ホワイトメタル キット 製作記

愛車「空色エラン」の、ホワイトメタルキットを製作しました。
仕事の合間に少しずつ進めたので、完成までに半年以上かかってしまいました。


使用したのは、SMTSというイギリスのメーカーのキットです。
空色エランを手に入れた当時に購入した物ですが、一目見て製作を諦めていました。
今回、実車の塗料が手に入ったのをきっかけに、思い切って手を付けることにしました。
雑誌などを読んで、組立の大変さは理解していたつもりですが、実際に製作してみると、聞きしに勝る物でした・・。



全くの自己流ですので、もっと良い方法があるかも知れません。
左側に写真のある項目が通常の組立、右側に写真のある項目が、自作した部分です。


それでは、製作を始めましょう。

≪キットの素組み≫
各パーツの嵌め合わせなどをチェックします。

細いウィンド枠が歪んでしまっていたり、様々なパーツの合わせに問題がありました。
すんなりとは、組み上がりそうにありません。先が思いやられます。

ホワイトメタルは軟らかいので、慎重に手で押すことで、歪みなどを修正することができます。
大きなバリなどは、金属やすりを使って削り取ります。(力を入れすぎて、変形させないように注意!)
ホワイトメタルは融点が低く、すぐにヤスリが目詰まりを起こすので、苦労します。

キットは、ボディとシャーシをタッピングビスで留めるようになっていますが、何度も付け外しする必要があるので、ビス穴にタップを切って、Mネジで固定できるようにしました。


≪ボディ下地磨き≫
まずは、600番程度の耐水ペーパーから始め、徐々に細かいペーパー(1000番程度まで)で水研ぎしてゆきます。

ホワイトメタルキットは、シリコンゴム型に、溶かした合金を流し込んで作られています。
シリコン型は、融けたホワイトメタルの熱の影響などで劣化するため、長年使っているうちに、表面に凹凸や変形・バリなどが発生するようになります。

紙ヤスリをかけることで、表面の余計な出っ張りを削り落とします。
曲面を出すのに邪魔な、凸モールド(キーホール・サイドウインカー・ウォッシャーノズルなど)も削り取ってしまいます。


≪ボディ形状修正≫
紙やすりでは修正できない窪みなどを見つけ、パテ埋めしてゆきます。

ボディサイドのミゾは、ラインが低すぎるので、一度パテで埋めてから、2mm程度上にミゾを彫り直しました。
細かい部分には、模型用のパテを使用します。

ミゾ彫りには、Pカッターを使用しました。
曲線部分などには、目の細かい精密やすりを併用します。

面が荒れてザラ付いている部分などには、溶きパテを筆塗りしておきます。


≪ボディ形状修正2≫
フロントバンパーなど、実際の車とデティールの異なる部分に手を加えます。

パテを盛り、適当な形状になるまで紙やすりで削り、形状を整えます。
比較的大きな部分の修正には、ヒケの少ない自動車補修用のパテを使用しました。
硬化剤を混ぜるタイプで、ホワイトメタルへの食いつきも良いのですが、臭いがきついのが難点です。

バンパーのウインカーはデカールを張るようになっていますが、透明パーツを自作することにしたので、パーツを嵌め込むためのミゾを彫っておきます。


≪下地塗装≫
模型用のサフェーサーをスプレー塗装します。

ホワイトメタルは、紙ヤスリで磨くとヘアライン状態になってしまい、表面形状が把握しにくくなります。
サフを塗装することで、面の状態を確認しやすくなると、「こんなはずじゃなかった・・」なんていうことも数回ありました。(ヤスリがけは慎重に・・。)
問題のある部分は、再度パテを盛り付けて、磨き・塗装を繰り返します。

また、ドアやボンネットのスジ彫りも、彫り直してシャープにします。
フロントバンパーのU字型のミゾは、Vミゾでは雰囲気が変わってしまうので、Pカッターの歯先をグラインダーで削ってRを付けて使用しました。


≪磨き・塗装≫
思い通りに形状が仕上がるまで、磨き・塗装・形状修正を繰り返します。

ボンネット後端の跳ね上がりも表現されていないので、パテで修正しました。
このような緩やかに盛り上がる形状の部分は、筆塗りで溶きパテを何度も塗り重ねることで、積層させて形状を作ります。
この方が、パテを盛るよりも、紙ヤスリで形を整える時に楽に仕上がります。

ここで手を抜くと、完成後に後悔することになるので、納得するまで作業します。
写真の状態になるまで、5〜6回繰り返し作業を行ないました。


≪フロントウィンドの製作≫
キットにはフロントウィンド用に、薄い塩ビブリスター(写真右)がセットされていますが、コレで組み立てると、枠との間に段差ができてしまい、一枚ガラスでできている実車のフロントウインドの雰囲気が出ません。
厚さ0.5mmの透明プラ版を使って、自作することにしました。

まず、ハンダゴテにかざして加熱し、透明プラ板に曲げ癖をつけます。(写真左上)
癖の付いたプラ版を、枠に合わせてカットし、エポキシ接着剤で接着します。
最後に、段差のある部分の枠を削り、一体感を出すようにします。


≪仮組み≫
形状修正の終わったボディと、フロントウィンドを組み立てて、合いをチェックします。

自作したフロントウィンドも、問題なく取り付けられそうです。

この時に、初めてタイヤを合わせてみました。
キットのタイヤは、扁平率が非常に大きく、トラック並みのサイズであることがわかりました。
外周がタイヤハウスいっぱいで、全く隙間がありません。
さて、どうしよう・・。


≪タイヤ修正≫
キットのままでは仕方がないので、タイヤの外径を削ることにしました。

旋盤に咥えた適当な太さの棒にタイヤを嵌めて回し、粗い紙ヤスリを当てて外側を削ります。
溝などはすっかりなくなって、スリック状態になってしまいましたが、タイヤの扁平率はバッチリです。(写真左)
でも、できれば、もっと出来の良いミニカー用の適当なタイヤに取り替えたいところです。


≪ホイール軸製作≫
キットのシャーシの軸穴のままでは、ボディのフェンダーとタイヤの位置がずれてしまいます。
軸の取り付け部分を修正するついでに、ステアリングを切った状態で固定できるように、軸のベースを作ってみました。

コレをシャーシに接着すると、ステアリングを切った状態にタイヤを取り付けることができるようになります。(1/43スケールのミニカーでは、あまり見かけないと思います。)
残念ながら、タイヤは回転しません。


≪リアウィング製作≫
M100エランは、生産時期によって、トランクの開き方が二種類あります。
キットは初期型で、空色エランと開き方が異なるタイプなので、ウイングパーツを加工することにしました。

左右のボディ後端部分と一体でモールドされているウィングパーツを3つに切り離し、中央のウィング部分には、プラ板で自作した支柱を付けます。
左右の端はボディに接着してから、パテで段差を修正します。

この時点でウイングを接着してしまっても良いのですが、トランクとの間が狭い隙間になってしまいます。
狭い隙間には、スプレー塗装が乗りにくいので、塗装後に接着することにします。


≪リアフェンダー形状修正≫
キットのままでは、リアフェンダー上部の微妙な曲面が表現されていないので、形状出しを行ないます。

フェンダー上部を紙ヤスリで削って凹面を作り、ボディ垂直面との間に、水平に走る稜線を出すようにすると、実車の雰囲気が出るようになります。

その他、実車を観察しながら製作を進めることで、いつも乗っているのに今まで意識していなかった微妙な曲面を、あちらこちらで発見することになりました。

この状態で、さらに4〜5回のボディ磨き・塗装を繰り返します。


≪仮組み≫
何度も仮組みを行なって、パーツの合わせを確認しながら、作業を進行させます。

何度も、組み立て・分解を繰り返す必要があるので、キットに付属のタッピングビスでは、ネジバカになってしまいます。
ネジ穴にタップを切って、Mネジ仕様にしたのは、正解でした。

今回は、コクピット内部のパーツ合わせも行いました。
干渉する部分などは、その都度削って形を整えます。
組立の都合上、ドア内張りのモールドはボディ側に接着し、ダッシュボードはコクピットの床に接着することにしました。


≪リアコンビネーションランプ製作≫
テールライトは、キットではホワイトメタルのパーツにデカールを貼って、組み込むことになっています。
透明感が欲しい部分なので、フルスクラッチで自作することにしました。

リア中央の、ナンバーを取り付ける部分のガーニッシュは、日本仕様の実車では、日本のナンバーに合わせて形状が変更されています。
キットのガーニッシュは本国仕様なので、使用するのをやめ、プラ板を積層させて形状を作りました。(写真中央上がキットのパーツ、下の白い物が自作のガーニッシュ。)

レンズ部分は、0.5mm厚の透明プラ板に曲げ癖を付けて、切り出します。


≪小物パーツ製作≫
オリジナルパーツを製作します。

リアコンビネーションレンズは、スモークのカバーが付いているので、裏からクリア塗料で赤やオレンジを塗装し、表面からスモークグレーを塗装して奥行きを出しました。
裏には銀色のアルミテープを貼り付けて、反射感を出します。
ウインカーレンズなども、透明プラ板で作り、表面をクリア塗料で塗装します。

ラジエターグリル用のネットは、市販の工作用金網(シンチュウ)を利用して製作しました。
ワイパーは、キットのエッチングパーツを折り曲げ、さらに薄いプラ板を貼り付けることで、立体感を出します。


≪コクピットの製作≫
小物パーツと平行して、コクピットの製作を進めます。

メーターは、カバーを透明プラ板で製作し、裏側からデカールを貼り、メーターパネルに接着してあります。
運転席後部の幌収納部も自作しました。
それ以外は、ほとんどキットの状態のままで済みました。
塗装は、微妙に色合いの異なる、プラスチック部分と革部分で色調を変えて塗り分けを行ないます。

本来は、エアブラシで塗装したいところですが、面倒なので筆塗りしました。(手抜きは禁物なのですが・・。)
ハンドルは、タイヤに合わせて、少し切った状態で固定してあります。


≪エンブレムの製作≫
ボンネットにあるロータスマークと、トランクに付けるロゴを製作します。

キットに付属のデカールだと立体感が出ないので、0.3mmのプラ板に貼り付けてから、外周を切り抜き、塗装します。
表面にRの付いたロータスマークは、クリア塗料を盛り上げて塗装し、表面に丸みを持たせます。
写真は、割り箸に貼り付けて、塗装中。


≪フロントウィンド完成≫
ルームミラーを接着して、塗装すれば、フロントウィンドの完成です。

実車同様、上から被せるタイプのワイドミラーを自作して、ルームミラーに取り付けました。
ルームミラーの鏡面にはアルミテープを張って、反射感を持たせます。
加工の途中で削り取ったバイザーもプラ板で自作し、接着します。

ドアミラーは、ボディと同色で塗装してから、最後に接着します。


≪シャーシ完成≫
ホイールを取り付けるための軸を接着し、塗装して、シャーシの完成です。

ボディを取り付けて、フェンダーアーチとタイヤの位置関係を確かめながら、車軸をシャーシに接着します。
ホイールは、外すことができるように、差し込み式にしてあります。

マフラーは、ピンバイスで穴をあけてから、実車と同じ楕円形断面になるように、小さなハンマーで慎重に叩いて潰し、塗装します。

コクピットの完成品を載せると、ゴーカートのようです。
少し切った状態のフロントタイヤが、雰囲気を盛り上げます。


≪ボディ塗装≫
下塗りの終わったボディに、カラー塗装を行ないます。
ちょうど梅雨〜猛暑時期の湿度の高い日が続いたので、しばらく作業が進みませんでした。

実車の塗装で余った物をもらった、空色(正式名称:アクアブルーメタリック)の塗料を、ピースコンで吹き付けます。
模型用の塗料と異なる強力なシンナーで、乾燥が速く、臭いも強烈なので、簡易ブースを利用して塗装を行ないました。
この塗料のおかげで、実車と同じ色合いが再現できました。

メタリック塗料で、このままではツヤがないので、この上から模型用のクリア塗料を吹き付けて艶出しをすれば、塗装の完了です。


≪ボディ仕上げ≫
クリアで塗装を仕上げたボディの内装(ドア内張り部分)を塗装します。
ボディはクリアのかかった積層塗装なので、塗装を汚してしまうと、磨きからやり直しになってしまいます。
細心の注意を心がけて、内装を塗り分けます。

塗装が完了したら、既に完成しているリアウイングやウィンカー類を接着して取り付けます。
リアウイングには、別に作っておいたハイマウントストップランプを取り付けてあります。

ボディ磨きで削り取ってしまった、キーホールやウォッシャーノズルも、プラ板などから切り出して塗装した物を接着して取り付けます。
この時点で、ラジエターグリルの金網も接着しておきます。


≪主要パーツ≫
ボディ・シャーシ・リアバンパー・コンビネーションランプ・フロントウィンド・タイヤ&ホイールの主要パーツが揃いました。
後一歩で、最終組立です。

リアバンパー下部のメッシュ部分には、シンチュウの金網を黒く塗装して、穴の形状に切り抜き、貼り付けました。
ナンバー部分のガーニッシュには、リアコンビネーションランプを接着して、仕上げておきます。

ホイールはシルバーで塗装し、クリアで仕上げてあります。


≪ボディ完成≫
小さなパーツを取り付けて仕上げたボディに、フロントウィンドを取り付けます。

サイドミラーは、ボディと一緒に塗装して仕上げておいた物を、フロントウィンド左右に接着します。
このままでは、根元の部分に段差ができてしまうので、溶きパテを塗って滑らかにしてから、半ツヤの黒で塗装してあります。
塗装が終わったら、ミラー面にアルミテープを張って、質感を出します。

仕上げの終わったフロントウィンドを、エポキシ接着剤でボディに取り付けます。
ウィンド前端とボディの間に隙間ができてしまうので、パテで埋めて完成です。

ワイパーは細くて壊れやすいので、最終組立後に取り付けることにします。


≪完成≫
それぞれのパーツを組み付けて、ついに完成です。

すべてを組み立てた後で、用意しておいたワイパーをフロントウィンドに接着します。

フロントバンパー下のリップスポイラーは、ゴムシートを細く切ったものを接着して、質感を再現します。

フロントとリアのナンバーまで再現して、「空色エラン」の完成です。
製作開始から8ヶ月がかりの、「小さな大作」です。
ディスプレイケースに入れて、リビングに飾りました。


≪おまけ≫
今回の製作に使用した工具類です。

いつも本業で使っているものばかりですが、どれもホームセンターなどで手に入るもので、特殊な工具は必要ありません。

必要なのは、「やる気」と「根気」だけです!




実車の「空色エラン」と記念撮影。