百年戦争は始まったばかり



 福島第一原発が完全に廃炉になるまで何十年もかかるといわれている。しかし具体的にその方策が示されているわけではない。数十年たっても放射線量は高いままだから、いったいどうやって熔け落ちた核燃料を取り出すのだろうか。いや何百年たっても容易には近づけないはずである。チェリノブイリと違って、かなりの部分セシウムが中に残っているはずだから、そう簡単に放射線量が下がることはあるまい。事故収束のための百年戦争は始まったばかりというのが、二年半たった今の感想である。

 一番心配なのは、可能性は低いと言われてはいるが、再臨界である。二年半たって、少なくとも外部に影響を与える規模の再臨界はしていないから、そう簡単には再臨界はしないとは思うけれど、燃料の状態がどうなっているか良く分からない現状ではやはり心配なのである。
 基本的には燃料棒が規則正しく並んでいて、その間に水があるというのが臨界の条件だから、水がじゃじゃ漏れの状態ではきれいに並んでいる燃料は臨界しないであろう(制御棒も無事なら尚のこと)。では熔けた燃料はどうなるか。意外と熔けて固まった燃料は臨界しないらしい。鉄やステンレスその他いろんなものが一緒に熔けているし、制御棒も熔けて混ざり合っている可能性がある。元々ウランの含有量は少ないから、原爆みたいに一か所に集まれば臨界するというものではないらしい。形もきれいな形にはなっていないだろうし。それに原子炉を運転すると臨界阻害物質ができて、燃料棒には臨界阻害物質が溜まっていくとか、新しい燃料棒には急激に臨界しないように臨界抑制物質が予め入れてあり、それが残っているとか、海水注入も臨界を抑える作用があるとか、同時に注入したホウ酸(正確にはホウ酸ナトリウムかもしれない)はもろ臨界防止剤だからそれらも熔けた燃料に混じっているかもしれないとか、まあそういう安心材料を集めて気を休めている。

 願わくはせめて使用済みの燃料だけでも、全量安全な場所に移してもらいたいものだ。仮に第一原発が手に負えなくなる状況になっても、もらい事故だけは起こさないために。何てったってセシウム137の量は使用済みの燃料の方が多いのだから。しかも本数がべらぼうに多いんだ。



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