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      優しい匂いと指にからむ温もりを感じて目が覚めた。

 

      「あ、リカさんだ・・・おかえりなさい・・・」

      大きな瞳があたしを優しく見つめてる。微笑む顔が近づいて唇が柔らかく重なる。

      「白雪姫か眠り姫か、

       私のお姫様は一回くらいのキスじゃあ足りないのかしら?」

 

      絡められてる指にもチュッと口付けされてくすくすと笑いあう。

      「あたしが寝てる間にもキスしたの?」

      「ん」

      上半身を起こしリカさんの手をひいてソファーに二人並んで座る。

      ずり落ちそうになる毛布に気付いて二人同時に手を伸ばしてつかもうとする。

      その行動に思わず顔を見合わせて笑ってしまう。

      「ありがと、リカさん。毛布」

 

      甘えるようにコテン、とリカさんの肩に頭を乗せて目を閉じた。

      寝起きでくしゃくしゃになってるあたしの髪を、すくように撫でるリカさんの手に

      うっとりとしながら身体を擦りあわせてみる。

 

      「前にもこんなことあったね」

      「そう?」

      「うん、えっとね、たぶん

       初めてリカさんとキスしたとき、だったと・・・思う」

 

      ふふっ、と何かを思い出したようにリカさんが笑った。

 

      「覚えてる?お稽古付き合ってもらうはずだったのに、

       あたし具合悪くて、結局その時間ずーっと寝ちゃってた時のこと」

      「うん」

      「リカさん、いつのまにかあたしの隣にいて

       あたしが起きるまでずーっと肩貸してくれてたの」

      「そうね」

      「すっごい迷惑かけちゃって、うつったりしたら大変だーなんて思ったんだけど

       ずっと側にいてくれて、すっごい嬉しかった」

      「ふうん」

      「どうしてあの時、ずっと側にいてくれたの?」

      「・・・寝言で言ってたから」

      「うそぉ」

      「リカさん、ここにいて、ってね」

      「絶対言ってないー」

      「リカさん大好き、だったかな」

      「やだ、もぉ」

      すぐ上にあるリカさんの顔を覗き込むと、真剣な瞳であたしを見ていた。

 

      「あの時のキスは、間違いじゃなかった」

 

      髪を撫でていた手が首の後ろに下りて静かに引き寄せられる。

      そっと唇が重なる。優しく掠めるようなキス。

      あの時とおんなじ。すごくドキドキしてるのもおんなじ。

      何も言わず、何も訊かず、でもきっとふたり同じ気持ちだった。

      だからキスした。

 

 

      ゆっくりと唇が離れ、どちらともなくまた寄せる。

      想いが溢れるぼどの深く熱いキスで頭がしびれそうになる。

 

      全部全部受けとめて。

 

 

 

 

 

      あたしを包んでくれるひと。

















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