Side-K


 

          「リカさん、リカさん」

          「んー・・・」


          ゆさゆさと薄い肩を揺らして顔を覗き込む。

          寝ぼけ眼なリカさんは、首が座ってない赤ちゃんのように

          ぐらぐらと頭を揺らしながらあたしの胸に顔を埋める。



          「ちょーっと、もう。

           お風呂お湯たまったから先に入っちゃってくださいよう」

          「んー、眠いー、きもちいいー・・・」

          いつのまにかリカさんの腕があたしの腰にまわってる。




          「どさくさにまぎれて気持ち良がんないでくださいっ」

          「んー、もー、いーじゃないのー

           タニは私の抱き枕なんだもーん」

          「はいはい。だから寝ちゃう前にお・風・呂!」

          しがみついて離れない身体をよっこいせと起こす。

          とろんとした瞳であたしを見上げてるリカさん。





          「バスルームまで連れてってよ」









          リカさんはあたしと居る時、すごく甘えモードになる。

          皆の前では「甘えるんじゃないヨ!」なーんて言って

          全然相手にしてくれないってのにさ。

          別にいいけど。そんなゴロゴロしてる姿見せらんないし。

          それなのに二人っきりになったとたん、あたしにすっごく甘えてくる。

          そんなリカさんはあまりにも無防備で、

          あまりにも可愛くて。

          ついついどんな言う事も聞いてしまいたくなる。





          うーん、これが惚れた弱味っていうのかな?






          「しょーがないなあ、もお」



          腰にある手を首に巻き直させて

          よっとかけ声かけてリカさんを抱き上げる。



          「なっ」

          「あ、やっぱ軽〜い」

          「だっ、ちょっと待って、何?やだ、恥ずかしいじゃないっ

           わかった、おろしてっ自分で歩くーーーっ」



          ジタバタ抵抗するリカさんをきゅうっと抱き寄せる。

          「たまにはいいでしょ、お姫様抱っこされるのも」



          「ばか」




          照れて赤くなった顔をあたしの首に埋めながらぎゅっとしがみついてくる

          あたしの腕の中にすっぽり収まってる可愛いリカさん。



          「姫、湯あみのお手伝いを致しましょうか?」

          「いつまでふざけてんのヨ!」

          ポカリとグーで頭を小突かれ、ちょっと油断したスキに

          あたしの腕からひらりと降りちゃった。




          逃げるようにバスルームへ消える姿を目で追いながら、ちぇっとか思ってたら

          一度閉じたドアがゆっくりと開いて

          こっちを覗くリカさんの顔が

          さっきと変わってすいぶんと挑発的。




          「・・・一緒に 入りたいの?」










          ・・・素直じゃないったら。












          狭いバスタブにふたり。

          夜中にきゃあきゃあはしゃぎ合って

          湯気と泡と一緒にリカさんを包み込む。



          のぼせちゃってもいいよね?




          お風呂に?

          それとも


          素直じゃない甘えんぼのあなたに?











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