青色ダイオード訴訟


 青色発光ダイオードの発明対価についての判決が出た。特許権を譲り受けた会社が、発明者に200億円支払えという内容である。一般の人には、金額がべらぼうに高いように思われるかもしれないが、私は必ずしもそうは思わない。なぜなら会社は、その数倍もの利益を上げると予想されているからである。

 その前に青色発光ダイオードについて説明しよう。発光ダイオードには何種類かあり、赤と緑についてはかなり前から実用化されていた。これに青色が加われば、光の3要素、赤、緑、青の発光ダイオードが全部揃い、これらの色の強度の組み合わせで、どんな色でも再現できるのである。高効率、高寿命の電球などにその用途が考えられていた。そのため青色の発光ダイオードの実用化が待たれていたのであるが、そのの実用化は大きく遅れ、一時は無理ではないかと思われていたのであった。
 
 それを見事に打ち破ったのが、今回話題になった発明なのである。これは大発明で、会社は独占的に利益を上げることができ、大きく発展したのであった。しかし発明者に対しては、ほんのすずめの涙程度の報酬しか支払わなかったので、今回の訴訟になったのである。

 通常社員の発明に対しては、会社が特許権を譲り受ける代わりに、それ相応の対価を支払わなければならない決まりだ。しかし支払額については、各会社ごとに社内規定で決められており、てんでんばらばらなのである。早い話が、会社の都合でどうにでも決められるのである。

 確かに会社の利益に対して、発明者の寄与分がどれだけかという算定は難しい。会社での発明は、発明者個人だけの力では成し遂げられないからである。特に日本の様にチームプレーが重視され、さまざまな人の協力で研究・開発が進められる場合は、厳密な数字は出せないのが一般的である。発明者として名が連なっていなくても、有形無形に寄与した人もいっぱいいるだろう。
 それと共に日本の研究者・技術者は会社帰属意識が強いから、なかなか金額のことを言い出せないのである。

 日本の会社はそれを利用して、発明者への対価を低く抑えてきた。悪い言い方をすれば、会社のものは会社のもの、社員のものも会社のものというわけである。社員はあくまで会社に隷属するものという意識がある。

 今回の判決は、企業の意識改革の上で画期的なものなのである。日本の社内発明者の立場を大きく強化したといえるだろう。功ある者には報いなければならない。こんな当たり前のことが、今まで日本の会社では、なおざりにされてきたのである。経営者はよくよく考えなければいけない。


 教訓: 会社のものは会社のもの、社員のものは社員のもの!


戻る