正午の日差し


 正午になると太陽は空の真南に位置し、真南に面した部屋にはまっすぐ日が差し込んでくる。それが当たり前。一方我が家には、若干斜めに日が差し込んでくる。だから我が家は真南に向かわずに、少しずれて建っているのである。

 ずーとそう思っていた。宅地造成の際、何らかの理由で、道路が少し東西方向からずれたんだと思っていた。しかしそうではなかったのである。

 磁石で調べてみると、おかしい。ずれ方が逆じゃないか。磁石が壊れているのか、それとも北極点と北磁極が大きくずれているのかなと思った。そしてハタと気が付いた。

 福島県では、正午には、太陽は空の真南には位置しない。太陽が行き過ぎるのである。

 えっ、どういうこと?

 つまりは日本の時刻は、兵庫県の明石を基準に作られているから、それよりずっと東の福島県では、早めに実質的な正午になるのである。時計上の正午と、本当の正午がずれているわけだ。例えで言うと、ハワイでは日本より早く日が昇るのと同じことなのである。

 どうしてこれまで気が付かなかったのだろう。ちょっと考えれば当たり前のことなのに。

 これでもう一つの謎が解けた。東北人は一般に早起きだと言われている。農業人口が多いからかなと思っていたが、何のことはない。早く日が昇るからである。こっちの方が説得力がある。きわめて当然な理由ではないか。

 思い込みとは恐ろしい。真実を消し去ってしまう。自戒しよう。

 各地の中継で、もうこっちは暗いのに、西日本が明るい時、西にあるから当たり前だとわかっているのに、正午のことを連想できないのは、やはり抜けているんだろうか。


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