背景のない ショート・ショート(4)




 

 

 

   「タニって結構派手好きだったのね」

 

   「え?どこらへんがですか?」

   「こないだ雑誌の表紙で、ドぴんくなスーツ着てたの見たわ」

   「あれは!GRAPHの撮影で用意されてたのを着ただけですー」

   「私服でゴールドの上下持ってるじゃん」

   「うっ・・・」

   「持ってンの、それ一着だけじゃないでしょ?」

   「何で知ってるんですかっ!?」

   「ふっふっふ」

   「あれはぁ・・・」

 

   リカさんが教えてくれたからっ

 

   という言葉を音にせずパクパクと口を動かすあたし。

   「なにそれ、金魚のマネ?

    相変わらず面白いよねー。タニってば」

 

   きゃらきゃらと笑うリカさん。

   そのリカさんだってちょっと前に見たテレビのゲストで

   渋めだったけどゴールドのカーディガン着てたじゃん。

   空色のスカートに合わせたりしてさ。

 

 

   今年のラッキーカラーはね、

   ゴールドとブラウンとブルーなの。

 

   って、リカさんがあたしに教えてくれたんだよ?

 

   ファッションに取り入れるといいよって

   リカさんが言ったんじゃん。

 

   それにドピンクのスーツって写真集でリカさんも着てたじゃん。

   あれだって自前とか聞いたし、

   あとあの時のあれも、こないだのやつだってさー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   片眉上げて、口の中でモゴモゴ何か言ってるのを

   私は気付かないフリしてお茶を飲む。

 

 

   タニはとっても素直なイイコだから

   まんまと じゃない、ちゃあんと私のアドバイスを聞いてるんだなってわかってるよ。

 

   だけどね

 

   なかなか面白いよ、その大胆な取り入れ具合が。

   ま、

   なんでか似合っちゃってるのもスゴイんだけど。

   いいよ、それで。

   ヨシとしといてあげまショ。

 

   困ってんだかモンク言ってんだかよくわかんない百面相してる顔、久しぶりに見れたしね。

 

   「面白い事するタニも可愛いよ」

 

 

 

 

 

 

 

   ・・・・・・。

 

 

 

   自分の単純さはとりあえずそのへんに置いてあるみたいで

 

 

 

   ていうかリカさん、

   どっちにしてもそれフォローになってないから。










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