初めての恋は、憧れで終わった。

          好きで好きで大好きで

          泣いちゃうくらい好きで

          でも、

          どんなに好きでもその人との距離は縮まることはなかった。

 

          縮めようともしなかった 私。

 

 

          臆病すぎた 私。

 

 

          ティファニーの甘い香りだけを残して

          遠い所へ行ってしまった。

 

 

 

 





 

          「何考えてるの?」

 

          不意にかけられた声に、はっと覚醒する。

          たたみかけた服を握り締めたまま、いつのまにかぼんやりとしていた私の背中に

          おぶさるように身体を預けてくる。

          柔らかい髪が頬に触れて、お日様の匂いが私を包む。

 

          胸に残る傷跡を優しく癒すように。

 

 

 

          「さえちゃん」

          「なあに?」

          「もっと ぎゅっと して」

 

          「甘えん坊だぁ」

 

          嬉しそうにそう答えながら抱きしめられた両腕に込められる力に

          もっともっと甘えたくなる。

 

          欲張りな私。

          切なさが ほどけてゆく。

 

 

          2度目の恋は 気が付いたときには始まっていた。

 

          上級生だという意識は今だってちゃんとある

          気さくすぎるから、すぐ忘れそうになるけれど。

          気負わない関係はとっても居心地がよくて

          じゃれあうたびに、心が近まって

          触れあうたびに、気持ちが深まって

          とてもあたりまえのように、唇が重なって

          ずっと抱きしめていたいと、態度で示す。

 

          私に向けられる優しい笑顔がまるで子供のようで

 

          その無邪気さに

          その無防備さに

 

 

          薄れてゆく 初恋の残り香。

 









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