放射性物質の分布


 放射能のことを書くのはかなり気の重い作業だ。いまだに高線量を浴びているうえに、事故当時の恐怖が思い起こされるからである。しかし自分の心の中にしまっていても、何の役に立たない。記録に残しておくことが大事だと思うので、書くことにする。

 原発事故が起きて暫くたって、原発からの放射性物質の拡散がほとんど収まった頃から、本格的に放射性物質の地域分布調査が東日本を中心に行われた。ヘリコプターや航空機を使った空中での測定に加え、土壌調査、地上での測定などを加味して詳細な放射線物質の分布地図が出来上がった。その結果は公表されているので私も何度か見たことがある。それによると原発から北西方向に飯館村に向かって直線的に放射線量が高いことが分かる。そのほか福島市から白河市にかけて帯状に放射線量が高い地域がある。この帯状の分布は栃木県や群馬県の山沿いにかけて続いている。かなりの長い距離である。東日本の脊梁山脈に沿った形になっている。ということは高い山に遮りられたのか、そこで雨が降ったことを意味している。そのほかに千葉県の松戸市辺り、岩手県南部でも放射線量が高い地域がある。結構広く分布している。静岡県のお茶にまで影響を与えたくらいだから、すごい距離である。

 逆に原発のすぐ近くでも線量が低いところがある。単純に原発からの距離ではないことを、肝に銘じておかなければならない。

 我が家は不幸にも放射線量が高い地域にある。これはすごいストレスなのだ。いくら健康に大きな影響はないといわれても、20年後30年後どうなるかは誰にもわからないのだ。壮大な人体実験のサンプルとして世の中に貢献しようかなんて、自虐的に考えたりしている。私のような年配者はまだしも、子供たちはかわいそうである。福島県は人口がかなり減ってしまった。近所の女の子も引っ越して行った。子供たちの明るい声が聞こえないのは、とてもさみしいものである。



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