Two Hearts - NOVEMBER -

 

 

 

    空気に冬の気配を感じてふと空を見上げた。

    秋の夕暮れはほんのわずかな間しかなくて、あっというまに夜になる。

    まばらに敷き詰められた落ち葉をカサカサと踏みながら歩道を歩く。

 

 

       この季節ってなんだか物寂しい感じがして、やだわ

 

    去年の今頃、そういえばそんなこと呟いてたなと思い出す。

 

       中途半端に寒いし

 

    寒いの苦手だもんね。リカさん。

 

       着る服もちょうどいいの ないし

 

    衣装持ちなのに。嘘ばっかり。

 

       人肌恋しくなるし

 

 

 

 

 

 

 

    「時間、あるの?」

    「リカさんより忙しくないですよ」

    「あ そ」

    エアコンの効いた部屋、窓ガラスがうっすらと曇ってる。

    ああ、こんなところがもう冬っぽいな、なんてぼんやりしてたら頭をつつかれた。

 

    「口、あいてるわよ」

 

 

    くすっ と、笑って向かいのソファーに座る。

    あたしを通り越して、リカさんが窓の外に視線を移す。

 

 

    「今の時期って、空気も風景も寂しい感じがして やだわ」

    オレンジ色の街灯がぼんやりと浮かんでいる窓を見ながらリカさんが呟いた。

 

    「秋と冬の間?」

    「そ」

    「ちょっとセンチになりますよね」

    「タニには似合わない言葉だけどね」

    それ以上からかわれないようにキスで唇を塞いだ。

 

    「誰がこっちに来ていいって言った?」

    悪戯気味に瞳が動く

    「キスしていいとも言ってないわよ?」

    言葉とはうらはらに細い腕が伸びる

    「ねえ、どうしたいの?」

    笑い混じりの問いかけ。そのたびにキスでこたえた。

 

    強く抱きしめて、久しぶりの柔らかい感触をあじわう。

    磁石のようにぴったりとくっついて、ずっとこうしていたいと時を止めてみる。

 

 

 

 

    「この季節だから・・・」

    「えっ・・・?」

    「こんな風に抱き合ってリカさんの温もりを感じていたい」

    「寒くないように?」

    「寂しくないように」

    「タニ、寂しいの?」

    「ううん、リカさんが」

 

    リカさんが寂しくないように。

 



    「ばかね」

    「うん」

    「・・・ありがと」

    「うん・・・」

 

 

 

 

 

 

 

    澄んだ冬の夜空のように

    11月の恋人達は、いつもより少しだけ素直になれる。








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