11月25日
出発の朝、カーテンを開けると 笠雲がほんわりと街並みの向こうの山に架かっていた。
今日は、雨になりそうだ。
一筋、二筋とバスのガラスに涙雨が模様をつけだした。
セントクレア湖が源泉の川に架かるタスマン橋を渡った。
緩やかに弧を描いているタスマン橋は 一年間に4500人スピード違反で捕まる人がいるそうだ。
そんな説明を受けているうちに、空港に着いてしまった。
バスの中で 皆で”ふるさと”を唱和し、私はハーモニカを吹いた。
マイクさんと良江さんに一週間のお礼を込めて・・・・
バスからスーツケースを下ろし終えると、マイクさんとお別れの挨拶。
私は 使わなかった軍手を彼にプレゼントした。
交通安全と赤い字で書かれたJAさんの景品だった。
ドライバーの彼にはぴったりの贈り物ではなかろうか。
良江さんの話では、ドライバーはたいてい “蚊帳の外”らしい。
私達は彼を巻き込んでいた。
Hさんのように積極的に話をしたり、食事を一緒にと誘ったり、私のプレゼントした
日本手ぬぐいで、室さんは“泥棒縛り”などをさせてしまったり・・・
また、添乗員がいなかったのが 良江さんは仕事がしやすかったとも言った。
ドライバーさんと添乗員のどちらにも気遣うことが多いとか。
トイレの便座シートがタスマニアにはないと彼女が言うので
写真と一緒に後で志賀さんに送っていただく事にした。
志賀さんはご自分で撮られたモズの写真の名刺を渡された。
良江さんとマイクさんのおかげで 心に残るたびが出来た。
本当にありがとう・・・・・別れの涙雨がポツポツと降り出した。
手続きを終え、搭乗のサインを待っている時に人数確認をすると、
Hさんがいない! トイレかも・・・
「とにかく、皆さん、搭乗してください。私はもう少しここに居ます」と
カンタスの係員に、そのむねを伝え、私一人、搭乗口付近に立っていた。
「Hさんが中にすでに居るかもしれないから、そうだったら言いに来るからね!」と
メンバーは口々に言って入っていったが、誰も戻ってこない・・・・
随分の時が経った。
どうしたらいいのかしら?・・・・と思っていると、本人Hさんが
血相を変えて搭乗口を逆行してきた。
客室乗務員にもう、すでに入っていることを伝えに戻りたくても、
させてくれなかったという。
Hさんの英語力で乗務員を説得し、外で待っている私に会いに来たというわけだ。
良江さんと名残を惜しんでいる時に、「もう、搭乗するからね!」と
言われたらしいが、 私が 気が付かなかったようだ。
一度、搭乗すると「忘れ物!」なんて出られないのだ。
まずは、よかった! 一件落着。
*
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シドニーの空港へ昼ごろに到着。
土砂降り! 横殴りの風!
{志賀ご夫妻と3人では 大きな事を言えなかった私だが、
12名の団体になった途端に、旅行社に強気に出た。シドニーでは当初、私の友人が在住しており
、夜の出発まで通常の観光コースとは
違ったところを案内していただこうと思っていたが、丁度 私たちの旅行中、
彼は 日本に里帰りすることが分かって、インターネットで調べてみた。
4時間半で世界遺産のブリーマウンテンズツアーがあった。
街の中の嫌いな私は 旅行社を口説いて、ブルーマウンテンズ行きと
チャイナタウンの夕食をねじ込んだ。
「もーからんな・・・安藤さんにかかると・・・」
「募集する経費が浮いているわけだから、出来るはずよ!」というわけで
おまけのツアーとなっていた}
昼食に案内してくれる現地ガイド丸山さんに
「市内観光に切り替えた方がいいでしょうか?」と言うと、
「100キロ先の天気は分からないから行きましょう!」と言われた。
ホリデーインホテルのリッチなバイキングの昼食を終え、雨の中を出発。
市内の雑踏を抜け、高速道路に入っていくと、雨が小降りになってきた。
ツイテル!ツイテル!
おまけに、メルボルンでも見かけた ジャカランダの薄紫の花が 行く手を
楽しませてくれた。 幸せ、しあわせ・・・
世界遺産のブルーマウンテンズの展望台に着いたが、すごい霧!
1M先が見えない・・・10分でバスへ戻ってくださいと言われたけれど、
残念で、残念で・・・・
オヤ、霧の切れ間が出てきた。室さんと志賀さんの奥さんと集合時間を無視して
ねばった。
切れ間の向こうには、素晴らしい景色が出てきた!
見えた!見えてきた!ワーイ!!ジャミソン渓谷の全容が観えた!
初めから観えていた景色よりも感動的、まるで、緞帳があがるがごとく
劇的な景色が登場!
3人は言葉もなくたたずんだ。
その後、トロッコ電車で降りて行った。
ギネスブックに載る世界一の急勾配とかで、天井の網に手をからませて
真っ暗なトンネルへ突入。
シダの茂る密林の中を木道に沿って 1時間ほど散歩。
時間が許せば、もっともっと歩いていたい場所だった。
オーストラリアの乾燥した国の中で、ここだけは別天地で 適度な湿度が雨上がりで
一層増して、森林浴の効果を高めていた。
ゴンドラで 100種類あるというユーカリの密林、大きなシダの揺れる密林を
再び、登って行った。
アボリジニの伝説の山“3人の娘の山”の話を現地ガイドの丸山さんから聞いて
メモを取っていたが、バスの揺れる中でのメモはすべてが自分でも解読できない文字で
「バンニャブ、妖怪、大ムカデ、小石を投げた、マジックボーンを取り出して小鳥の姿に変えた。
マジックボーンをユーカリの原野で落とした、ルーラの住人」・・・とだけ判読。
果たして、どんな伝説だったのだろうか?
ジャカランダの咲くハイウエー |
ジャカランダの咲く道を再び、シドニーの市街地に向かった。
うんざりする渋滞、10台に2台は日本製の車。
やっと、中華街のレストランへ。
回転テーブルに次々と料理が運ばれて、ブルーマウンテンズと中華料理のおまけを付けてくれた
旅行社、チックトラベルさんに メンバーが賞賛の声を出した。
さて、それからが私のミス。
皆さんからチップを預かって、マイクさんの食事やケーキなど自由に使わせていただき
丸山さんとドライバーさんに渡した残りを 早く皆さんに精算してお返しすれば、
空港内の免税店などで使っていただけると思って、一足先にレストランの入り口で作業をした。
バスは、空港に着き、丸山さんを残してドライバーは帰っていった。
皆さんの出国手続きの手伝いをしてもらい、スーツケースを預けた。
私は出国書類をスーツケースにしまい込んでしまっていたので、再度書き直しを始めた。
赤いスーツを着たお姉さんが側で見つめている・・・うっとうしいわ・・・と
顔を向けると ボール紙で出来た等身大のカンタス航空嬢だった。
丸山さんに、「このボール紙さんと一緒に写真を撮っていただけますか?」と言うと
承知してくれた。
ショルダーバックに手を入れると、カメラがない!
「ワー!中華料理の店の入り口付近に忘れたかも・・・」と言うと、丸山さんは携帯で
すぐに連絡を取ってくれた。
見あたらないという返事が来て困惑した。
もしや、バスの中?・・・ということで 再び、連絡を取ってもらうと、すでにバスを
洗っていたドライバーが カメラを見つけたと言って返事が来た。
二人にチップを渡したところで、私の責任が果たせ、気を抜いてしまったのか・・・
皆さんに出国していただき、ドライバーがカメラを届けてくれるまで残っていただいた
志賀さんと室さんと丸山さんにご迷惑をかけた。
余分な労力に対して、チップを差し上げたいけれど、持っていたのは10ドル札1枚と
1ドルのみ。
ドライバーに10ドル、丸谷さんに1ドル、申し訳ないチップとなった。
{後で70ドル持っていたことが分かったが、所持金が11ドル?変だな?とは思ったが