人生に杭ありパート2


 人生が順調とは限らない。私も多々つまずき、傷ついた経験者である。読者の参考のために、それらの中から主だったものを記してみよう。題して、人生に杭ありパート2。


パート2

 無事再就職し、しばらくは順調であった。5年後には結婚もし、まもなく郊外に家も建てた。地方都市で当時まだ物価が安かったとはいえ、30半ばで家を建てたことは、この上もない喜びであった。しかし不幸は一年も待たずにまた現れたのである。
 昭和62年12月、今度は顔面神経麻痺に襲われた。朝起きるとどうも調子がすこぶる悪い。鏡を見ると顔がゆがんでいる。水を飲むと口からこぼれてうまく飲めない。それに涙があふれてよく見えないのである。これらは全て左側だけであった。左側の顔面神経が麻痺しているのは明らかだった。左側はしわ一つできずのっぺらな表情、笑おうとしてもまったく非対称な無気味な顔になるのであった。
 これにも原因に思い当たる点がある。当時やはり仕事上強いストレスを感じており、さらに悪いことに寒い中バイクに乗っていたからである。
 2〜3ヶ月医者に通ったがあまり快復しなかった。もう諦めるしかない、と思って治療を中断した。しかし、しかし、あまりにも苦しいのである。顔の外見もさることながら、涙があふれるので本を読むことがつらい。頭もボーとして考えがまとまらない。そしてやたらに疲れるのである。仕事もほとんどできなくなり、完全に落ちこぼれとなった。
 ある時から自己流の治療をすることにした。それは中国の温灸というもので、タバコを大きくした感じの棒状のもぐさの先に火をつけて、鏡を見ながら眼に入らないようにして、顔のツボに近づけて、ツボを刺激するのである。何回かやっているうちに効いた。奇跡的に顔の筋肉が少し動いたのである。しかし効果はそれまでで、その後効果は続かなかった。そのほか電気療法などを試してみたが、効き目はなかった。

 現在は自然治癒のおかげで本当に徐々に徐々に快復しているが、顔面麻痺の苦しみは今でも続いている。
 

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