背景のない ショート・ショート(3)
お風呂上り、ほかほかに上気した肌、
柔らかく湯気が包む身体をソファーの上に投げ出して
んんー・・・と大きな伸びひとつ。
「ねえ」
「はい?」
「ちょっと」
「はい?」
「何してんのヨ」
「え? 足ツボマッサージ」
ちょこんと床に座り込んだかと思うと、無言でぬくぬくになった私の足をむにむにしだした。
これってマッサージ?しかも足ツボ?
ぜぇんぜん痛くないし。効き目あんのかしら?ねえ?
なんて私の考えをよそに唇尖らせて右眉上げて真剣そのものな顔でむにむにしてる。
その顔にほだされてなすがままにちょっとつきあってあげる。
「ねえ、これってどこかで習ってきたの?」
「ううん。自己流」
「効くの〜?」
「気持ちよくない?」
「よくなくはないけど・・・」
「けど?」
「・・・そのへん、すごい・・・くすぐったいっ」
バッ と脚を上げてかおるの手をほどく。
伸ばしていた両足とも身体に引き寄せて抱え込む。
「もういい!アリガト」
「だめー、まだ片方しかやってないー!
ほらリカさん右足出して」
「いい、いい、もういいってば」
「やだ、したりない」
「私は足りてるの!」
拗ねたような顔したってダメ。
「あーあ、気持ちよかったのにー」
「くすぐったかったんだってば」
「リカさんはくすぐったくてもあたしは気持ちよかったの」
「何でアンタが気持ちいいのよ」
ホントはそんなにくすぐったくない。
でも恥ずかしくなっちゃったんだもん。
私だってもう少し、
あなたの真剣な顔、間近で見てたかったんだけど。
我慢できなくなっちゃったから。
こんなんじゃなくて
もっと気持ちいいことしてあげるから。
そうしていつもの甘い夜が更けてゆく。
|