人類と火


 人類の発展は、火の利用に負うところが大きい。最初どのような経緯で火を手に入れたかはわからないが、山火事の火や落雷の火を保存したのではないかと思う。
 火の効用はそれ以前から知っていたに違いない。まず暖かいこと。それと山火事で逃げ遅れた動物の肉がうまかったはずだ。動物(猛獣)が火を恐れることも十分わかっていたであろう。

 一時的に火を保存できたら、今度は絶やさないようにしなければならない。枯草や枯れ木を火にくべて、火を絶やさないようにと考え、実行していたであろう。
 しかし問題が出た。移動の際火を持ち運べないのである。当時は土器がなかったから、長い距離火を持ち歩くことは難しかったと思われる。松明を沢山持ち歩いていたのなら別だが。

 こういうことから何とか自前で火を手に入れたかったに違いない。そこでいろいろ工夫して、摩擦熱による火起こし法や、火打石の利用を編み出したのであろう。

 そうしてとうとう人類は、自由に火を使うことができるようになったのである。

 火が自由になると生活が大きく変わる。まずは食料である。これまで生で食べられなかったものが、火を通すことにより食べられるようになるのである(焼き栗、焼き芋など)。肉も美味くなる。そして食料の保存が利くようになるのである(燻製、加熱殺菌)。更には猛獣の撃退。暖房の確保。このおかげで人口は増えることになったであろう。

 そして農業が始まる。農業も火とは無縁ではない。穀物は煮炊きしなければ食べられないのである。そして焼畑。

 農業が盛んになると文明は飛躍的に発展する。それと共に火の需要は増え、環境破壊が始まった。都市建設のためのレンガ作り、金属の精錬、そして人口の増加。森林からは木々が切り倒され、次々と火力として用いられた。そして森林は荒廃していった。気候も乾燥化へ向かう。

 やがて工業時代に突入。化石燃料である石炭石油の使用量が増大する。火力だけではなく、動力源ともなった。二酸化炭素の排出量が増大し、地球温暖化へ進んでいく。

 そして最終的に人類は新しい火を見つけた。原子力である。厳密に言うと原子力は火ではなく、熱源といった方が良いかもしれない。今度は放射性廃棄物の問題がクローズアップされる。

 どんどん強力な火を持つようになった人類。火による恩恵は多大だが、その反面、環境破壊や事故の危険性が増大している。人類は火で栄えたが、火で滅ぶことのないように願うばかりである。

 以上、火と人類の歴史を簡単に振り返ってみた。


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