Side-R


 

 

 

 

 

        「ん・・・・っ」

 

 

        小さく漏れる吐息に熱が混ざりだす。

        ベッドサイドのランプが、うっすらと肌に浮かぶ汗を鈍く照らし出している。

        息が出来ないくらいの深く長いキスを繰り返す。

        絡めたままのかおるの手がそれに反応するように私の手を何度も握り返す。

 

        柔らかな胸の膨らみに沿って手を滑らせて、優しく包み込むように掌を動かす。

        息があがるのに合わせてその胸が上下する。唇を離しても顔は頬に寄せたまま

        薄闇に目を凝らしてかおるの顔を見つめる。

        きつく閉じられたままの瞳

        薄く開いたままの唇

        額に張り付く前髪までもが私を誘う。

 

 

        耳に唇を寄せてその後ろをなぞるように舌で触れる。

        ビクッ、とかおるの身体が強張るのを感じて頭に血が昇りそう。

        そのまま首筋に顔を埋めて唇を強く押しあてる。

        食べ尽くすように歯を立てながら何度も何度もキスをする。

 

 

        「り、 か   さ・・・・ん・・・・っ」

 

        切れ切れに呼ぶ私の名前。その声も私の身体を熱くさせる。

 

 

 

 

        掠めるように優しく胸から腰への曲線に手を滑らせ腕を伸ばし

        かおるのいちばん深いところへとゆっくりと指をもっていく。

 

        密かに熱く濡れて私を待ってる。そっと指を差し入れて

        小さく漏れる官能の声をさえぎるように唇で唇を塞ぐ。

        重ねた唇で感じているのを感じ取る。

 

 

 

 

 

 

        好きで好きでたまらなくて

        だけどこれ以上どうすればいいかわからなくて

        ただ身体を重ねて、熱を感じあって、快楽の頂点まで昇っていって

        それだけでも足りなくなって

        でもだからってそれ以上は考えられなくて

        ずっと

        繰り返し抱き合うだけ

        強く

        深く

        身体が言うことをきかなくなるまで

        感情までもが果てて動けなくなるまで

 

 

 

        肩で息をするほどに、高まりあう感覚。

        早くなる指の動きに熱を帯びた身体がしなりだす。限界まであと少し。

 

 

        揺れて擦れる肌を縫って私の深い場所へとかおるの指が伸びる。

 

 

        お互いがお互いを感じながら、少しだけ乱暴にもっともっと深いところまで入り込んでいく。

        指に絡みつく感触と混ざり合う吐息だけが、

        もう何も考えることの出来なくなった頭の中を占領する。

        恥じらいもなにもかも飛ばしてしまって

        ふたり共に、ただ喜びに震えて快楽に飲み込まれ・・・

 

 

        「ん、 あっ・・・・っ・・・」

 

 

 

 

 

 

 

        重なり合ったまま、動けないまま、

        私はかおるの胸の上に頭を預けたまま静かに息を整える。

        私の胸の鼓動とかおるの鼓動とがシンクロしてる。

        大きく波打つその鼓動に目を閉じて身を委ねる。

 

 

        「・・・・心臓の 音、

         うるさいよ・・・・」

 

        「ご  めんな  さ  い・・・」

 

        切れ切れの息に混じりながらの答え。

        腕を伸ばし、抄くようにかおるの髪に指を絡ませる。

        痕がつきそうな強さで肩を掴まれてた手の力はとうに抜けて、

        あやすように優しく私の背中の高い位置を撫でさすっている。

        不思議な気分にまだ熱の引かないままの身体を浸してみる。

        眩暈にも似たまどろみの中、かおるが私に囁きかける。

 

 

        「ねえ・・・」

        「ん・・・?」

        「あたしのこと 好き?」

        「ん」

        「ちゃんと 言ってくんなきゃ だめ」

 

        「好き・・・よ」

 

        満足げな溜息をついたかおるの頬にはきっと笑窪が浮かんでる。

        好きという言葉だけで素直に喜ぶなんて

        私には出来ないコト・・・。

 

 

        「どうしようもないくらい  好き よ」

 

 

        身体を起こして真っ直ぐに見つめてそう言った。

 

        真っ直ぐに見つめ返されるその潤んだ黒い瞳に、私が映っている。

        少しだけ泣きそうな顔して・・・。

 

 

 

 

        どうしようもないくらい

        どうしていいかわからないくらい

 

 

        かおるが 好き。















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