栄養バランス


 健康のため一日30品目ぐらいは摂取しようと、よく言われている。そこで自分の食生活を考えてみた。しかし本当に微量のものを含めれば別だが、とても30品目には足りない。せいぜい半分ほどだ。微量のものとはカレールーに入っている食品たちである。
 健康のためにバランスよく食べると言うことには反対はしない。人間はそもそも雑食性で、いろんな食品から栄養を取り入れてきたので、一理あることである。

 しかし良く考えてみよう。日本は世界一の長寿国である。しかし現在のお年よりたちは、戦中戦後の厳しい食糧事情を経験した人たちである。とても栄養バランスを考えるゆとりなどはなく、ただ空腹を癒すことに汲々とした日々を送ってきた人たちである。それでも長生きしている。なぜだろうか。

 人間とは不思議な動物である。世界中には全くの偏食としか思えない人々が暮らしている。例えばマサイ族はほとんど牛と乳製品だけで生きてきた。北極に近いイヌイットもほとんど肉食だった。一方で菜食主義者の人もいる。日本でも昔の僧侶は菜食だったろう。

 こう考えると食に関しては、人間はかなり適応力の強い動物のようである。あまり細部にこだわらなくても良いのではないか。もちろん遺伝的な要素もあって、例えば日本人は菜食にむいていて、腸が長いということはあるが。

 だから、あまり神経質になることもない。一日単位で考えるよりも、せいぜい一週間単位で考えれば十分ではないかと思う。少し昔を考えてみても、貯蔵できる食料は限られていて、ほとんどその季節季節にとれたものだけを食べていたのである。それで何とかやっていけたではないか。

 人間は特定の栄養素が足りなくなると、自然にそれを欲するものだと思う。頭で食べるのではなく、体で食べるのだ。事実私は、肉をしばらく食べないでいると、その後やたらと肉が食べたくなる。体の切れが悪くなると、野菜を食べたくなる。そういう本能を大事にしたい。

 最近は健康ブーム、健康ブームとか言って、やたらとサプリメントの広告が目につく。これに惑わされてはいけない。ダイエット広告にも惑わされてはいけない。本当の健康とは、心の健康から始まるのである。
 要は自分でゆったりとした気持ちになって、食べたいものを食べればいいのである。気持ちに余裕がないから、食に対する本能が働かないのである。そういう意味で、スローフードはまことに喜ばしい。


戻る