Side-K
毎日のように顔を合わせてて
あたりまえのようにいつも側にいた
年上の恋人は
言葉少なく 慣れた仕種でわたしを優しく抱きしめてくれる。
静かな温もり、それだけじゃとても不安で
100回の「キス」よりも ただ1度の「スキ」を欲しがってた。
今より少し若い頃のあたし。
贅沢なあたし。
あたしがリカさんに合わせようと 計画したことが裏目に出てしまって
リカさんもあたしのためにって 考えてくれてたのに
二人して行き違い、すれ違い、
あたしは今 リカさんのいない東京にいる。
今のあたしは
100回の「スキ」じゃなくて ただ1度の「キス」が欲しい。
欲しい 欲しい 欲しい
逢いたい 逢いたい 逢いたい
目に映る街並も 色褪せて見えるほど
この街にリカさんが居ないという この時がこんなにもつまらない。
いつだって側にいないけど
こんな時くらい
なんで上手くいかないかなって 悲しくなる。
離れて初めて聞いた
今じゃ電話のたび囁いてくれる 「スキ」の言葉。
嬉しいけれど、
欲しいのはそれじゃない。
なんて いいかげん我侭すぎて
自分で自分にあきれてる。
ウンザリ気分のままショップのハシゴなんかしても
全然楽しくなくて
もう帰ろうかなと 回れ右したそのとき
ケータイが鳴った。
向こうにひとりでいるのが退屈だから帰って来たなんて
そんな急に呼び出したってすぐ迎えには行けないよ!
「いつも忙しそうに言ってるから、向こうに行くならと思って
折角アンタと逢う時間作ったっていうのに、いないんだもん。
ホテル一泊分キャンセルしてきたんだからね。
だから早く来て。」
ホント勝手なんだからっ。
「え?そんなとこにいるの?
しょーがないな、じゃあ先に部屋で待っててよ」
相変わらずゴーインなんだね。リカさん。
「いいわよ?勝手にあがってても。
あーでも今の時間ならわたしの方が早いかな」
こっちに来てる時のあたしの都合なんておかまいなしなんだから。
「ねえ、ちょっと、聞いてるの?」
「あたしがっ」
「な、なによ」
「あたしがリカさんより先に着いたら、キス100回!だからね!」
「はあ?なによそれ〜」
「じゃあ後でね!リカさん」
大通りに出てタクシーに飛び乗る。
少しあがった息をシートにもたれながら整える。
でもドキドキはそのままで
バックミラーに映る顔が どうしようもなくしまりなくて。
キス100回なんて
恥ずかしい バカみたい
だけどそんなのどーでもいい
あたしだけじゃなくてリカさんも
どこまでも欲張りになってゆくのはもうしょうがないんだもん。
我侭放題のあたしたち。
それでいいの。