Two Hearts - SEPTEMBER -

 

 

 

    『というわけでね、ちょっとヘコんでんのよ』

    で、気分晴らしにめずらしく長電話。

 

    テレビも最近あんまり見ないからどんなのかよくわかんないんだけど、

    どうやら今度リカさんがテレビ番組で社交ダンスを踊るらしくって

 

    『だってさー、しょうがないじゃん?ずっと男やってたんだからさー

     眼が強いとかって、どうしろっていうのよー もうっ』

 

    思うようにならないみたいでちょっと拗ねてる。こーいうリカさんってめすらしいんで

    うんうん、って頷きながら愚痴聞いてあげる。

 

    『ダンスはねーいいのよ。パソドブレって振りカッコイイし』

    目を閉じて想像してみる。うん、すんごい素敵かも。

    『男の人にリードされるのって、悪くないし』

    そっか・・・リカさん、女役パートなんだ・・・って当然か。

    『リフトされるのはまだちょっと怖いから、ついしがみつくよになっちゃうけどね』

    あー・・・ちょっと それは ヤかも。

    「あのー、あんまり身体くっつけないで欲しいんですけど」

    『なに? あはあ、妬いてんの?』

    「なんならあたしがリカさんの相手役で踊りたいくらい」

    『私をリード出来るの?』

    「絶対出来るもん」

    『あのリフトはかおるには無理よー』

    どんなリフトなのよっ。

    「練習するもん」

    『どうかしら』

    「とにかく、リカさんを抱いていいのはあたしだけなの!」

    どんな形にしろ、そうなの!

 

    『・・・よくもまあ恥ずかしいセリフを堂々と』

    「だって、ホントのことだもんっ」

    『まあまあそう興奮しないで。仕事なんだから割り切ってよね』

 

    しょうがないなあって声で子供のように諭される。

 

    「・・・で、いつ放送あるの?」

    『んー、いつだったかな?覚えてないわ。後でメールしとくから・・・

     って見てくれるの?』

    「だってリカさんの踊ってる姿とかって、久しぶりだもん」

    『惚れ直してもらいましょうか』

    「それはできないかも」

    『なんでよー!』

 

    だって惚れ直さなくていいくらい、惚れ抜いてるもん。

 

    「あのね」

    悔しいけからそれは教えてあげないけど

    「リカさんが充分魅力的だって知ってる」

    『なによいきなり』

    「すっごい女らしくって、すっごい可愛くって、すっごい色っぽくて」

    『ちょっとー・・・なに言ってるの』

    「ホントはあたしだけが知ってていいリカさんなんだけど

     仕方ないからみんなにも見せてあげて いいよ」

    『それってすっごい傲慢じゃない?』

    「だからいつもどおりで大丈夫」

    『もしかして励まされてるの?私』

    「かっこいいリカさん、見せてね」

    『・・・わかった・・・って、またそこでカッコイイになるの?ヘンなの!』

 

    ああ可笑しいってコロコロと笑う声。

    ちょっとは気持ちほぐれたかな?

 

    『んじゃあ、明日もお稽古入り早いから、またね』

    「うん、頑張ってね、リカさん」

 

    そんなこと言わなくたって無理してでも頑張るリカさんも知ってる。

    どんな素敵なリカさんが見れるかと思うだけでドキドキしてくる。

    勿体無いけど、あたし以外の人達にも見せてあげる。

    あたしのリカさんを。








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