奇麗になりたい   

 - カオル -  







『最近、キレイになったんじゃない?』

「えっ・・・!」

 

イキナリのその言葉に心臓が飛び上がりそうになる。

 

『本、載ってたの。見た』

「えっ、どれ?どの本ですか?」

『んー、なんだったっけかなあ?忘れちゃった』

「・・・ホントにそう思います?」

『うん』

「嬉しいっ」

 

 

だってだって、がんばってるもん。

 

 

 

 

 

男役やってる女のあたしたち。

 

どっちかに偏り気味だったり、そうでもなかったり。

そんなのもひっくるめてオンオフの切り替えをしてる。

在団中、リカさんはすっごくナチュラルにそれをやってた。

ううん、

もともとリカさんはすっごく可愛くって、

すっごく女らしくって、

すっごく 

キレイだったんだから。

 

辞めてから、束縛するものがなくなった今、

リカさんは以前に増して可愛いオンナになっちゃって、

それがすごくキレイで 
            
すごく眩しくって 

 

 

何だか羨ましくって 

 

ちょっとだけ寂しくって。

 

 

寂しいって顔、気付かれないように隠してみた。

 

 

「お化粧、ちょっとだけ変えてみたんです」

『ふうん。すごくいいよ』

「ありがとうございます」

『何よ、あらたまって〜』

「だって、あたしの目標は「目指せ!リカさん」なんだもん」

『ひっくい目標』

「そんなことないー」

 

 

笑う声が優しく震えて耳に伝わってくる。

声だっていつも聴いてた声とおんなじだけど、すごく甘く聴こえる。

変わらないのに変わってる。

 

 

嬉しいけれど、寂しくって 

もどかしいけど、満たされて 

そんな不思議な感覚。

 

 

 

「今度、リカさんち遊びに行ってもいい?」

『え?いつ?』

「次のお稽古始まる前。大阪帰る前がいい」

『ええ〜、もう時間ないじゃん。

すっごい散らかってるよ。まだダンボール全部片付けてないんだもん』

「あたし全然かまわないけど・・・ダメ?」

『うーん、そおねえ・・・』

「リカさんの新しい部屋、見たい」

『ちゃんとキレイに整った部屋で、招待したいから・・・ 

 ね?今回はパス。 じゃダメ?』

「・・・じゃあ、今回はリカさんち行くのあきらめる・・・ 

けど・・・でも・・・逢いたい・・・」

『逢おうよ』

「えっ?」

『明日。公演終わって空いてるなら 

 いつものところで待ってるからって 

 今日それ言おうと思って電話したんだけど、

 都合悪い?』

「全然っ!っていうかリカさんとデート出来るなら 

用事全部キャンセルするっ」

『デートじゃないってばー』

「二人で逢えるんならデートっていうの」

『キレイにしてきてね』

「うっ・・・リカさんにつりあうよう、努力します」

『ははっ。期待してる。 

 じゃあ、明日ね』

「うん、明日 また」

 

 

 

 

 

 

変わらないふたり。

 

でも少しだけ成長して 

少しずつ進化してる 

 

 

 

そんなあたしを見ていて欲しい。













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