帰路へ


 病院を出てまず周囲の様子を眺めた。建物から出てきた人々が、余震の中不安そうに空き地に集まっている。でも車は普通に走っている。交通事故は発生していないようだ。火事もなし。倒壊した建物も無い様子。緊急車両のサイレンの音は全く聞こえず、あれだけの揺れの割には被害はほとんど出ていない様だ。阪神淡路の大震災時の映像とはだいぶ違うので一安心。何とか家に帰れそうだとバイクを置いてある駐輪場に向かう。
 駐輪場では自転車が軒並み倒れている。でも私のバイクはちゃんと立っていた。原付50のおっさんバイクだが、ずいぶん揺れに強いなと思った。これまで冬の暴風で一度倒れているのに、地震には強いようだ。妙に感心した。

 家に帰る前に、病院の近くにある妻の実家の様子を見に行くことにした。バイクで数分だから、まず寄ってみようと思ったのである。道はすんなり通れた。家は外見上損傷はなかった。しかし庭先のプランターや鉢植えが倒れている。ああやっぱり相当揺れたんだなあと思いながら家の中に入ってみると、ぐちゃぐちゃに散乱していた。でもけが人などは無かったので一安心。今度は自分の家が心配になったので、自宅に急ぐ。

 家までは距離で10キロぐらいある。途中信号が消えていて交通渋滞している。警察官が出て手信号で誘導しているのだが、やはり急いで家に帰りたい人が多いんだろうな(自分もそうだったけれど)。地震から間もないのにすぐ警察が出動していることに感心しつつ、そこはバイクの小回りが利く良いところで、時にはエンジンを止めて押して歩いたり、脇の小路を通り抜けたりで渋滞からは逃れた。小路ではいろんな被害が目に付いた。水道管が破裂して水を噴出している家、大谷石の塀の破損、一番多かったのは瓦屋根の損傷。古い家の瓦屋根はかなり壊れて落ちている。それでも倒壊家屋や傾いている家は見当たらなかった。
 走っている最中にも、余震が頻繁にあった。大きな余震ではなかなかバイクが前に進まない。家の近くでは、近道して田んぼの真ん中の農道を通った。途中道を横切って段差数センチの亀裂が入っている。ああやっぱり地盤が悪いところはこうなんだなと思う。それでも思い切ってバイクで段差を超える。ようやく我が家見えた時には、どうなっているのかなと若干不安がよぎった。元々モルタルの壁にクラックが入っていたからである。


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