氏神様 |
2004年が明けたある日のことであった。疫病神がまた活動をはじめるのであった。 疫「やあ、こんにちは」 私「だれ、新年の挨拶なの?」 疫「疫病神なのだ。今年も初詣に来なかったから、こちらからやってきたのだ」 私「やってきただなんて、年中いるじゃないか」 疫「大晦日から、ちょっとだけ外出していたのだ」 私「もう来なくていいよ。大体俺はあんたの氏子じゃないよ」 疫「そういわれても困るのだ。もう決まったことはしょうがないのだ」 私「いいよもう、帰ってくれ。今年ぐらいはゆっくり過ごしたいんだから、早くよそへ行ってくれ」 疫「よそもいっぱいなのだ。われわれはクローンなのだ。世界中どこにでもいるのだ。だからここに住みつくのだ」 疫「それに我々の仲間も、沢山いるのだ。貧乏神、不幸の神、不運の神・・・、明日連れてこようか」 私「いいよ、お前だけでも十分すぎるよ」 疫「それにまた、別の神も知っているのだ」 私「別の神って?まさか死神じゃないだろうな」 疫「いや、いや。死神は我々の仲間じゃないから安心しな」 私「ふー、良かった」 疫「死神は我々にとっても困るのだ」 私「えっ、どうして」 疫「死神がいれば我々の存在価値がなくなってしまうのだ。人が生きているからこそ我々も存在できるのだ。それに死神など本当はいないのだ」 私「本当?」 疫「ああ、そうだ。死神は人間が勝手に考えついたものなのだ。だからそんなのに惑わされてはいけないのだ」 私「うん、うん、うん」 疫「でも疫病神は違うのだ。ちゃんとここにいるのだ。ずーとここにいるのだ」 私「もう、いいから出て行ってくれよ」 疫「だめなのだ。ずーとここにいるのだ。柱にしがみついてもいるのだ」 私「わー、誰か助けてくれー」 そこへ救いの神が登場。 救「はいはい、お呼びになりましたかな」 私「あー良かった」 救「何か御用でも」 私「あの疫病神を、追い払ってもらいたいんですけど」 救「あっ、それはできません」 私「どうしてですか。あなたは救いの神様でしょう」 救「神様同士はけんかをしない主義になっていましてな。私にできることは、あなたのお手伝いをすることだけです、はい」 私「つまりはアドバイザーというわけですか」 救「まあ、早い話がそういうことです」 私「では一つアドバイスを」 救「そうですね、まずは疫病神を恐れないことです。恐れるから惑わされるのです」 私「はい」 救「そしてリラックスした気持ちになって、心を鎮めるのです」 私「はい」 救「それから、悲観もせず楽観もせず、あるがままに自分を見つめるのです」 私「それで疫病神を追い出せるのでしょうか」 救「すぐにとは言いません。そのうちにきっとできるでしょう」 私「そのうちにですか?」 救「はい、そのうちに。自分を見つめてあせらずに、何でもいいから出来ることからはじめるのです」 私「できることからですか」 救「できること、何でもいいのです。例えば、指を動かすとか、手を合わせるとか、まばたきするとか、出来ることでいいんです。出来ないことはやらなくていいのです。それが私のアドバイスです。では」 私「どうもありがとうございました。いつでもまた来てください」 ここで私は目がさめた。疫病神も、救いの神も消えていた。これが私の初夢だったのである。 |
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