桜前線南下中


 とうとう桜が見頃になった。桜前線は南下し、東北地方の我が地にもやってきたのである。今年は暖かくて随分桜の開花が早かったのだが、現在満開直前で、一番の見頃である。

 あれ?文章が変じゃないかい。桜前線北上の間違いじゃないの。

 いや、桜前線南下が正しいのである。こちらでは毎年そうなのである。なぜなら、標高の関係で北の方が暖かくて、桜も早いのである。場所は福島県だ。北から順に福島市でまず咲いて、以下阿武隈川沿いに郡山、白河と桜前線が南下するのである。
 当然冬の厳しさも南の方がきついのだ。当地は東北南部で東京に近いからといっても、全然暖かくはないのだ。おそらく仙台よりも寒いと思う。おまけに雪も降るのだ。

 全国放送では盛んに桜前線北上中と報道しているが、それは一般的な話である。地方地方で状況は異なる。何事においても一般解が正しくて、その他は間違いと言うわけではない。地域によっては、桜前線が東上したり、西下することもあるだろう(東下、西上かしらん?)。

 さて現在見頃の品種は、ソメイヨシノである。この品種は江戸時代に開発されたもので、昔からある桜に比べると開花が早く、花も豪華である。その点を考慮しないと、昔の人の桜に対する感覚と若干ずれが生じるようなので注意が必要である。桜は古来より農業と深い関係がある。春になると、桜の木には農業の神様が降りてくると信じられており、それで農業の神を指すサと座る物を意味するクラが合体して、サクラという名称になったと、聞きかじりで覚えている。だからソメイヨシノは桜と言うよりも、単独にソメイヨシノと言った方が良いのかも知れない。

 そのソメイヨシノであるが、みんなクローンなのだそうだ。一般に樹木は挿し木で増やすので、クローンなのであるが、特にソメイヨシノは種から成長しないので、みんなクローンなのだそうだ。動物のクローンとは違い、個々に見るとそれぞれ個性的なのであるが、それが植物のクローンの不思議というべきか。しかし皆遺伝子が同じクローンだから、一斉に咲いて、一斉に散るのかもしれない。 あまりに見事すぎる並木道の咲き方を見ると、ふとそう思ってしまう。
 


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