特許審査待ち時間ゼロ


 日本の特許行政も、ようやく腰を上げたようだ。あまりにも長い特許審査期間にいらだってきたエンジニア、研究者にとって、これは朗報である。企業経営にもプラスに働くだろう。新製品、新技術開発で、激しい国際競争の中で苦闘している人々に、ようやく光が差し込んだようだ。

 しかし、十年後とは遅すぎる。もっと早く進めるべきだ。3年後までには何とかして欲しいところだ。今後5年で特許審査官500人の増員。たったこれだけの人数増員が、何で今まで出来なかったのか不思議だ。つまるところ日本の行政が、戦略的に、特許の重要性を理解していなかったためであろう。

 日本は資源が乏しい上に、農業の生産性は悪く、工場もどんどん海外へ移転している。衣食住はかなりの部分、輸入に頼っているのが現状だ。そういう状況の中で世界で生き残っていくためには、技術力、開発力、知的生産力の向上が絶対不可欠なのである。

 特許とはそのための重要な武器で、戦略的な考え方が必要なのである。先んずれば人を制す。先に特許をとらなければ、他者の後塵を拝すことになる。そして悔しいことに特許所有者に使用料を払わなければならないのだ。企業にとって、この負担はとても大きいのだ。
 だから各企業、各技術者とも一生懸命特許の種を探し出願してきた。しかしあまりにも長い特許審査期間に、その意欲が空回りしていたのである。

 私も沢山の特許を出願した。しかし日本の特許行政には失望することが多かった。米国のそれと比べて、レベルが低いと常々感じていた。それがようやく根本的な改善の一歩を踏み出したように見える。遅まきながらこれは歓迎したい。しかし、なぜ20年前からこれができなかったのか疑問に思う。

 基本的には、日本の行政そのものに、戦略的思考がないためであると考える。特許だけではない。外交にしろ、経済行政、福祉政策、農業問題、どれをとっても戦略が見えない。ただ前例主義、予算のバラマキ、その場しのぎに終始している。これでは日本の将来に明るい光は見えない。全ての分野において、行政は思い切った戦略を示すべきである。もちろん政治家の責任も大きい。既得権にしがみつくばかりでは、未来がない。新しい希望を国民に示して欲しい。

 特許審査待ち時間ゼロを起爆剤にして、日本の行政が戦略的な方向に変わることを期待する。


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