自転車あれこれ


 春風に誘われて、サイクリング。そういう季節になってきた。まだまだ空気は冷たいけれど、どこからか花の匂いが漂ってくる。そういう爽やかな季節の始まりである。早春の空気の中、ちょいと張り詰めた気分で自転車に乗る。サイクリングファンにはたまらないだろうなあと思う。

 私もサイクリングがしたいのである。できれば自転車専用道路でサイクリングできたら楽しいだろうなと思う。
 しかし困った事に、私は自転車に乗るのが苦手なのである。実は大人になるまで自転車に乗れなかったのであった。小さい時いくら練習しても乗れないので、諦めかけていたが、大人になってからの猛特訓で、ようやく下手ながら乗れるようになったのであった。これも生来のバランス感覚の悪さからきているものであろう。今はまた突発性難聴のせいで、身体のバランス感覚が悪いのだ。

 昔、自転車に乗るようになったきっかけは、単純なのであった。彼女とサイクリングしたかったのである。しかしそれは果たせないままで終わった。ただ下手ながら、何とか自転車に乗れるようになったのであった。人間本気になれば何とかやれるという見本みたいなものだが、案外技術の習得は、こんな動機から成されるものなのかも知れない。
 
 乗れるようになってからは嬉しくて、よく自転車で郊外に行った。

 しかし最近は自転車に乗ることはない。怖いのである。おそらくもうく乗れないのではと思っている。技術が落ちたと言うよりも、バランス感覚に自信がないためである。雨の中傘を差して乗っている人、携帯電話をしながら乗っている人、彼らのバランス感覚には脱帽する。と同時に危ないからやめなさいと言いたくなるのは、自分にはできない芸当だからであろうか。

 障害とは色々な楽しみを奪うものである。片耳を悪くして、オーディオの楽しみが奪われた。身体のバランス感覚が危くなって、サイクリングの楽しみも消えた。
 
 代わりに新しい楽しみを見つけなくてはいけない。しかしもう一つの持病である鬱病は、何一つ楽しくなくなる病気なのである。まあ面白くない事この上もないが、こうやってたまにエッセイが書けるだけでも文句は言えまい。文章作成能力だけは大事にしようと思う。
 


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