薬が切れた


 地震の直後、薬を貰わないで病院を後にしたので、すぐに薬が切れてしまった。当時私は鬱病の薬を一日3回服用していて、この薬のおかげで何とか無事に暮らしていたのであるが、特に夜寝る前の薬には睡眠を助ける成分が入っていて、大いに助かっていたのである。

 そして薬が切れてとんでもない症状が現れた。まず夜眠れない。毎日大きな余震が多くてただでさえよく眠れないのに、それに輪をかけてほとんど眠れなくなったのだ。地震前には熟睡していて気が付かなかった新聞配達のバイクの音が毎日聞こえるのであった。朝は早目に起きてしまうし、とても気持ちが急く感じがして落ち着きを失ってしまった。ちょっと軽い躁状態に近い感じもあったが、気分的に爽快感はなくただ気ぜわしく、いろんなことをあれこれ考えていた。焦燥感、絶望感、いやここで頑張らないという気持ち、様々な思いが渦巻いていて、とてもとりとめのない状態になった。自分でコントロールができない。

 病院に行こうと思ったが放射線量が高くて外に出たくない。そもそも病院が診察どころの騒ぎではないのではないか。地震の揺れで被害があったはずだし、スタッフも集まるのかな。それに薬局が営業しているのかな。物流が途絶えて薬が入荷していないんじゃないのかな。いろいろ考えたが、結局18日に電話をして確認してみることに。そうしたら次の日19日は診察するけれどそれ以降はしばらく休むという話だった。次いつ再開するかは未定とのこと。これはいかんということで、次の日病院に行って診察してもらい、薬局で2週間分薬を手に入れることができたのであった。病院は患者数が多く、診察室も一時の仮の場所ということで、まともに診察できず処方箋を出してくれる程度であった。でもこれで一息ついたのである。そして自分は薬なしにはまともに生きていけないということを実感したのであった。そしてもし長期に病院に行けない状態が続いていたらどうなってしまうのだろうと、今でもとても不安な気持ちになるのです。だから原発事故が拡大して避難を余儀なくされることは、絶対に避けたいのです。



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