ホワイトメタル キット 製作記

バンダイのEXシリーズ、1/1700「ミネルバ」を製作しました。
今回は、動力に小型モーターを組み込んで、タンホイザーの起動シークエンスを電動で再現してみました。


ガンダムSEEDディスティニーに登場する宇宙戦艦です。
先に制作したアークエンジェルの敵役です。
ありきたりの動きではなく、制作に無理のない範囲で動きを演出できそうな模型を探していたところに、子供たちからの推薦があって、このキットに決めました。
今回も、塗装や細部は思い入れで仕上げてありますので、設定とは異なる部分があります。




今回は、小型白色高輝度LED以外は、手元にある材料で制作しました。
それでは、製作を始めましょう。


≪ギアボックスの制作-1≫
まずは、アニメを見てタンホイザーの動作を研究し、どのような機構を用いてこの動きを再現するかを検討します。
タンホイザーの動きが直線の往復であること、船体内部のスペースが限られていることなどから、スライド機構に送りネジを採用することに決めました。
ネジを回転させると、噛み合っているナットがネジ上を滑るように移動する機構です。

写真は、試行錯誤で作り上げたスライド機構。
[上]:送りネジとスライドレール。送りネジには、30mmのM2ビスを利用しました。
[左]:ギアボックス。1.2tのプラ板に、φ1のシャフトを打ち込んで作成してあります。
[中央]:スライダー。プラ板のBOX構造で、スライドレール上を滑ります。中のナットがある程度動いて誤差を吸収するように、余裕を持たせた大きさになっています。タンホイザーは、この上部に取り付けます。
[下]:プラ板で制作したナット。中央の穴にネジが切ってあり、送りネジと噛み合います。
[右]:送りネジ用軸受け。

右の写真は、今回使用したφ4モーター。マイクロメカニズムの制作などで使用しているもので、携帯電話のバイブレーターなどに利用されているタイプです。
トルクの点からは、もう少し大きなモーターの方が良かったのですが、スペースの関係で、このモーターになりました。


≪ギアボックスの制作-2≫
前項で制作したパーツを組み上げて、ギアボックスの完成です。
どのように模型のパーツ内に収めるかをよく考えて、それぞれのパーツのレイアウトを決めてあります。
モーターのトルクが意外に弱く、当初予定していた減速比ではうまく作動しなかったため、この状態になるまでにギアボックスを2回作り直しました。
 

ギアボックス背面と、スライダー前面には、リン青銅板で制作したLED点灯用の接点を取り付けます。
スライダーが一番前の位置までくると、この接点が接触し、タンホイザーのLEDが発光します。

この段階で電源をつないで、スムーズに動作するか、接点はきちんと機能しているか、を確認しておきます。


≪タンホイザーの制作-1≫
タンホイザー内部には、発光用のφ3白色高輝度LEDを組み込みます。

先端部分の発射口パーツは、光が通るように内部をくりぬいておきます。
タンホイザー本体パーツは、内部のリブやポストなど邪魔になる突起をすべて削り取ります。


パーツ内部の突起をすべて削り取っても、φ3のLEDは入らないので、写真のようにLEDをギリギリまで薄く削り、さらに先端部分が発射口パーツ内部に差し込めるように平たく削ります。
内部の金属部分まで削ってしまうとLEDが壊れてしまうので、十分に注意しながらヤスリで作業を行います。、


≪タンホイザーの制作-2≫
タンホイザー本体のルーバー状の排気口?や丸いインジケーター?など、光る部分に穴をあけ、透明パーツを埋め込んで、裏側からクリアで塗装しておきます。
この透明部分から、LED背面の光が漏れるようになります。
また、光漏れを防ぐため、透明パーツ以外の部分は内側をシルバーで塗装しておきます。

透明プラ板で作った小判状のパーツに穴をあけ、先端の平たい部分が飛び出すように、LEDを接着し固定します。
透明板は、4か所をクリアオレンジで塗装し、その他の部分はシルバーで遮光しておきます。
透明板は、本体先端部分に接着し、さらに左右パーツを接着してタンホイザー本体を完成させます。
発射口パーツは、この透明板に接着します。

すべてのパーツを接着して組み立てたら、タンホイザー外装の塗装を仕上げておきます。


≪コネクタの組込み≫
スタンドには、オスのコネクタを取り付け、アームの部分にリード線を這わせて、ベースに穴をあけて、下側に通しておきます。

船体には、コネクタピンが通るように小さな穴を2個あけ、メスのコネクタを取り付けます。
この時、コネクタの位置がずれないように、スタンドに船体を固定した状態で、コネクタを接着するようにします。
 

コネクタは接着がきかないので、瞬間接着剤で仮止めしてから、エポキシなどで周りを固めて、取れないように固定します。

接着剤が乾いたら、スタンドに取り付けて、通電テストをしておきます。


≪スタンドの制作≫
アークエンジェルとは異なり、動作にはスイッチ操作が必要になるので、電池はスタンドに入れずに、電池ボックスを兼ねたコントローラーを別に制作することにしました。
展示時には、コントローラーを取り外すことができるように、リード線の先に取り付けたコネクタでスタンドに接続するようにします。

電池ボックスにはタミヤの工作キットを使用しましたが、操作性を考え、スイッチはキットの物を使用せずに、トグルスイッチを取り付けました。

コントローラーとスタンド、船体をすべて取り付けて、通電確認を行っておきます。


≪ギアボックスの組込み≫
翼などの可動部分は後からでは塗装できないので、塗装しながら組み立てを進めます。
胴体先端や翼の付け根部分のパーツは、ギアボックスを収納することができるように、内部のリブやポストを大胆に削り取っておきます。

収納部分の外形が出来上がった時点で、空間内部にギアボックスを取り付け、接着して固定します。
この時に、タンホイザーを仮止めして、胴体上部パーツを取り付け、干渉する部分はないか、スムーズに可動するかどうかを、慎重に確認しながらギアボックスの位置を決めます。
 

モーターは、船底部分に配置されます。
干渉する部分は、船底パーツをギリギリまで薄く削って、ようやくモーターを収納することができました。


≪タンホイザーの取り付け≫
塗装して完成させておいたタンホイザーを、スライダーに接着して取り付けます。
スライダーなど、完成後に見えそうな部分は、ガンメタで塗装しておきます。

塗装や接着に影響が出るので、ギアボックスにはオイルを付けていませんでしたが、組み込みが完了したので、この時点でグリスとシリコンオイルで潤滑させておきます。

ギアボックスの接点とLED、コネクタとモーターをそれぞれ配線し、ハンダ付けします。
スタンドとコントローラーを取り付け、きちんと作動するかどうかを確認します。


≪ハッチの製作≫
タンホイザー収納部のハッチは、開閉させる必要があります。
専用に動力を組み込むスペースはないので、タンホイザーで押し開けることにしました。

とはいえ、ヒンジを作るスペースはどこにもありません・・・。
ハッチは、自力で閉まる必要があるので、ヒンジを兼ねた板バネを使用することにします。
当初、板バネを薄いプラ板で制作してみましたが、耐久性がなく、すぐに折れてしまうことがわかりました。(失敗例)
耐久性のあるリン青銅で板バネを作り直して、常に閉まった状態になるように胴体パーツに取り付けます。


ハッチは、写真のように、少し上方にズレながら開きます。(写真は上下逆の状態)
組み込んだあとは、タンホイザーによって押し開けられるようになるので、トルクの関係であまり強力な板バネは使用できません。
耐久性と柔軟性の兼ね合いを考えてリン青銅の厚みを決めて板バネを作成し、局所的に曲がって力が集中しないように取り付け位置を決めます。

板バネは瞬間接着剤で取り付け、外れないようにエポキシで固めておきます。
接着剤が乾いたら、パーツ単体で塗装して仕上げておきます。


≪ハッチの取り付け≫
完成したハッチを船体上部に取り付けます。

一度組み立ててしまうと修正がきかないので、仮止めの状態で十分に動作確認を行います。
ハッチのベースパーツと、船体の微妙なズレで、ハッチが完全に閉まらなくなって浮いた状態になってしまうことがわかったので、注意して位置決めを行い、接着しました。

それぞれのパーツは接着して組み立てますが、ハッチを取り付けたベース部分と前部船底パーツだけは、差し込み式にして、万一の場合はギアボックスにアクセスできるようにしてあります。


≪パーツの制作≫
その他のパーツを組み立てて、塗装します。
今回も設定を無視して、日本海軍軍艦色と艦底色を基本に、少し暗めの塗装にしました。

写真は、最終組立前の、すべてのパーツです。
組み立ててしまうと細い隙間になる部分などもあるので、この時点で、スミ入れまで行っておきます。

タンホイザーの動作を確認したら、他のパーツを取り付けて胴体を完成させます。
このキットは、おかしなパーツ分割になっており、組み立てる順番が決められてしまっています。
動力を入れるために、組み立ての順序を変える必要があったので、少々組みにくい部分がありましたが、ポストやリブなどを削って対応しました。



≪ミネルバ完成≫
別に仕上げておいた、取り外し式の小物パーツを取り付け、スタンドに載せれば、いよいよミネルバの完成です。

最後に、ウェザリングを施して、スケール感を引き立てます。
ガンダム3種は、設定どおりに塗装しました。


[タンホイザー起動シークエンス]
スイッチレバーを前方に倒す→タンホイザーが迫り出し、発射位置で発光する。
レバーを放す→消灯。(タンホイザーは発射位置のまま。)
レバーを手前に引く→タンホイザーが引っ込み、ハッチが閉まって、停止。



コントローラーを取り外してしまうと、普通に組んだキットと見分けがつきません・・。



「タンホイザー、起動っ!」