夜中の巡回車と政府発表



 3月14日の夜の事である。地元の消防団が鐘を鳴らして触れ回っていた。それまでも時折火の用心とか戸締り確認とか触れ回っていたのだが、ちょっと様子が違う。私は耳が悪いので、あまり良くは聞き取れなかったのであるが、どうも「今後の情報に注意してください」と言っているようだった。これはいったい何のことだろう、その時は理解できなかった。今後の情報?これまで情報らしきものは全然伝えられていないのに何のことだろうと思ったが、夜も遅いことだし、周りが騒いでいるわけでもないのでそのまま寝てしまった。

 次の日、特にどうと言うこともないので、いつも通り10時の給水車に並んで、水を調達して家に帰った。そして何気なくテレビをつけてNHKを見ていたら、なんと原発から20キロ以内は全員避難、30キロ以内は屋内待機と発表されているではないか。これは明らかにまずい。どんどん避難範囲が拡大している。前日の夜の「今後の情報に注意してください」というのはこの事だったのかと初めて気がついたのであった。
 我が家は50キロは離れているけれど、事故が拡大してそのうち屋内待機になるかもしれない。下手をすると放射能汚染が現実のものに。そう思って家中の窓は完全に締め切り、雨戸をおろして、暫くは様子見で家の中に閉じこもっていようと思った。

 そしてまもなくして運命の放射能汚染が始まったのです。


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