Side-R


 

 

 

        「え?明日の午前中、ポート撮影だったの?」

        「そうなんですよー

         どんなの撮ってもらおうか、何着ていこうか今回全然思いつかなくて・・・」

 

        明日はすっかりオフだと思ってたからうちに呼んだのに、ちょっと悪かったかな。

        「・・・ごめんなさい。リカさん。

         明日、ゆっくり出来なくて・・・」

 

        少し申し訳なさげな顔になっちゃってた私に気付いて、上目使いでごめんなさいされる。

        こっちが急に誘ったていうのに、さりげなくこゆこと言うのよね。

        無意識なんだろうけどオトナだなあなんて思っちゃう。

 

        「それでもリカさんと一緒に居たかったから・・・」

 

        ・・・・・・わざとらしく聴こえないこの言葉も素直に嬉しかったりして。

 

 

        「じゃあ、今夜は夜更かししないどかないとね」

        「ええっ、やだ、大丈夫ですってば」

        「ダメダメ。むくんだ顔でポートに載せらんないって」

        「やーだー、リカさんと一緒にいられるのにすぐ寝ちゃうなんてー」

        「いっつも気付いたら寝てるじゃないの」

        「そんなことないっ」

        「ある」

        「ないですぅ」

 

        もうっ、ってほっぺた膨らませて抱いてたクッションに顔を埋めるしぐさは

        ホント子供なんだけどね。

 

        「で、どうするの?明日のポート」

        あぁ、そうだった なんて思い出したように顔を上げて右眉も上げて考えてる。

        「うーんと、そうだなあー

         こないだちょっとハード系だったからナチュラル路線でやってみようかなあ」

 

        ナチュラルねえ・・・。

 

 

        おもむろに立ち上がって私は隣の衣裳部屋へ。

        クローゼットを開けて、ずらりと並んだ服を前に人差し指を唇にあてて考える。

 

        「そおねえ、これとか

         これとか・・・」

 

        「リカさぁん、何してるんですかぁ?

         ちゃんと上羽織ってないとそっちの部屋暖房きいてないですよぉ」

        「わぁってるっての!

         ほら、ちょっとこれそっちに持ってって」

        両手に一抱えブラウスやらシャツやらジャケットやら、

        ぽい、と渡される。

        「何するの?どうするのこれ?」

        「んー、着せ替えごっこ」

        「は?」

        「明日のポートの服、こっから持ってきな。

         私が選んであげる」

        身体ごとくるりと振り返って、悪戯気味ににい〜っと笑う。

        ああ、何だか楽しくなってきちゃった。

 

        どうしていいかわからないって感じでちょっぴりオロオロしてるあなたに、

        私の服を次々にあてて鏡を覗き込む。

        「リカさんの服、サイズ合わないですって」

        「大丈夫だって!

         あ、これなんかいいかも。ちょっと着てみて」

        「え?ここで?」

        「今更なに照れてんのよ」

        「だってぇ・・・」

        「タニの裸なんか見慣れてるっての。

         はい、脱いで」

 

        耳まで真っ赤になって、じいっと私をにらみながらもおずおずとボタンに手をかける。

        こゆとこ素直で可愛い。

 

        「ほらあ、サイズ大丈夫じゃないの」

        「うーん、と、とりあえずは・・・」

        「こっちより、こっちがいいね。

         これ明日着てけば?そしたら朝もバタバタして帰らなくていいじゃない」

 

        ね、ね、とちょっと強引すぎた?私。

        ちょっとでも長く一緒に居れたらってみえみえだったかしら?

        はにかんだような困ったような顔して、鏡越しに私を見てるあなたは

        なんだか物言いたげ。

 

        「なあに、もっと違うのがいいの?」

        ふるふると首を振る。じゃあなあに?

 

        「これ、リカさんのってバレないかなあと思って・・・」

 

        もにゃもにゃと語尾が小さくなる。なあんの心配してるのかと思えば。

        「そんなのわかんないわよ。これくらいシンプルなやつなら

         同じようなの持っててもおかしくないし、これなんか買ったまま袖通してないし」

        「えっ?いいんですか?あたしが先に着ちゃっても」

        「いーよ。なんなら貰ってくれてもいいけど。私より似合うみたいだしね」

        「本当!?」

 

        パッと明るい笑顔をみせてキラキラの目で私を見つめるあなたに、こくりと頷いてみせる。

        嬉しいの?

        「そんなんでいいの?」

        「うん!だって“リカさんが選んでくれた”んだもん」

 

        可愛すぎ、こいつってば・・・。

 

        お互いがお互いの行為に、じぃんとしちゃって、ああなんて幸せな私達。

 

        「じゃあ、パンツはこれで」

        「げっ。それこそ本気で入らないってば」

 

 

        嬉しくって、楽しくって、したい放題、なすがままに。

        とっかえひっかえ片っ端から試着させて、そのスタイルを堪能しちゃおう。

        あなたは私の着せ替え人形。

        今夜くらいはあなたをおもちゃにしてもいいでしょう?

        納得?諦め?どっちでもいい。にこにこで付き合ってくれる優しさが好きよ。

 

 

        二人だと、どんなことでも楽しくなるの。

        あなたもそうだと信じてる。その笑顔がその証拠だと。

 

        ただ、夜は短くて。

 

 

 

        でも

 

        明日のあなたは私に包まれて一日を過ごすのね。

 

 

 

 

 

 

        あ。

        そおいえばその服の色違いって

 

        こないだどこかで着たような・・・。

 

 

 

 

 

        っていうのは黙ってても、いいよね。














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