とうとしたけど足に力が入らない。変な姿勢でよろめくあたしを
リカさんがそっと受け止めてくれた。
「タニ、あんた熱あるんじゃない?」
「えっ?」
「熱いよ」
抱き寄せられたまま、おでことおでこをくっつけられてリカさんとの体温差を感じる。
火照る身体、どうしようドキドキがすごい。熱上がってきたのかなあ。
あんまり飲み慣れない薬のせいでほわほわなんだと思ってたんだけど。
「風邪?薬とか飲んだの?」
「一応・・・朝飲んできたんですけど・・・」
「そう。じゃあ、しばらく身体休めてたほうがいいんじゃない?」
「いえっ、大丈夫です!」
「ムリしないの。時間、まだあるから。どうせ出るんでしょ?この後の稽古。
まあ、通しまでいってないし、今のうちに治しておかないと皆に迷惑だよ」
「・・・すみま せん・・・」
「私は気にしなくていいから」
抱きかかえられたまま動けない。
情けなくて、恥ずかしくて、頭ん中ぐるぐるで、半分泣きそうな顔してるかも。
よろよろのあたしを長椅子に座らせて、
着てたジャージの上着を脱いであたしの肩にかけて、
バッグから出した大きめのタオルであたしをくるんでくれた。
「寒くしちゃダメよ」
とろけるような低く優しい声。
夢見るみたいな香りに包まれて、耳に響くのはあたしの心臓の音だけ。
雨音ももう遠くにしか聞こえない。
ウトウトしだしたあたしの頭。眠りの波が寄せては返すように夢と現実があやふやになってきた。
少し離れた椅子に座り何通かの手紙を取り出して読み始めたリカさんを
閉じかけた瞼の隙間から、ただぼんやりと眺めていた。
ああ、そうだ、リカさんにこんな近くにいてもらったら・・・
うつっちゃたりしたらそれこそ大変じゃない・・・。
「一緒にいたら うつっちゃうかも リカさん・・・」
「私がいたら、気になって眠れないか」
「そんなことは ないです けど・・・」
にこ と、照れたように笑ってリカさんが言った。
「病気の時って、一人だと心細いんじゃない・・・?」
その言葉に、心がじぃんと熱くなった。
そのまま、ここにいてくれるんだ。
そっか 嬉しいな だけど いいのかな・・・。
不思議な空間。
時間がゆっくりと流れているようで、
リカさんが優しくあたしを見つめてくれてて、
迷惑かけていいの?
甘えてもいいの?
どうしよう
胸のドキドキが
止まらない。