イノセンス

2004年3月14日:ken1


 以前、(3月9日のコラム「攻殻機動隊〜STAND ALONE COMPLEX」)で紹介した、押井守監督の劇場
アニメ、『イノセンス』 を観た。

わたしの感想は、「ちと遊びが過ぎる」というか、芸術家が「こだわって」創ったら、失敗作になるという典型
例だと思います。エンターテーメントとしては失敗です。つまらないです。

  ( 具体的には、バトーとトグサが北端の択捉経済特区に飛んでからは、あくびの連続でした。劇場は
    込んでいて盛況?だったので興行的には成功してるのかもしれませんが、、、過去の実績と名前で
    売れているとしか思えません。  )

わたしとしては、どこまで前作の『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』が提示した問題、テーマに対して、
さらに突っ込んだ内容を期待していたのですが、なにも変わらないというより、ただ、「だらだら」同じ事を繰
り返しているだけですね。

それに、押井守氏は前作でも感じたが、それ以上に「不安定な」状態にありますね。
この『イノセンス』は有害指定映画にすべきです!(笑)
最低限、R指定にすべきです!マジで言ってます!(笑)
自我の不安定な15歳未満に観せてはいけません!!!

ところで、前回の攻殻機動隊についての書き込み後、ある筋?から、真の攻殻機動隊を知るには、原作の
士郎正宗のコミック「攻殻機動隊 THE GHOST IN THE SHELL」を読まなくてはダメだ!!!との指摘?が
あったので、講談社から出てる原作コミックを買って読んでみました。

そして、コミック「THE GHOST IN THE SHELL」こそ全てのはじまりであり、コアなのだというのがよく
判りました!!!
  
  ( いわゆるアニメ<オタク>によくある、女性キャラには「趣味じゃない!」ので辟易としましたが・・・
    あと、士郎正宗のコミック「攻殻機動隊 THE GHOST IN THE SHELL」におけるAI戦車は
    <フチコマ>、 TVアニメ 「攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX」でなぜか<タチコマ>
    と改名されていることも判った。 <フチコマ>が オリジナルなんですね!!!         )

士郎正宗氏は、天才的なひとだと思いましたね。。ほんと!。この作品は1989年〜1991年にかけて発表さ
れたものだというのも、瞠目すべき事実です!日本は経済的にバブルの絶頂期であり、日本の(オタク的)
文化の絶頂期(爛熟期)でもあった時期です。まだ、パソコンが一般に普及する前で、一部のマニアがMac
や98でサイバースペースの無限の可能性を夢見ていた頃です。
そんな中、コミック「THE GHOST IN THE SHELL」が発表されて、これは小説「ニューロマンサー」(1980)、
映画『ブレードランナー』(1982)<最終版は1991年>に対する士郎正宗の回答であった。
 (ちょっと大袈裟ですがね、、! )

そしてこの3作こそが、サイバーパンクの真髄!!!ではないかと、いまさらながら確信しました!!!
「Ghost」や「Shell」とか、一見、難解?で意味不明?な用語が使用されていますが、難しいものではありま
せん。。。

「ゴースト(Ghost)」はもちん「おばけ」のことでなく(笑)、ドイツ語の「Geist(ガイスト)」であって、日本語では
「精神」、「魂」、「霊」とか「気」のことです。そこから着想してます。「Geist」となると、マックス・ウエーバーの
「プロテスタントの倫理と資本主義の精神」の「精神」が「Geist」です。ヘーゲルの「精神現象学」の、「精神」
も「Geist」です。 そして
ヘーゲルの「Geist」は英語では「Mind」なので、英語の「Spirit」とは違います。つまり、ドイツ語の「Geist」は
英語の「Spirit」とは違うというのが判ります。さらに「Geist」となると、シュタイナーあたりをもちだすと、よけい
に難解?意味不明?になるので、これ以上はやりません。。。

士郎正宗の「ゴーストGhost」とは、ようするに日本人が、普通に「こころ」とか「魂」、「精神」、「神」
 (一神教の神ではなく、「八百万の神」とか「神は万物に宿る」の神です) と言っている「ことば」でいいの
 です。つまりは、日本人ならではの、日本的な解釈のサイバーパンク作品であります。

 ( では英語の「Mind」は日本語の「こころ」か!?というと、これは必ずしも正しくない!英語の「Mind」
   は頭のことであり、さらに、脳=ブレイン=知能のことです。すなわち「思考力の存在する所」です。
   この「思考力の存在する所」を「こころ」とするならばO.Kです。
   つまりは、「思考力の存在する所」が「Geist」であり、「Ghost」であります。
   「こころ」=感情、気持ちの所在するところならば、それは、英語では、心臓=ハート、「heart」です。 )

このように、「思考力=知能の存在するところ」が「ゴースト(Ghost)」です。
だから、「人体」に定着している「霊」が「ゴーストGhost」です。

では「Shell」とは、「Ghost」の乗っかっている「もの」であり、簡単にいえば「肉体(人体)」です。
そして、「Ghost」があるのなら、生身の肉体である必要はなく、機械化されていてもいいわけです。
このように「Shell」とは、「ゴースト(Ghost)」の「乗り物」のことです。

だから、GHOST IN THE SHELL(攻殻機動隊)では、脳(と髄)以外を全身機械化(義体化)されたサイボー
グは、当然「Ghost」があるので「人間」ですが、AI(人工知能)の完全機械化されたアンドロイドは「人間」で
はない、としています!?

アンドロイドには「Ghost」は、ない。ってことです。。。
 ( 当然、アンドロイドに<つまり機械であるAIに>「ゴーストGhost」が宿ることはありえないのか?
   もしありえたら・・・との問題があります。 )

で、劇場アニメ『イノセンス』は、ほんとうに「アンドロイド」=「人形」は、「人間」ではないのか。
「アンドロイド」と「人間」の違いは何なの???と永遠やってるだけの作品です!!!
サイバーパンクの定番の粋を超え出てないので、わたしには退屈であった。

 ( 一見、ぶつぶつ、せりふ回しに難解そうな!ことばや引用が多く、中学生や高校生には、判りにくいの
   ですが、別に、たいして、深い意味のあることばはありません!!!あえてひとつだけ挙げれば、後半
   で何度も出てくる、 「生死の去来するは、棚頭の傀儡たり。一線断ゆる時、落々磊々」ぐらいかな!
   これだけです!この映画のテーマは。  http://www.innocence-movie.jp/comingsoon/faq.html 
   せりふでブツブツ言わせるのは、映画としてよくないですね!
   やりたい気持ちは判りますが、、、『地獄の黙示録』あたりをやりたかったのかな!?   )

ところで、今日(3月14日)の朝日新聞の朝刊(ペーパー)の1面に「考えるロボット脳科学で開発」という
記事があった。
 ロボット技術に脳科学の研究成果をつぎ込んだ次世代ロボットの研究所をソニーが、6月までに設立
するそうです。いいですね!!!
攻殻機動隊の時代設定は2030年ですが、いまのところ、どう考えても2030年までに、アンドロイドや
全身義体化されたサイボーグは登場しそうにないですが・・・もっと先の時代になるでしょう。
まっ、どうなるか楽しみです!!!

話しを戻しますが、
「精神」と「肉体」を分ける考え方は、西洋では、ルネ・デカルト以来の伝統です。。。
西欧では約400年前からの思考法です。この思想が日本に入ってきてからまだ、100年ぐらいです。
デカルトの「物心二元論」は、この「物」と「心」(ほんとは「思考」とすべき)に分けて、人間というものを考
える、ことになっているが、これは、物体(物質、肉体)でしかない人間と、その思考=知恵=知能を操
(あやつ)る主体としての人間に分けたとされる、思想です。
デカルト主義の系譜を自任する思想家たちは、ノミナリスト(個物派、唯名論者)を中心にして、あの有名な
「コギト・エルゴ・スム」(我れ、思う(=思考する)。故に我れ在り)の宣言を土台にする。

で、もう判ると思いますが、これが、ヘーゲルやニーチェに受け継がれ、80年代のサイバーパンクにも受け
継がれているのです。

肉体と精神を同一視すると、無常観にとらわれます。。。
「ゆく河の流れは絶えずして・・・」なんて日本文学がありましたねえ。「方丈記」鴨長明だったか???
この、「無常」が、近代以前の(いや現代も)日本人にある思想でしょうか。。。
わたしも時々、無常観にとらわれます。
というより、ニーチェの「ニヒリズム(虚無観)」かな。。。この「無常観」と「虚無観」は別のものです。
もう、ここではやりません!

やっぱり、スピノザとともに「永遠の相」のもとに、です。
フッサールとともに、時代に関わる一方で、永遠を忘れてはならない、です。
「肉体の成長が終わる時点で、そのエネルギーが精神の成長に向かう」といったのはシュタイナーだそう
ですが・・・

おっと、もう止めます。

自分が信じるように、生きましょう!!!

(了)

ken1


2004年3月14日脱稿