本当の自分


 本当の自分はこんなものではないと、誰でも思う時があるに違いない。特に人生うまくいかない時には、そう思いがちである。しかし本当の自分とは、あなた分かりますか。

 私は本当の自分を知っている。しかしそれは理想的なものではなく、また常に一定しているものではない。本当の自分とは、私の現実そのものである。現実そのものが本当の自分なのだ。

 私の状態はコロコロ変わる。鬱病の日内変動で、朝と夕方では全然気分が違うし、季節によっても変化する。長いスパンで見れば、若い時と今とでは、能力も考え方も随分変わっている。
 それでも、その時その時が本当の自分だと思っている。たとえ無能でも、それが病気によるものだとしても、本当の自分はその時の姿以外ない。厳しい現実ではあるけれど、そういうことである。

 もし現実が本当の自分ではないと言うならば、現実は仮の自分という事になる。しかし私は、その時その時なりに自分にとって誠実に生きてきたので、仮の自分などはないのである。私は自分で自分を裏切った事はない。たとえ結果がどうであろうともだ。確かに不本意な仕事を押し付けられて、やむなく従った事はあるけれど、それはそれで自分の姿なのである。
 もちろん後で考えて、ああした方が良かった、こうした方が良かったかなと、全く考えないわけではない。しかしそれは結果論であって、その時その時では、一番良いと思った事をしてきたのである。

 誰でもそうだと思う。理想的ではない自分を肯定するのは嫌なものだが、そこから出発して次何をやるべきかを考える事が大切であると思う。それが本当の自分を高めていくのであって、そのあかつきに、自信を持ってこれが本当の自分だと言えるようになるのではないか。

 これはおそらく一生続く課題である。理想的な人間などいないし、理想的な人生もないであろう。自分の現実に納得がいかない事も多々あるであろう。ただ、自分を見失う事だけは、避けなければならない。自分を大切にするためには、まず自分自身、自分の理解者にならなければならない。
 


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